とんねるずが「実はいい人」でも、復権が難しい理由

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とんねるずの偉大さを後輩芸人が続々コメントも、当人たちの呆れた姿勢「編集して怒られないようにしてもらえれば」の画像1

「とんねるずのみなさんのおかげでした」公式インスタグラムより

 今年の3月で、約30年の長い歴史に幕を降ろすことが決定している『とんねるずのみなさんのおかげでした』(フジテレビ系)。最終回へのカウントダウンが始まる中で、とんねるずの石橋貴明(56)と木梨憲武(55)に対する想いを後輩芸人たちが続々と明かしている。

 1月25日深夜放送のラジオ番組『おぎやはぎのメガネびいき』(TBSラジオ)では、同日に28年の歴史を誇る超名物コーナー「モジモジくん」の最終回が放送されたことを受けて、同番組に多く出演してきたおぎやはぎがとんねるずへの思いを語った。

 矢作兼(46)は、「モジモジくん」の最終回によって『とんねるずのみなさんのおかげでした』の終了を改めて実感し「寂しくなる」とコメント。とんねるずには台本を無視して水の中に突き落とすような先の読めない面白さがあると評し、「『そんなことしちゃったら、この先どうすんの? こんな濡れちゃって』ってことを平気でする人たち」と話した。「本当にもったいないよ」と嘆く小木博明(46)は、とんねるずの破壊的な笑いの取り方は特殊で個性的なため、テレビにはまだまだ必要な人だと番組終了を惜しむ。

 さらに有吉弘行(43)は、2月4日放送のラジオ番組『有吉弘行のSUNDAY NIGHT DREAMER』(JFN系)で、おそらく自身最後となる『とんねるずのみなさんのおかげでした』の収録をしてきたエピソードを披露。リハーサル終わりに石橋から声をかけてもらったという有吉は「グッときたね、久々に。泣きそうだった」「最高だった。ちょっと嬉しかった」「(話の内容は)心に留めておきますけどね」とのことだった。

 東京芸人のリーダー格として、後輩たちを引っ張ってきたとんねるずは、面倒見の良さから多くの芸人たちに慕われていたようだ。芸人だけではない。昨年12月には俳優の武田真治(48)がInstagramに石橋貴明との2ショット写真を投稿。街で偶然遭遇したそうで、武田から声をかけると石橋が「あれ? タケダくん、今日バースデーだろ? おめでとう! メールしようと思っていたんだよ」と応じてくれたのだという。武田はさらに、「タカさんほどテレビで観るのと実際にお逢いした時の印象が違う人には逢ったことがないってほど、繊細な気配りのかたで、ご本人の柔らかな物腰には拍子抜けするくらい☆ だって僕なんかの誕生日知ってるって…」と石橋貴明のテレビでのイメージとのギャップを明かしていた。

 とんねるずの笑いは、確かにかつて一世を風靡した。しかしその一方で近年は暴力的な演出や差別的に受け取れる言動を問題視する声も上がり、彼らの芸風が「弱い者いじめのようで笑えない」と見る視聴者意見も表面化。『みなさんのおかげでした』終了は、来るべきときが来たということだろう。多数の業界人から慕われる様子を見るに、その素顔は面倒見の良い先輩芸人なのだろうが、人柄の良さと番組継続が結びつくわけでもない。

 業界には、とんねるずに昔のように活躍してほしいと願う芸人やスタッフが多くいるだろうが、果たしてとんねるず自身が「今」を捉えた笑いを作ろうとしているかは疑問である。

 1月26日放送の『あさイチ』(NHK)に出演した木梨憲武の発言からは、「時代のせい」にしている印象を受けた。視聴者から届いた「今のテレビは窮屈に感じる」という意見が紹介されると、「生じゃなければ、編集して怒られないようにやっていただくのは、ディレクターだったり、プロデューサーだったりするから。同じようにやっていきたい」と、自らの笑いの取り方を変えるつもりはないことを明言。「怒られなければ良い」で本質を見ようとしていないことが伺えてしまう。周囲に丸投げするスタンスでこの先もやっていけるのだろうか。

 実際のところ、今のテレビが直面している状況を「クレーマー視聴者のせいで窮屈だ」と感じる芸人、制作スタッフ、そして視聴者はとても多いのだろう。苦情が入りスポンサーが離れては番組を制作できないから、無難な番組作りをするしかない。クレーマーに配慮したつまらない番組ばかりで、本当にやりたい笑いを届けられず窮屈だ、と。しかし、過去の“テレビ全盛期”に笑いのネタにされ、偏った生き方を強いられ、踏みつけられてきた側にとっては、その時代のほうこそ窮屈だったのではないだろうか。マジョリティは笑えてもマイノリティが虐げられるような番組作りは、もう終わりにしようという方向で「新しい笑い」を考えることはできないか。

 4月からは石橋貴明(56)がミッツ・マングローブ(42)とダブルMCを務める新番組がフジテレビでスタートする。「大人のノスタルジーを刺激するトーク番組」をテーマに、毎回ゲストを呼び、アイドルやテレビ、歌謡曲、野球などさまざまな話題の“少し昔の話”を語り合うそうだ。過去の栄光を「昔は良かった」と懐かしむだけの番組にはならないでほしい。

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