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町山智浩×水道橋博士×古泉智浩×枡野浩一「サブカルの歴史を語る~いくつもの枝編」【1】

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「まるで町山さんからサブカルが始まったみたいな」(枡野)

古泉 ロフト(ライブハウス・新宿ロフト)[]はサブカルなんですか?

町山  ロフトよりもうちょっと……日比谷野音まではサブカルかな。

博士 そんな定義なんですか!?

町山 (町山が編集者だった雑誌)『宝島』[]がフォローしてたミュージシャンはそこまでなんですよ。「渋公」に出ちゃうと、そっから先はもう自分たちの手を離れる感覚があったんです。

枡野 町山さんが以前おっしゃった定義で、「サブカルのサブはサブマリンのサブだから“下”だ」と。「みんな、“横”とかのイメージでいるけど、そうじゃなくて“下”なんだ」と。

古泉 地下芸人?

町山 地下芸人!

枡野 つまり、メジャーじゃない、売れてないものってニュアンスもあるってことですか?

町山 うん。だってスポーツだとサブ・キャプテンって副キャプテンじゃないですか。キャプテンの下だから。

枡野 じゃあサブカルチャーの人がすごく売れるとサブカルチャーじゃなくなってしまうってことなんでしょうかねえ?

町山 そう。

博士 どうなんだろうね。たとえばさ、ロマン優光(音楽家/作家)の本(『間違ったサブカルで「マウンティング」してくるすべてのクズどもに』[])に入ってない人で、いとうせいこうさん(作家/ラッパー)なんかがいて……。でも昔、中森明夫さんが「いとうせいこうの時代は終わった」って言って、狼煙を上げてた時代があるから。でも終わってないんだよね。

古泉 でも、いとうさんも雑誌媒体から出た人じゃないですか。僕、サブカルって雑誌イメージがすごくあるんですよ。

博士 よくわかりますよ。それで、ロマン優光が言うところの「サブカルは町山さんが作った」っていうのは、町山さんは『SPA!』のカウンター(対抗勢力)だから。『SPA!』や『ロッキング・オン』[]のカウンターとして町山さんの作った――

古泉 『映画秘宝』[]があると。

博士 そうそう! だから、“そこ”の分野の人を町山さんは認めないから。

枡野 あ、そうなんですか!

町山 認めなくはないけど……(笑)。

博士 いや、でもそれは、みうらじゅんさん(イラストレーター/作家)に踏み絵を踏まされるんですよ。「おまえはロッキング・オン側なのか、俺の側なのか、ハッキリしろ!」っていう。

古泉 そんな事件がありましたか!

枡野 でも町山さん、(中森明夫さんの著作)『東京トンガリキッズ』[]の単行本に写真載ってらっしゃいますよね? モデルとして。

町山 アハハハ。

博士 『トンガリキッズ』にモデルとして出たことで、町山さんはあの後に丸坊主にさせられてるんだよ。

枡野 みうらじゅんさんに怒られて?

町山 そう……。おれたちの敵であるオシャレ側に転んだ、って責められて。今の言葉にすると、オタクを裏切って、サブカル側に回った、と。

博士 そういうことが(ロマン優光さんの本は)踏まえられてないんですよ!

古泉 その日がちょっと、サブカルの分岐点の日ですよ!

枡野 確かに、中森明夫さんと町山さんが相容れない感じは(僕は)わかって……。それがロマンさんの世代だとわからないかもしれませんね?

博士 わかんないと思うし。それでたとえば、中森明夫さんと宅八郎(オタク評論家)がたもとをわかつ瞬間とかがあるんですよ。歴史的な日が。ああ、この日にっていう……

町山 あの、ロマンくんはわかってると思うんだけど。

博士 まぁ調べてるだろうけどね。

町山 大抵はわかっている。

博士 もちろん、あの本(『間違ったサブカル~』)だけじゃないし、前の本(『日本人の99.9%はバカ』[])もあるし、彼は流れをちゃんと調べてる人だから。だけど『間違ったサブカル~』だけを読むと、(サブカルに関しての)唐突な歴史が語られてるわけです。惜しいことに。

枡野 そうですね。

古泉 町山さんとその周辺という……。

枡野 (『間違ったサブカルで~』では)まるで町山さんからサブカルが始まったみたいな感じでしたもんね。

博士 いやもう、そう定義してしまっている。

枡野 たとえば、町山さんの師匠にあたるみうらじゅんさんは、僕はすごくサブカルのメインの人だと思っていたんですけど、そうではないのでしょうか?

町山 あの、みうらさんは武道館でも東京ドームでもやってるじゃないですか。だからもうメジャーな感じ……。

古泉 そうですねえ! 流行語大賞も取ってますよ!

枡野 ですよ! 「マイブーム」で。

町山 アッハッハ! だから昔は、新しいバンドを見つけるには、まず最初にロフトより小っちゃいライブハウスに行ったんですよ。いっぱいあったじゃん、「JAMスタ」とか……

古泉 「(高円寺)20000V」とか?

町山 ほんといっぱい小っちゃい所があって。そこで一晩に3つぐらいのバンドが出てるのを観るんですよ。それがそのうちワンマンでロフトにたどり着いて、その後、だんだん上がっていくわけですよ、ライブの規模が。次に日本青年館とかでライブやる頃にはメジャーデビューしてる。それで野音に行って、渋公に行く……。

渋公まで行ったらもう『宝島』は追っかけない。他の音楽雑誌と競合しちゃうから。自分たちだけが抱えてる領域から出ていく感じがあったんですよ。

博士 あの本(『間違ったサブカルで~』)のいうところの「みうらさんはサブカルじゃない」っていう定義は「西武セゾン文化である」っていうことなんだけど、そういう文化でいうとライターの永江朗さんとか、“あっち側”にいる人もいるのよ。

町山 永江さんは実際にパルコの本屋さんの店員だったから。西武セゾンとか六本木WAVE……今は六本木ヒルズが建ってるところにWAVEっていうすごいビルがあって――

古泉 輸入レコード屋さんがあったんですよね。

町山 そのWAVEの上にはオシャレな、ゲームを作ってた会社があったんですよ。そこに桝山寛さん(メディアプロデューサー)という人がいて、いま大学の先生になってますけど、そこにいたスタッフがポケモンのスタッフになったり……。

枡野 (雑誌)『宝島30』で連載されてましたよね?

町山 桝山さんは、そう、その通りです。みんな、マック(コンピュータ)使ってましたね。箱形の。

博士 だから、“新人類の3人”いるじゃないですか。野々村文宏さん(評論家/研究者/和光大学准教授)・中森明夫さん・田口賢司さん(作家/プロデューサー)……あの3人の辺りの『東京おとなクラブ』[]なんかは、ゲームに行く人たちが出てくるんですよ。

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枡野浩一

歌人。1968年東京生まれ。小説『ショートソング』(集英社文庫)ほか著書多数。短歌代表作が高校の国語教科書(明治書院)に掲載中。阿佐ヶ谷「枡野書店」店主。最新情報はツイッター【@toiimasunomo 】で。

@toiimasunomo

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