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『フリースタイルダンジョン』ラッパー椿の真摯な言葉に耳を傾けよう

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椿『美咲紫』(此糸)

 今月6日に放送された『フリースタイルダンジョン』(テレビ朝日)に出演したラッパーの椿による、HIPHOPシーンに蔓延するミソジニーに対して、真っ向からdis(批判)をしたラップが現在注目されている。

 HIPHOPシーンには、「女のくせに」「ビッチ」「ゲイみたいなやつ」など、ミソジニーやホモフォビックな差別的発言、価値観が色濃い。こうした風潮は国内外問わずこれまでも繰り返し問題視されてきたし、バイセクシュアルやゲイであることを公表するラッパーや、ミソジニーに対して批判するラッパーも増えつつあるが、残念ながらまだまだ根強く残っている。

 『フリースタイルダンジョン』は、即興のラップでバトルを行うテレビ番組だ。20159月の放送開始以降、現在まで人気を博し、HIPHOPブーム(あるいはMCバトルブーム)の火付け役となった番組のひとつでもある。

 この番組に椿が出演するのは初めてではない。20173月に女性ラッパーのみが出場する「シンデレラMCバトル」で活躍した椿、あっこゴリラ、FUZIKO3人で構成された「CINDERELLA MC’S」として同番組に出演している。

 その際、CINDERELLA MC’Sは当時のレギュラー出演者(番組ではモンスターと呼ばれる。モンスターを5回倒せば100万円が手に入るシステム)であるDOTAMA、サイプレス上野、R-指定から、「シンデレラっていうほど綺麗な見た目していない」「AVだったら企画物」「全員持って帰るよモーテル」「ブスのグータンヌーボ」など、ミソジニーに溢れたdisを連発され、結果一度も勝利を収めることなく敗退してしまっていた。

 6日放送では紹介VTRの中で、前回のバトルについて話を振られた椿は「めっちゃ怒ってます。女性に対するミソジニー発言がばんばんでているのに会場がわいているっていう、日本のシーンに対して疑問を持ちましたね。ぜったいいつか変えてやる」と怒りを表明していた。椿のそうした態度は、対戦相手である呂布カルマへのdisにも現れていた。

 ミソジニーに満ちたHIPHOPシーンに問題提起する椿だが、呂布カルマは「(クソ加齢臭とdisってきた椿に対して)俺お前みたいにメンスのにおいしねえけど」「ミソジニーとか難しい言葉しらねえ ジェンダーのおばちゃん」「女 男 置いといてお前は女の腐ったような卑怯者だってことだ」「俺が女だったらおっぱいでもだすぜ」と現状を追認するような、ミソジニーに満ちたdisを展開する。そんな呂布カルマに、「下とかじゃない上とかじゃない見せつけるジェンダーレス 大事なのは変化です 不可能と言われた青い薔薇だってできたように私はやってやる年末」と自身のスタンスを曲げずにぶつけていた(MCバトルは言葉の応酬であり、文脈が欠かせない。どういう流れでふたりが発言しているかは実際に番組を見て確認してほしい)。

 結果は、椿の敗退。MCバトルの判定は、発言の内容だけでなく、技術や説得力、即興性など様々な要素で決まる。技術が劣っていても他の要素が評価されて勝つラッパーもいれば、中身がなくてもビートに心地よくラップをのせることで勝利するラッパーもいる。審査員が評価する要素もそれぞれだ。

 この記事で取り上げたいのは、椿と呂布カルマのバトル判定についてではなく、HIPHOPシーンにおけるミソジニー、特に「女性」という存在の扱われ方だ。

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