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町山智浩×水道橋博士×古泉智浩×枡野浩一「サブカルの歴史を語る~雑誌と年表編」【2】

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「おれ、宮崎駿とたけしさんの対談つぶしたの」(水道橋博士)

博士 俺、一時、芸人になる前、『スタジオボイス』の青山の編集部に行って、就職しようというか、入り込もうとしたことあるんです。当時の『スタジオボイス』は全冊持ってるんですよ。たけしさんのインタビューとか、つかこうへいのインタビュー(を読んだの)はそこが原点なんです。そのあたりの(時代の)つかこうへいさんと漫才ブームの関係なんかをよくたけしさんに……。たけしさんがつかこうへいと対談しようとしたときなんかに、「ちょっと待てください、殿!」――と。「1980年の段階で、つかこうへいさんは、漫才師のことを『ただの猿みたいだ』と言ってるんですよ!」――と。そうおれが言ったのを聞いて、たけしさんが「対談やめた!」――。

古泉 つまり、博士が対談をつぶしちゃったんですか!?

博士 そう!

古泉 ええ~~っ。博士の一言がなければ、何かが生まれたかもしれないのに!()

博士 対談前日だったんだけどね……。あと、おれ、宮崎駿とたけしさんの対談もつぶしたの。

古泉・枡野 ええ―――っ!!

古泉 今やふたりとも世界的映画人ですよ!

博士 そう。その対談もロッキング・オン系の雑誌でやるはずだったんだけど、殿から、「おまえ、宮崎駿の映画ってさ、俺、観たんだけど、まったくわからないんだよ」って相談を受けて。たけしさんはその時点までの宮崎駿作品、一応全部観たのね。それで俺が、「殿、もし殿が、「『となりのトトロ』、あれ、いいな」とか言ったら、ぼく、がっかりしますよ」って。そしたら、「そっか。じゃあ、やめよう!」。たけしさんはほぼ、漫画の表現が読めない。家庭に漫画がなかった人だから。だから、漫画っていうものが全然わからない。

古泉 そうなんですか……。じゃあ、『君の名は。』とか観たら、どうなっちゃうんでしょうね?

博士 認めないと思うよ。純粋に。

枡野 観ないでほしいですね。

町山 それは『スタジオボイス』のときですか?

博士 いや、もう2000年代になってからです。

町山 ああ、そうか。

博士 そのときにぼくに相談されて、「いま、観てんだけどさ、俺、ほんとにアニメとか漫画とか、わかんなくてさ」と殿が。っていう話です。

町山 う~~ん。でもね、たぶん、『風立ちぬ』はわかると思う……。

博士 たけしさんにも?

町山 たけしさんにも。

博士 どうか……どうかなぁ……。ま、わかんないですけどね。

町山 非常に、たけしさんと近いものがあると思いますよ。わがままな男の話だから、『風立ちぬ』は。(北野武監督作の)『アキレスと亀』とかとも、近いものがありますし……。

博士 いや、だから、普通に漫画が読めないんですよ、たけしさん。

枡野 それはそうなんです。僕もそうでしたもん。

博士 わかりますよね?

枡野 漫画を(子供のころに)読んでなかったので、漫画、わかんなかったんです。町山さんの担当で、『宝島30[]で漫画のことを書かせていただいてたんですけど、ほんとに二十歳くらいまで漫画読んでなかったので……。

博士 コマの読み方がわからないんですよね。

枡野 そうなんです。それで町山さんにいろいろ教えていただいて、漫画読んでましたもん。

博士 たけしさんが楽屋で、『20世紀少年』を渡されて。たけしさん司会のテレビ東京『誰でもピカソ』に浦沢直樹さん(漫画家)がゲストに来るから。それで今田耕司くんとかに言われて、たけしさん、一生懸命読んでるんだけど、「もう、俺、わかんねえんだよなぁ~」って言ってましたよ。

枡野 僕の中の町山さんのイメージは、基本的に漫画家にすごく愛があって……

博士 だって、(町山さんは)漫画家志望だったんでしょ?

枡野 だから、漫画家に甘い印象があるんですけど、町山さんは。

古泉 ライターに厳しい(笑)。

枡野 だから、もしも漫画家と歌人が溺れていたら町山さんは――

古泉 そんな、漫画家と一緒に溺れる歌人なんて枡野さんしかいませんよ!笑)

枡野 漫画家しか救わない感じがします。

町山 クククク! 歌人に厳しすぎる?笑)

枡野 あの、ほら、町山さんが(枡野の著作)『結婚失格』[]の解説文で厳しい批判を書いてくださったときに、すごく納得したんですけど……。

町山 枡野くんの(元)奥さん、漫画家だもんね笑)

枡野 だから、漫画家大好きだから、漫画家のほうに肩入れしてるなって印象がありました笑)

町山 職業差別(笑)。

博士 町山さん、『町山智浩の、漫画師に訊け!』[]だっけ? 漫画家さんたちと対談されてましたけど、あのとき、漫画家の方には「先生!」ってちゃんと丁寧に接するのに、枡野さんとのイベントあったじゃないですか?(20108月『結婚失格』刊行記念トークおよび20113月開催・映画『ブルーバレンタイン』をめぐる討論会。後者のみYoutube公開中) 俺、マウンティングって言葉をここ2年くらいで知ったんだけど、あのときの町山さんこそマウンティングですよ! 枡野さんへのマウンティング!笑)

古泉 あはははは!

枡野 それは……どうなのかなあ笑)

古泉 でもね、僕も『漫画師に訊け!』で町山さんと対談させてもらったんですけど、同じ日が(同じく漫画家の)すぎむらしんいちさんだったんですよ。そしたら、すぎむらさんには「アメリカにおいでよ!」ってすごく誘ってたんですけど、僕には一言も言ってくれなかったんですよ!笑)

枡野 じゃあ町山さんは、漫画家の中にもヒエラルキーが笑)

古泉 そうですよ! 売れてて面白い漫画家を贔屓するんですよ!

町山 アハハ、そんな。なんでそんな話になってるんだ!笑)

枡野 いや、だから、町山さんの印象はそうだなぁって。

町山 贔屓をする人?笑)

枡野 漫画家が好きな人笑)。だって僕、町山さんにね、昔、お話を聞いて印象的だったのが、さそうあきらさん(漫画家)が大学の先輩で、「さそうさんはジャングルで生まれた」っておっしゃってませんでした?

町山 インドで生まれたって。

古泉 えっ、さそうさん、インドで生まれたの!?

枡野 でも、さそうさんに聞いたら、「そんなことないよ」って

町山 確かね、インドで子ども時代育ったはずですけどね、確か……。

博士 もうね! 50歳すぎの人の過去の記憶っていうのはいろんなものが混ざっちゃって、滅茶苦茶なんだよ! だから僕は(いろんな人の)年表いっぱい作って、この事実はこうだって確証していく……いわゆるノンフィクションの手法でいろんな人を見てるんですけど、「あ、これ間違ってる」って、そんなのしょっちゅうありますよ。

枡野 小谷野敦さんという文芸評論家の方が、(私小説を書く場合は)まず年表を作るようにっておっしゃってました。どうしても間違うからって。

町山 でも自分で作れないからねえ。だから博士は他人の年表を作ってくれてるんですよ。

博士 俺は俺自身で「8万字年表」作ったんですよ。自分の年表。

町山 あははは。

博士 それで、町山さん年表は、まだ2万字しか作ってないから……。町山さん、また、作りましょうか?

町山 いやぁ……笑)

 

【第2回の注釈】

■『ビックリハウス』
1975年創刊、1985年休刊。パルコ出版発行。基本的に10代を中心とする読者からの投稿で編集されていた月刊誌。ギャグやパロディが主流だった。投稿者は「ビックリハウサー」「ハウサー」と呼ばれ、全国各地で、今でいう「オフ会」を開かれ、ハウサー同士の交流も盛んだった。「ハウサー」からは数多くの作家・放送作家・ミュージシャン・漫画家などが生まれている。

■『ヘンタイよいこ新聞』
『ビックリハウス』内に「糸井重里責任編集」として連載されていた新聞。1982年の連載終了時には「ヘンタイよいこ白昼堂々秘密の大集会」が開催され、特別に結成された「ヘンタイよいこバンド」がオリジナル曲『ひとつだけ』を披露した。バンドメンバーは、忌野清志郎・仲井戸麗市・坂本龍一・矢野顕子・ 鈴木さえ子・どんべ。

『スタジオボイス』
1976年にタブロイド紙で創刊、1979年に月刊誌となる。カルチャー・音楽・ファッションなどをテーマに毎号特集を組んでいた。2009年に雑誌としては休刊するが、ウェブ版は継続。その後は特別を出すなどし、2015年に年2回刊の雑誌として復刊された。

■『宝島30
1993年6月創刊、19966月休刊。町山智浩のブログによれば、「サブカル保守とか言われてたね。『宝島30』は、もともと自分で提案した企画で、誌名も石井局長と二人で考えた(僕がちょうど30歳になろうとしていたから、30代のための『宝島』という意味だった)。自分で編集長もやるはずだったんだけど、ちょっと社内で問題起こしたのでヒラの編集者として参加したのだ。僕は無署名のオピニオン・コラムを一人で執筆していて、毎号そこで『噂の真相』などの左翼ぶりっこを揶揄していた。とにかく徹底的にやったから、こう言われてもしかたがないかも。」

映画評論家 町山智浩アメリカ日記

■『町山智浩の、漫画師に訊け』
町山智浩さんが鬼才・異才・天才の漫画家たち11人に迫ったインタビュー集。漫画家のランナップは、板垣恵介・武富健治・本多康昭・奥浩哉・山口貴由・花沢健吾・福満しげゆき・すぎむらしんいち・古泉智浩・安倍夜郎・新井秀樹。
『ラジオデイズ』でダウンロード販売中

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◆町山智浩
映画評論家/コラムニスト/在米ジャーリスト。1962年生まれ。早稲田大学法学部卒業後、JICC出版局(現・宝島社)に入社。1996年に米国移住。現在はカリフォルニア州バークレーに在住。週刊文春『言霊USA』など連載多数。著作に『実況中継 トランプのアメリカ征服』『最も危険なアメリカ映画』『アメリカのめっちゃスゴい女性たち』『トラウマ恋愛映画入門』などがある。Webストア≪町山智浩の映画その他ムダ話≫では映画解説などの音声ダウンロード販売をおこなっている。
映画評論家町山智浩アメリカ日記

◆水道橋博士
漫才師/コラムニスト。1962年生まれ。1986年にビートたけしに弟子入り。1987年に玉袋筋太郎と漫才コンビ『浅草キッド』結成。2017年、京都芸術大学客員教授に就任。
芸人・タレント活動のみならず、週刊文春『週刊藝人春秋Diary』連載や日本最大級のメールマガジン『水道橋博士のメルマ旬報』編集長も務める。著書に『水道橋博士のムラッとビンビンテレビ』『はかせのはなし』『藝人春秋』などがある。
水道橋博士のメルマ旬報
『水道橋博士のムラッとビンビンテレビ』公式サイト

◆古泉智浩
漫画家。1969年生まれ。1993年『ヤングマガジン』ちばてつや賞大賞を受賞し漫画家デビュー。これまでに『青春☆金属バット』『ライフ・イズ・デッド』『死んだ目をした少年』の3つの漫画作品が映画化されている。夫婦での里親生活を綴ったエセッイ『うちの子になりなよ (ある漫画家の里親入門)』も発表。Webマンガ『特別養子縁組やってみた 漫画 うちの子になりなよ』へと発展している。他の漫画に『夕焼け集団リンチ 古泉智浩作品集』『ワイルドナイツ』『悪魔を憐れむ歌』などがある。
無料Webマンガ『特別養子縁組やってみた 漫画 うちの子になりなよ』
・公式ブログ 古泉智浩の『オレは童貞じゃねえ!!

 

(構成:藤井良樹)

【1】町山智浩×水道橋博士×古泉智浩×枡野浩一「サブカルの歴史を語る~いくつもの枝編」

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