「町山さんは童貞こじらせてる感はそんなない」(水道橋博士)
町山 それで、その頃、サブカルチャーと呼ばれていたものは世間の一切のマスコミとかに引っ掛からない、ヘンな文化とかがあったのは確かなんだけど。でもサブカルって言われたときに全部引っ掛かってんだよね。
枡野 世間に発見されちゃったってことですか?
町山 うん。ほんと発見された感じ。だからそのまえは、ヘンなことをみんな勝手にやってて面白かったですよ。湾岸のほうの倉庫を勝手に改造してライブハウスにする世界でしたからね。クラブにしたりね。「あそこの倉庫にクラブができたから明日行こう」みたいなね。
古泉 えっ、あの、町山さんもクラブにおでかけされてたんですか?
町山 うーん、一応……行ってたよ!(笑)
古泉 チェックシャツで行ってたんですか?
枡野 黒いTシャツですか?
町山 黒いTシャツ?(笑)
博士 や、町山さんはね、「童貞こじらせてる感」はそんなにないんだよ。
枡野 ええ、町山さんってすっごくモテたって、僕は(町山さんの周囲の人から)聞きましたけど。
古泉 でもね! クラブでモテる人間ではないですよ、町山さんは! 僕が断言します!
町山 えっ、なになに?
古泉 町山さんはクラブではモテない!
町山 モテないよお~、そりゃあ~。
古泉 町山さんはクラブなんか行っちゃダメなんですよ!
博士 でもそれは、ライター的に音楽系のことがあるから。
枡野 町山さん、『宝島30』に穂原さん(穂原俊二)って編集者がいましたよね? 爆笑問題の本を作ってる人なんですけど。その穂原さんから町山さんの印象を聞いたことがあって。「町山さんというのは怪獣への興味で世界をすべて理解した人なんだよ」って言ってました。
古泉 それも極端な意見で面白いですねえ。
枡野 そうだったんですか、町山さん?
町山 それはねえ、みうらじゅんさんとぼくが、そういう特集記事を作ったんですよ。『宝島』だっけかなぁ。ふたりで「世界のすべてを怪獣に当てはめて考える」っていう、わけわかんない企画(笑)。よく覚えてない。誰か記事持ってると思うんだけど。
まだみうらさんも若かったから、商業主義とかがすごい嫌いだったの。なにがロックでなにがロックじゃないか――みたいなことを本気で追究してたから。カラオケとか行って、サラリーマンがロック歌ってたりすると、「おまえ、ロック捨てたんだろうがあ!」ってコップの水をバシャーッってかけたりとか。本当にするんですよ。
古泉 ロックが熱かった時代なんですね……。
町山 そういう頃にね、すべてを怪獣に分類するって記事をやってて。たぶんそれを読んだんだろうね。
枡野 その印象が強かったんでしょうか。
町山 一番基本にゴジラがあって、「ゴジラ的じゃないものはロックじゃない!」
枡野・古泉 アハハハハ!
博士 町山年表作った俺から言わせると、町山さんは21歳で編集プロダクションの『怪獣ものしり百科』、ケイブンシャのね、作ったのが契機になってるよね。
枡野 そのときにはもう、ライターされてたんですよね。
博士 4冊のアニメ書籍を執筆してるんだよ、もう。
枡野 すごいですねえ。
町山 アニメバブルがあったんですよ、当時。各出版社がアニメ雑誌を競合して作るっていう時代があって。『うる星やつら』がヒットしてた頃なんですけど。新しい文化だから、ライターがいないんですよ、全然。だから、アニメに詳しいやつは片っ端から編集部に呼ばれて。それでぼくは学研の『アニメディア』っていう雑誌――
古泉 『アニメディア』買ってましたよ! 一番安かったから!
町山 ほんと!?(笑)
古泉 (昨年亡くなられたライターの)大塚幸代さんも買ってたって言っていましたよ。
町山 僕は、入稿前日に編集部に電話で呼ばれると、特集記事のレイアウトができてて、その文字数に合わせて、一晩でいっきに全部書くの。
枡野 町山さんの若い頃の原稿を読ませていただいたことがあって、『宝島』かなんかの。すごく上手い大人っぽい文章なんですよ。
町山 もう、死ぬほど原稿を書いて添削されてたから、19か20歳のときに。いろんな雑誌……『ポパイ』とかでも書いてるし。
枡野 『ポパイ』、オシャレじゃないですか。
古泉 そうですね、マガジンハウスですよ。
博士 あのさ、もう12歳のときに『ビックリハウス』にね、投稿を始めてるんです。
古泉 町山さんが?
博士 そう。
古泉 中学1年生じゃないですか!
枡野 すごい!
博士 だって14歳のときには学校の文集に作文が大量に採用されて、麹町中学校の横須先生に「町山、おまえは物書きになれ!」と言われてる。
町山 それがきっかけ。物書きになろうと思ったのは。
博士 ね? 年表やると面白いでしょ。
枡野 はい。すごいです。
博士 他人の人生がほぼわかるからね(笑)。