政治・社会

漫画村を潰せば、お金を払って漫画を読む読者は増えるか

【この記事のキーワード】
海賊版サイト

海賊版サイトの一例

 213日、公益社団法人日本漫画家協会(以下、日本漫画家協会)が『海賊版サイトについての見解』と題して声明を発表した。

 「海賊版サイト」とは何かというと、インターネット上に無断で公開されている漫画雑誌や漫画単行本を無料で閲覧できるサイトを示している。「海賊版サイト」の運営者は、出版元の許可を受けずに作品を公開しているのだから、著作権侵害に該当する。そして海賊版サイトで作品が多く読まれたとしても、出版元の収益にはならず、むしろ漫画雑誌や単行本の売上の減少が懸念される。売上が減れば、漫画家や出版社も貧し、新しい作品を生み出すための投資ができなくなるという悪循環につながるリスクもある。しかしながら、“タダで読める”という恩恵にあずかりたい読者は決して少なくはないようで、「海賊版サイト」の利用者数は増加しているという。

 日本漫画家協会は、声明文の中で、パソコンや携帯電話などの普及によって気軽に作品を手にしてもらえるようになったこと自体は『本当にすばらしいこと』と見る一方で、『でもそれには、作り手と、作品を利用するみなさんが、きちんとした「輪」のなかでつながっていることが大事です』と説く。また声明文では漫画家と出版社が「輪」の外にはじかれ、『全く創作の努力に加わっていない海賊版サイトなどが、利益をむさぼっている現実』を憂い、『このままの状態が続けば、日本のいろいろな文化が体力を削られてしまい、ついには滅びてしまうことでしょう』と訴えている。

 公益社団法人全国出版協会・出版科学研究所の調査によると、正規の「電子コミック(パソコンやスマートフォンで漫画作品をダウンロードして閲覧できる有料サービス)」の市場は成長しており、昨年の国内の売上高は1711億円。その一方で、経済産業省の平成26年の報告書によると、海賊版サイトによる被害は500億円だそうだ。ちなみに前者の調査では、出版市場は13年連続前年割れを続けており、これまで好調だった漫画単行本の前年比が13%と落ち込んだことは業界に大きな衝撃を与えた。

 日本国内のサーバを利用していないなどの理由から海賊版サイトの規制や摘発は容易ではないとよく言われるが、昨年には違法アップロードを繰り返していた「フリーブックス」、そして海賊版サイトへの導線をまとめたサイト「はるか夢の址」の2つが運営者逮捕に至っている。現在問題視されている大手の海賊版サイトも長く続かないとは考えられるが、しかし潰したところでまた新たな違法サイトが出来、データを無断でアップし公開するイタチごっこになるだろう。今もっぱら注目されている海賊版サイトは「漫画村」だ。

 そうした海賊版サイトで漫画作品を無料で読んでいる利用者側については、たとえ海賊版サイトだと認識した上で利用していたとしても違法にはならず、罰則規定もない。利用するか否かは、読者の良心およびモラルに委ねられている。本来であれば正規の料金を支払って閲覧すべき作品をタダで読んでしまうことを、万引きや泥棒と同じだと捉える人もいるだろう。

 ただし、海賊版サイトで無料で漫画を読むことで読者もリスクを負う。海賊版サイトの利用は決して安全ではない。海賊版サイトにアクセスしたことによって、不正プログラムの稼働やウイルス感染、あるいは偽サポート詐欺被害の報告も出ている。しかしながら、「被害に遭いたくないから海賊版サイトは利用しない」となったとして、その読者が正規の電子コミック市場や、書店を利用して漫画作品に金を払うかというと、それはわからない。無料で読めないのなら読まない、ただの暇つぶしというほどに魅力を感じない読者もゼロではないだろう。海賊版サイトを肯定は出来ないが、しかし、海賊版サイトを撲滅すれば漫画単行本の売上が戻るかというとそう簡単ではないのではないか。無料で読めなくなったときに、「それなら買って読む」という読者がどれくらいいるだろうか、ということだ。

 まず電子版での価格設定には検討の余地があるかもしれない。新刊コミックスの多くはKindle対応しているが、その値段は単行本とほぼ同額だ。『めちゃコミ』『Renta!』『まんが王国』『コミックシーモア』など有料の電子書籍サイトはいくつもあり活況を呈しているように見えるが、単行本購入と比べて割安ではない。サイトごとに、スマートフォンで読みづらい、サイト内検索がしづらいなどの改善点もあるかもしれない。あるいは巻ごとでなく1話ごと購入を要求される場合にストレスを覚える読者もいるだろう。

 正規に購入せず海賊版サイトで漫画を読む読者は「優良な読者」ではないだろうが、少なくとも「漫画を読みたくて読んでいるユーザー」ではある。彼らがお金を払っても読みたいかどうかは、コンテンツの良し悪しではなく、そのコンテンツが掲載される媒体のユーザビリティによるところも大きい。正規ルートで読む読者を増やすために各版元が協力し努力できることはまだあるはずだ。

中崎亜衣

1987年生まれの未婚シングルマザー。お金はないけどしがらみもないのをいいことに、自由にゆる~く娘と暮らしている。90年代りぼん、邦画、小説、古着、カフェが好き。

@pinkmooncandy

バナナ&ストロベリー

「いいね!」「フォロー」をクリックすると、SNSのタイムラインで最新記事が確認できます。