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町山智浩×水道橋博士×古泉智浩×枡野浩一「サブカルの歴史を語る~権威編」【5】

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「博士さん、なぜオネェになったんですか?」(枡野)

枡野 町山さん、それで今日伺いたいのはね、町山さん自身が自分で信じたことをやっていても、(それに対して)裏切られたと思う町山ファンがいるわけじゃないですか。
ロマン優光さんもまさにそうかもしれないじゃないですか。「町山さんが、あんなことするなんて」と。

博士 あんなことするっていうか、その(ロマン優光)が指摘したことが、町山さんと俺が(したまちコメディ映画祭の中の『映画秘宝まつり』の映画俳優アントン・イルチェン追悼映画上映トークショーの)舞台の上でディープキッスしてるとかさ、そういうことだから。

古泉 追悼イベントなのに、追悼そっちのけで(町山さんと博士さんが)ふざけたのが許せないってことなんですよね?

博士 でもその追悼イベントの趣旨を理解して来てた人が何人いたかっていうところで言うと、ほんとごく一部なの。

古泉 ああ、そうなんですか。

博士 だから、そこは誤解を認めてロマン優光は、謝罪をしに俺のところへ来てくれたの。

古泉 「誤解していました」と。

枡野 あの『したまちコメディ映画祭』から(町山さんと博士さんはもう降りると言われてるけど)、降りないほうがいいんじゃないでしょうか?

博士 や、それはもう、降りますよ、僕は。

枡野 でも降りたら、あの映画祭、なくなっちゃいますよ、きっと。人気なくなって。

博士 そんなことはない。

枡野 そうですかぁ……。

町山 俺たち無しでも全然大丈夫だと思うけどね。

枡野 でも僕、誰も幸せにならないと思って。おふたりが降りるっていう選択が。

町山 (映画ライターの)ギンティ小林とか、(映画監督の)杉作J太郎とかがいるから大丈夫だよ。

博士 だって俺も町山さんも、「あのイベントは(自分たちは出なくて)もういいだろう」って毎年話してたんだもんね。「今年はもうやめましょう」って。

町山 博士とはずっと前から、「もう出ないほうがいいんじゃないか」って言ってて……。だって変じゃん! オレ、中学生の頃、タモリさんのステージとか観に行ってたんだけど、そのときタモリさん、まだ40歳前後だからね。あれ、考えたら。今、50代半ばのおれたち(町山と博士)が若者押しのけて舞台に出るって変だよ、それは!

古泉 でもねぇ、社会は変わってきてますよ! 低年齢化してるんですよ、全体的に。

町山 えっ、低年齢化?

古泉 だから、晩婚化とか……。

枡野 だって今、芸人さんだって40歳で若手って言われますよね?

古泉 そうそう。

町山 う~~ん……。それでいえばね、(テレビの)『笑点』の大喜利って、最初の頃、若手落語家を集めたコーナーだったんだよ。

古泉 そうそう

町山 その出演者がそのまま出続けて、いちばん若いのが50代のたい平って、どうかしてるだろ。だから歌丸師匠降りて、2代目三平入れたりしたけど。

枡野 そのことをどう思えば……どうしたらいいんでしょうねえ? だってしょうがないじゃないじゃないですか。芸人さんだって、上のほうの人がみんな元気で、司会とかを独占して、下が詰まってるって言われるけども、じゃあ殺せばいいってもんじゃないし。

古泉 そう。

枡野 どうしょうもないと思うんですよ。

町山 だから引退するって言ってるんですよ、俺は。

古泉 でもそうしたら、食えなくなる人もいっぱいいて、可哀想じゃないですか。

町山 逆に俺が映画秘宝の看板から後ろに下がることで、食えるようになる人たちもいるわけじゃん。

博士 それでいいし。俺なんか、自分がいっちょまえの映画ファンなんて『映画秘宝』の読者の前で名乗りたくもない。おこがましいし。だから町山年表を作って無料で配ったり……という、おれの中でのケジメとサービスをやってんの。

古泉 そんなこと気にすることないですよお! だって博士さんは、たけしさんの弟子になるか長谷川和彦の弟子になるか悩んだ人じゃないですかあ!

博士 そ、そ、それはまぁ、そうだよ。でも(映画の)量をこなしてる人じゃないから、おれは。映画ファンのみんなが望んでることを応えれるとは思ってないし。それは(アートディレクターで映画ライターの)高橋ヨシキさんとかが出ればいいと思ってる。ほんとに教養もあるし、映画以外にも、いろんなこと知ってるし。それはギンティとかもそうだし。てらさわホークさん(映画ライター)でもいいし。そういう人がやればいいって、本当に思ってる。だから、俺と町山さんが変なライブやるんだったら、ふたりだけでやればいいのよ。別に『映画秘宝』の舞台でやらなくても。

町山 ホークとか……あの、ホークってのがいるんですよ()。ホークとかは全然映画のこと話せるんだけど、俺たちがいるからメインでは出れないだけだから。それは置いといて、裏切られたってことで言えば、ロマン優光くんは「町山は裏切った」とは言ってないよ。

博士 そう。言ってないのこれは。

町山 彼は、おれがそのまんま変わらないから困るって言ってんの。

枡野 あぁ、ずっといると。

町山 そう。だから、年とったんだから、年とったなりに、引いてくれないか……ってロマンくんは書いたんだよ。だから、裏切られたんじゃなくて、逆に、変わらなすぎるから、「あんたいい加減にしてください」って書いてるんだよ。

博士 だから、僕も自分について書かれてることに対しても何も抗議してないもん。その通りだって言ってるもん。俺と町山さんに対してはその通り。
だから、(指摘された通り)はしゃぎすぎなんだけど、それは、「バカなことをやってないとほんとにバカになる」と思っていて。権威でありたくないっていう意志なの。

町山 だからそれこそ、渋谷陽一とか亀和田武みたいになりたくないわけよ。おれが常に尊敬するのはやっぱりタモリさんだったりさ、たけしさんだったりするのはさ、偉くならないように、権威にならないように一生懸命頑張ってるからだよ。二人とも威張らないから偉くみえるっていう「逆猪瀬直樹」だよね。実際に会っても、全然圧をかけてこなかったもん。

枡野 たけしさんを映画監督として評価したのがまさに蓮實重彦さんでしたよね。

町山 でもね、たけしさんは、威張ってる先輩を見て、気をつけなきゃって思ったんだと思うよ。「ああなっちゃいけないな」って。実際、そういう話をいつもしてたし。
一番言ってたのが、森繁久彌のこと。「昔はスケベ親父役が得意なコメディアンだったのに、いつのまにか文化人になっちゃってるよな!」って。
たけしさんにとって森繁はもう仮想敵みたいでさ、森繁さんが出るようなイベントに突撃して執拗にいやがらせしてたよね。とんでもない格好して。被り物着て。権威を破壊しようとしてた。たけしさんは今もしょうもない被り物するじゃん。『情報ニュースキャスター』とか。

博士 ああ、でも、もうそのコーナーやってないけどね。前はやってました。

町山 そう。あれとかもさ、「権威になるのは粋じゃない」ってダンディズムだよね。

博士 それは物凄く意識してますよ。あのニュース番組の中で自分のコーナーではバカをやるってずっと決めてたし。あれをなくされたとき、激怒しましたからね。

町山 人間誰でも、いつの間にか偉そうになるじゃない。おれたちだって、ただ年繰っただけなのに、うっかりすると偉そうになっちゃう。どんどん足元が上がって行っちゃう感じ。それを自覚して、意識的にバカをやって、自分の足元を崩していかないと。

博士 だから最近おれなんか、もうほとんど「オネェ」でやってるからね。

古泉 えええ~~っ!?

枡野 その話、聞きましたよ! なぜオネェなんですか!?

博士 だからぁ、おれも54歳くらいになってくると、おれの言葉が、より男らしく、権威ぶって、親父度がキツくなるという……

古泉 ゲイではないんですか?

博士 ではないのよぉ~?

枡野 欽ちゃんとか、そうだったんですかねえ?

博士 そう。「テレビでは、ツッコミは女の言葉で喋れ!」っていうのは、萩本欽一さんがフジテレビの女性プロデューサーに言われてそうしたの。まさにそう言われて変身したの。女言葉を選んだの。テレビ向きに。

町山 口のきき方って大事ですよね。

古泉 ほんとのオネェの人には何か言われませんか?

博士 俺が? いや、だから、結構相談してるんだよ。これはそもそも、みうらじゅんさんが30代の頃にやった遊びなのよ。「ヴァギナーズ」っていう女装ユニットを作ったの。
で、そのときは美輪明宏さんみたいな存在になろうとしたらしいのよ。そんな性別を超えた存在になろうと思ったのに、世間からは志茂田景樹にしか見られなかったの。

古泉・枡野 ギャハハハ!

博士 それでやめたの。でね、「博士はそうならならいでね」ってみうらさんから直接言われて。「博士はこのままどんどんオバサンになっていって、佐良直美を目指せ」って。つまりもう、男装の麗人みたいな。すげえハードルが高いんだよ、俺のオネエは。
あとこの間、(ニュースキャスターの)草野満代さんと共演したとき……(テレビ番組)『レディース4』に呼ばれたんですよ。
それで「やっとオネェで呼ばれた!」って喜んでたら、局の人は「博士すみません、オネエで呼んだわけじゃないんですよ……」「ええ~ン、違うのお~!」って。でも、「博士、カミングアウトするならどうぞカミングアウトしてください」って。
カミングアウト? 俺、子ども3人いるし……。そうしたら、「いや、私のNHKの同僚で、家庭があって子ども2人いて、でも突如そっちになった人がいて。だから性は自由なんですよ」って言われて。そうか、俺まだ途中経過なんだなと。
それで「来年とか、性転換したほうがいいんですかね?」「それはちょっと早いんじゃないですか」、でもそれはさ、わからないじゃん!

古泉 もうお子様いらっしゃるから、取っても大丈夫ですよ。

博士 まあね……。

 

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◆町山智浩
映画評論家/コラムニスト/在米ジャーリスト。1962年生まれ。早稲田大学法学部卒業後、JICC出版局(現・宝島社)に入社。1996年に米国移住。現在はカリフォルニア州バークレーに在住。週刊文春『言霊USA』など連載多数。著作に『実況中継 トランプのアメリカ征服』『最も危険なアメリカ映画』『アメリカのめっちゃスゴい女性たち』『トラウマ恋愛映画入門』などがある。Webストア≪町山智浩の映画その他ムダ話≫では映画解説などの音声ダウンロード販売をおこなっている。
映画評論家町山智浩アメリカ日記

◆水道橋博士
漫才師/コラムニスト。1962年生まれ。1986年にビートたけしに弟子入り。1987年に玉袋筋太郎と漫才コンビ『浅草キッド』結成。2017年、京都芸術大学客員教授に就任。
芸人・タレント活動のみならず、週刊文春『週刊藝人春秋Diary』連載や日本最大級のメールマガジン『水道橋博士のメルマ旬報』編集長も務める。著書に『水道橋博士のムラッとビンビンテレビ』『はかせのはなし』『藝人春秋』などがある。
水道橋博士のメルマ旬報
『水道橋博士のムラッとビンビンテレビ』公式サイト

◆古泉智浩
漫画家。1969年生まれ。1993年『ヤングマガジン』ちばてつや賞大賞を受賞し漫画家デビュー。これまでに『青春☆金属バット』『ライフ・イズ・デッド』『死んだ目をした少年』の3つの漫画作品が映画化されている。夫婦での里親生活を綴ったエセッイ『うちの子になりなよ (ある漫画家の里親入門)』も発表。Webマンガ『特別養子縁組やってみた 漫画 うちの子になりなよ』へと発展している。他の漫画に『夕焼け集団リンチ 古泉智浩作品集』『ワイルドナイツ』『悪魔を憐れむ歌』などがある。
無料Webマンガ『特別養子縁組やってみた 漫画 うちの子になりなよ』
・公式ブログ 古泉智浩の『オレは童貞じゃねえ!!

 

(構成:藤井良樹)

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