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町山智浩×水道橋博士×古泉智浩×枡野浩一「サブカルの歴史を語る~ストーカー編」【6】

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「町山さんは“枡野、ストーカーやめろ”と怒ってると」(枡野)

博士 ちょっといい? 町山さんが解説を書いた本、『映画は父を殺すためにある』[]、島田裕巳先生の。あれに町山さん、「通過儀礼を経ないと人は大人になれない」と書いてるけど。でも、その通過儀礼は書物じゃわからないんですよ。
俺はもう、イニシエーションばっか受けてきたから。(芸人修業時代の浅草のヌード劇場)『フランス座』とかさ。でもあのときでも大人になってないし。師匠がいて、兄弟子がいて、理不尽や暴力の洗礼があって。そういうものがあって、そういうものを経て、経て、経て、子どもが生まれて、男の子だけでなく、娘を得て、自分が父親になってる自覚や倫理が強化されていることも、本当にその通過地点では気づかない。
だから「大人になる」が難しいのはそこなんですよ。通過儀礼は書物ではわからない。通過儀礼とは何かなんて、子どもの頃から知ってましたよ、概念上は。だけど自分がそれを経験しているときに、「これが通過儀礼だ」とはわからなかった。
そこを経て、通っていったあとで振り返ったら、それが通過儀礼で、今俺は大人にはなってるけど、でも、「子どもでいたい症候群」なの。

古泉 う~~ん……うんうんうん。

枡野 なるほど……。

町山 通過儀礼っていうのは誰にでもあるし、大人になるためじゃなくて、自分が信じてる物とかが壊されること、自分が破壊されることだから、成長というより、逆に、死んで生まれ変わって、新しく、若くなれることだと思う……。枡野くんの場合、自分が強すぎて壊れないんですよ。

枡野 それは……そうですかねぇ……。

町山 そうだよ。

枡野 でもだいぶ、町山さんの解説以来、僕はヘコみ続けてますよ。

町山 ヘコむけど、壊れない!

枡野 あ、それでね、このあいだ僕が出した本、『愛のことはもう仕方ない』[]について町山さんがツイッターで半分褒めて半分批判して下さったんですけど。あれをね、小谷野敦さんという評論家が読んで、「町山さんの真意は違うんじゃないか」とおっしゃったんですよ。

博士 小谷野敦が!?

枡野 はい。まず小谷野さんは、町山さんの『結婚失格』解説を読んだときに、町山さんに批判的だったんですって。「町山の意見は間違ってる」と。「枡野は枡野で、あれでいいんだ、ああいう表現で」と。

町山 アハハハハ。

枡野 って思ってたんだって。だけど、「今は違う。今は町山が正しいと思ってる」って言うんですよ、小谷野さんは。

町山 アッハッハッハ! 枡野くんもいろんな人から言われて大変だね(笑)。

枡野 それで僕、小谷野さんと対談したんです、公開で。それでね町山さん、最終的に小谷野さんがおっしゃったのは、「枡野さんはストーカーなんだよ」と。

町山 うん。

博士 うん。

枡野 町山さんが書いたツイッターの感想についても「あれは暗に、ストーカーやめろと怒ってるんだよ」と……。

構成F いやそれは、小谷野さんが言われたのはツイッターのことじゃなくて、町山さんの『結婚失格』解説についてです。

枡野 あ、そう、そう、そうだったっけ。

古泉 あの、そもそも町山さんの(『愛のことはもう仕方ない』)感想ツイッターはどういう内容だったんですか?

枡野 それは、僕が受けとめたので言うと、「まず、枡野くんの文章は、読んでる側が枡野のカウンセラーにさせられてる気分になる。枡野くんの悩みを聞かされてる気分になる」と。

構成F つけ加えるなら、「読者は本に答えを求めて買うのに、枡野くんは読者に答えを求めている感じだから、これでは売れないんじゃないか」と。

枡野 あと、いくら私小説だとしても、もうちょっと主人公と距離を持って書かないと、読まれないんじゃないかと。で、だから、「これは小説ではない、どう見てもこれは小説じゃないよ」とおっしゃってて。
これが前半の批判の部分で。で、後半では「でも短歌はいいよ」と。あと(プロインタビュアーの)吉田豪さんみたいにカウンセリングするのが好きな人もいるから、豪ちゃんにはオススメ……っていう風に、前半で批判して後半で褒めてくださってるんだけど。
でもそれは僕が、「町山さんの『結婚失格』の解説は前半も後半も批判してた」って新刊で書いたから、それへのアンサーかと思ったんですよ。

古泉 それで、小谷野さんは?

枡野 「町山の『結婚失格』解説の真意は、枡野くんストーカーやめろよってずっと言ってるんじゃないか」って小谷野さんはおっしゃってた。

古泉 ほうほう。

枡野 でも最初、それを聞いたとき、「そんな、ストーカーって言っても、自分の子ども(に対して)だし……」って思ったんですね。子どもに会いたいのはしょうがないじゃないかって思ってたんですけど。
ただ小谷野さんはご自身のことも「ストーカーだった」っておっしゃってて、ストーカー小説(『悲望』)でデビューしてるんですよ、小説家として。それで小谷野さんの他の本を読んでると、うなずける意見ばかり書いてあるんですよ。町山さんの本のことも褒めてらして、エッセイ集の中で。
こんなにうなずけることを書いている小谷野さんが、しかも自分もストーカーだったという人が、「枡野さんはストーカーだ」っていうのは、もうそうなんじゃないかと。

町山 フッフフフフ……。

枡野 もう、嫌だけど、受けとめるしかないじゃないか……っていうのが、今の僕の心境なんですね。

町山 うん、うん。

枡野 それで、町山さんはそういうことを、この解説でおっしゃってたんですか?

町山 あのねぇ…まぁ…そうかも……しれないなぁ。

枡野 そうかもしれないんですか!

町山 あの、誰でも失恋したときって、ちょっとストーカーみたいになるじゃないですか?

博士 俺もわかりますよ!

町山 博士、わかります?

博士 なったことあります。ストーカーに。

町山 なっちゃうときって、あるんですよね。

博士 俺、そうなったときに理解できたもん。これかぁって。

町山 古泉くんだってフラれたとき、その子のことを追っかけたり、家の前に行ったりしたことないですか?

古泉 まぁ僕も(離婚して)会ってない娘がいるので、たまに検索するんですけど、何ひとつヒットしなくて悲しい思いをしました。

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