連載

町山智浩×水道橋博士×古泉智浩×枡野浩一「サブカルの歴史を語る~ストーカー編」【6】

【この記事のキーワード】

「誰が一番迷惑かって、自分自身だと思うよ、枡野くん」(町山)

枡野 あの、(自分の)子どもに対してでもストーカーですか?

町山 ………アメリカだと、それをあんまりやると、逮捕されちゃうよ。

枡野 さすがにもう、ずっと、会いにもいってないし……。ただ息子が今、将棋指しを目指していてですね、奨励会っていうのに入っているので、検索すると出てくるんですよ。そういうの見るのもストーカーですか?

町山 いやぁ~……。

博士 こうやって(枡野さんが子どものことをメディアで)語るのはどう?

枡野 (息子の将棋のこととか)本にも書いちゃったし。

町山 あのねえ、枡野くんの一番の問題は、「自分の心がこういう気持ちなんだから、自分は間違っていない」ってところなんだよね。

枡野 はい、はい、はい……。

町山 「心の底から本当にそう思うんだから、それ自体に善悪はない、自分が裁かれるのはおかしいはずだ」……って思ってると思うんだ。

枡野 思ってます、きっと!

町山 たぶん、そこが問題だと思うんだよ。

枡野 ああ……。それはどうすればいいんですか?

町山 嫌がられてると思うんなら、やめるんだよ!

博士 あと……、圧倒的に新しい恋をすればいいんじゃないですか?

町山 それが一番だよね!

古泉 僕は枡野さんはシングルマザーと恋愛すればいいと思ってます。

枡野 そうですか……。

町山 枡野くんは、自分が息子のことを本当に想ってることは間違いなくて、何も責められることはないし、やましいことも何もないし、「これでいいんだ!」と思ってる?

枡野 はい。

町山 自分自身がそれに縛られちゃって、創作活動もそこから離れられなくて、そこからどこへも行けないなら、そのストーカー行為の最大の被害者は自分自身じゃない?

枡野 つまり、そこで縛られて、執着してることが、ストーカー的だということなんだろうか?

町山 そう。おれもよく嫉妬されて粘着されるんじゃん、ネットとかで。

枡野 はい。

町山 ああいうとき凄く思うのが、「あ、この人、嫉妬することでそこからもう動けないんだな」って。

古泉 地縛霊みたいですね。

町山 そうそう、地縛霊。おれに嫉妬して、おれのことばかりが気になってしょうがないんだなと。そうなった人はもうそこから動けない、俺よりけっして遠くに行けない人じゃん、そういう人は、もう終わりだな~って思うわけ。

枡野 町山さんに執着してるってことだから。

町山 その人の人生の目標が凄く低くなっちゃってる。そうじゃなくて、町山なんか関係ない、って、自分のやりたいことやればいいのに、俺に対してどうしようってことばっかり考えてるわけよ、ネットで。
まぁ見てりゃわかるよね。でも俺なんかに縛られてさぁ、でもそれが正しい気持ちだからしょうがないって思ってる。ストーカーはみんな自分が正しいと思ってんだ。

枡野 そうらしいですね。

町山 それで誰が一番迷惑してるかっていえば、自分自身だと思うよ。枡野くん自身。

枡野 …………。

古泉 でもみんな、町山さんから優しい言葉をかけて貰いたいんです……。

町山 ハハハハ……。でも枡野くんはさ、創作が……はっきり言っちゃうと同じことばかり書いてて、せっかく才能があっても……先に行けないじゃん!

枡野 僕、でもあの、最新作『愛のことはもう仕方ない』こそまたあまりにも離婚話でしたけど、一時的にはエンターテイメントを書いて売れたこともあるんですよ。

町山 うん、知ってるよ。

枡野 あの、だから、戻っちゃったんですよ、また。

古泉 アッハッハッハ!

町山 クククク……。

枡野 なんか、揺り戻しが来ちゃったんですよ。

町山 だから通過儀礼っていうのはそのためにあってさ、過去を捨てるために自分を殺すわけだから。だから俺が「枡野くんは旅に出たらいいんじゃないの?」って言ったのはそういうことだったのに……。でも同じ人間関係から出ないから……。

枡野 や! そうでもないですよ、町山さん!

町山 そう?

枡野 ほんとに僕、失敗しちゃったんで今言うのは恥ずかしいんですけど、2年間芸人活動をしたりして、人間関係切ったところでやってたんですけど。それはそれでちょっと僕がはずれちゃったんで、2年間しかできなかったんですけどね。

町山 う~ん……。

博士 枡野さんのあれは不思議な活動だったよね。

枡野 あれは博士さんとかにも影響受けてて……。あのときほら、映画監督の――

博士 園子温ね。

枡野 はい、園子温さんが博士さんのプロデュースで芸人になるっていう(イベントを)観に行きましたよ、僕。それでほぼ同時期に自分も、自分のこと知らないソニー(ソニー・ミュージックエンタテイメント)っていう事務所に入って……。

古泉 博士は園子温さんのまえに(元・週刊プロレス編集長の)ターザン山本さんを芸人にさせてたんですよ。

町山 ターザンも過激なアジで煽った読者を裏切った人だよね。

枡野 でも町山さん! 僕はかなり本気でやってて、月に25本くらい(お笑い)ライブやってたんですよ。

町山 凄いねえ。

枡野 それで、浅草の小屋でもやったし、一番有名なとこだと『末広亭』でもやりましたよ! ナイツさんとも共演したし!
で、かなりかなり、テレビのオーディションとかもかなりかなり惜しいとこまで行って……。でも僕の金が続かなくて、体力と金が続かないことが(主な)原因で事務所を離れちゃったっていう。

古泉 最後(芸人をやめるときに)枡野さん、泣いちゃったんですよね?

枡野 (練習場所の)公園で号泣しちゃったんですけど。僕の相方たちは僕より10歳若いので、『すっきりソング』っていうコンビになって、「M-1」でも準々決勝に行くくらいまで頑張ってますよ。

町山 あ、ほんとに~。

枡野 だから町山さん! ほんとにかなり本気でやってましたよ! 物書きを切り捨ててるくらいだったんですよ、あの2年間は! だから今、戻っちゃったから、こんなこと言ってもあとの話になっちゃうんですけど――。
昨日、オフィス北野のライブを観に行ったんですけど、博士さんの後輩たちのライブで、僕の元相方たちが(お笑いのネタでオフィス北野の芸人と)闘うっていうライブだったんですけど、僕の(事務所の)先輩たちも出てて、それでソニーが勝ったんですけど……、それくらいがっつりやってたんですよ!

古泉 『すっきりソング』が圧倒的に面白かったんですよね?

枡野 『すっきりソング』っていう僕の元相方たちは、僕が抜けてすっきりして、物凄く今躍進してるんです。

町山 ククククク……。

枡野 もう少しで地上波に出られるオーディションも勝ち続けてるんですけど(その後、地上波テレビに何度か出演)。僕は成功してないんですけど、僕のせいで2人は(コンビを)組んだから、僕が2人を(結果的に)繋ぎとめた(形になる)ので、もしかしたら僕がいたことで、僕自身は何も功績残さなかったけど、後の芸人界にちょっとだけいいことをしたかもしれないと……。

【第6回の注釈】

■『映画は父を殺すためにある―通過儀礼という見方』島田裕己・著(解説/町山智浩)ちくま文庫
≪映画には見方がある。“通過儀礼”という宗教学の概念で映画を分析することで、隠されたメッセージを読み取ることができる。日本とアメリカの青春映画の比較、宮崎映画の批判、アメリカ映画が繰り返し描く父と息子との関係、黒沢映画と小津映画の新しい見方、寅さんと漱石の意外な共通点を明らかにする。映画は、人生の意味を解釈する枠組みを示してくれる。≫(「BOOK」データベースより)

■『愛のことはもう仕方ない』
messy連載『神様がくれたインポ』を基調とした枡野浩一の最新小説。サイゾー・刊。日々珈琲を入れ、日々まるで一週間前のことのように十三年前の離婚を思い出し、日々ずっと会えないままの息子を想う、そんな自らの日常を極限まで事実に即して描いている。宣伝コピーは、<嘘つきな男たちへ。正直者を受け入れられない女たちへ>。 中村うさぎによる帯文は、≪人があなたを理解してくれないなんて、当然ではないですか!≫。

_________

◆町山智浩
映画評論家/コラムニスト/在米ジャーリスト。1962年生まれ。早稲田大学法学部卒業後、JICC出版局(現・宝島社)に入社。1996年に米国移住。現在はカリフォルニア州バークレーに在住。週刊文春『言霊USA』など連載多数。著作に『実況中継 トランプのアメリカ征服』『最も危険なアメリカ映画』『アメリカのめっちゃスゴい女性たち』『トラウマ恋愛映画入門』などがある。Webストア≪町山智浩の映画その他ムダ話≫では映画解説などの音声ダウンロード販売をおこなっている。
映画評論家町山智浩アメリカ日記

◆水道橋博士
漫才師/コラムニスト。1962年生まれ。1986年にビートたけしに弟子入り。1987年に玉袋筋太郎と漫才コンビ『浅草キッド』結成。2017年、京都芸術大学客員教授に就任。
芸人・タレント活動のみならず、週刊文春『週刊藝人春秋Diary』連載や日本最大級のメールマガジン『水道橋博士のメルマ旬報』編集長も務める。著書に『水道橋博士のムラッとビンビンテレビ』『はかせのはなし』『藝人春秋』などがある。
水道橋博士のメルマ旬報
『水道橋博士のムラッとビンビンテレビ』公式サイト

◆古泉智浩
漫画家。1969年生まれ。1993年『ヤングマガジン』ちばてつや賞大賞を受賞し漫画家デビュー。これまでに『青春☆金属バット』『ライフ・イズ・デッド』『死んだ目をした少年』の3つの漫画作品が映画化されている。夫婦での里親生活を綴ったエセッイ『うちの子になりなよ (ある漫画家の里親入門)』も発表。Webマンガ『特別養子縁組やってみた 漫画 うちの子になりなよ』へと発展している。他の漫画に『夕焼け集団リンチ 古泉智浩作品集』『ワイルドナイツ』『悪魔を憐れむ歌』などがある。
無料Webマンガ『特別養子縁組やってみた 漫画 うちの子になりなよ』
・公式ブログ 古泉智浩の『オレは童貞じゃねえ!!

 

(構成:藤井良樹)

【1】町山智浩×水道橋博士×古泉智浩×枡野浩一「サブカルの歴史を語る~いくつもの枝編」
【2】町山智浩×水道橋博士×古泉智浩×枡野浩一「サブカルの歴史を語る~雑誌と年表編」
【3】町山智浩×水道橋博士×古泉智浩×枡野浩一「サブカルの歴史を語る~血まみれ編」

【4】町山智浩×水道橋博士×古泉智浩×枡野浩一「サブカルの歴史を語る~ロック編」
【5】町山智浩×水道橋博士×古泉智浩×枡野浩一「サブカルの歴史を語る~権威編」

1 2 3

「いいね!」「フォロー」をクリックすると、SNSのタイムラインで最新記事が確認できます。