町山智浩×水道橋博士×古泉智浩×枡野浩一「サブカルの歴史を語る~芸人編」【7】

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枡野浩一

枡野浩一『愛のことはもう仕方ない』

【1】町山智浩×水道橋博士×古泉智浩×枡野浩一「サブカルの歴史を語る~いくつもの枝編」
【2】町山智浩×水道橋博士×古泉智浩×枡野浩一「サブカルの歴史を語る~雑誌と年表編」
【3】町山智浩×水道橋博士×古泉智浩×枡野浩一「サブカルの歴史を語る~血まみれ編」

【4】町山智浩×水道橋博士×古泉智浩×枡野浩一「サブカルの歴史を語る~ロック編」
【5】町山智浩×水道橋博士×古泉智浩×枡野浩一「サブカルの歴史を語る~権威編」
【6】町山智浩×水道橋博士×古泉智浩×枡野浩一「サブカルの歴史を語る~ストーカー編」

 サブカルについてさまざまに語り合ってきたこのトークもいよいよ最終回。今回はついに水道橋博士が「芸人として売れること」について口を開きます。芸人活動2年で挫折した枡野さんを芸歴30年を越える博士さんはいったいどう考えているのか? さらに博士さんは「町山さんについてもこうすればもっと売れる」とも言ったあと、ツイッターを巡って「もう訴えてやるくらい町山さんに怒られた」話を披露……。最後まで波乱の最終回です!

【第7回の初登場人名】ダウンタウン、マキタスポーツ、池上彰、渡辺正行、居島一平、サンキュー・タツオ、ハリウッドザコシショウ、アンタッチャブル柴田、ハイヒール・リンゴ、Kダブシャイン、吉田正樹、植田マコト、宇梶剛、平井精一、樋口毅宏(敬称略)

「枡野さんは売れたくないと思って芸人やってるんですよ!」(水道橋博士)

博士 俺がねえ、枡野さんの芸人活動を見て、何を感じてるかっていうと……。

枡野 なんと恐れ多い……。

博士 いやいやいや。それでね、芸人である自分が、自分自身の才能を考えたときに、俺自身は今の地位でも売れすぎてるのね。

古泉 えっ!?

博士 これぐらいしか自分には才能がないと思ってたのに(今ぐらい売れた)。ただ、俺に能力があるとしたら、人を見たときに人の道筋は見えるのね。彼はこうやってこうやってればここまで行けるのに、なんでここで足踏みするんだろうっていうときに、その地図は見えている。だから、これをこうやってこうやれば売れるよっていうポイントは見えてて。
で、浅草キッドっていう乗り物はそうやったら進んでいった。それで、本来的な、絶対的な才能っていうのは、俺じゃないと思ってるからね。たとえばダウンタウンを見たときの敗北感であるとか、凄いって思う感じとか、もう完璧に負けるのよ。もう全ッ然違うんだって。
だから最初のときは凄い意識してたの。西はダウンタウン、こっちは浅草キッド、まだ見ずのとき。そして初めて会って、初めて舞台立って、彼らの初めて映像を観たときとか、「凄いっ!」っていうのは一瞬にしてわかるの、それは。
だからそういう意味で言うと、ダウンタウンなんかは売れるべくして売れて、あの地位にいるっていうのはあるけど、俺はサイドロードっていうか、完全にあぜ道のところから、こうやってこうやったら道筋があることはが見えたから、前に行けた。
それはたとえば、マキタスポーツ(芸人/俳優)なんかには「メインロードを行け!」って言ってる。君は芸能本来の歌舞音曲っていうのはできてるんだ、俺はそういうのができる人じゃないから、こうやっていろんな戦術で生き残ってきたけど……って。
だからそういう意味では、枡野さんとかは、根本的に「売れたくない」と思って芸人活動をやってるんですよ! 売れたい人の進むべき道は……俺には見えるよ! この人はこうしてこうやってこう進めれば、こういう道へ行けるっていう。それは見える。

古泉 それはねえ、僕も思い当たる節がありますよ! 僕たちが売れないのはサブカルのせいですよ!

枡野 あのね、違うの。たぶん、(博士さんが)おっしゃることがわかるのは、僕、「短歌を広めるための芸人活動」だったんですよ。漫才の中に短歌を入れたり、コントの中に短歌を入れたりするっていう邪念が凄くて……。
芸人たちはみんな、「モテたい」とか「お金持ちになりたい」とかで芸人になってるのに、その中で僕だけが「短歌を広めるためにはどうすればいいか」ってやってたから。それは「売れる気ないだろ」って思われちゃいますよね。

博士 うん。だけど、それはメインの部分なんだけど、俺が言ってる「この人はこうやればいい」っていうのは、純粋に、「この人は衣装変えればいい」とか、「靴をこれに変えればいい」とか、そんなことなんだよ! 最も単純に言やぁ。

町山 俺にはそんなこと1回も言ってくれたこないじゃん!()

博士 えっ? 何を?

古泉 町山さんが「自分はアドバイスしてもらってない」と言ってます()

博士 俺が? 俺がなんで町山さんにアドバイスするの? だってさ、俺自身が町山さんの影響下にいるって言ったじゃん!

枡野 だから、町山さんをタレントとして売るためにはっていう……。

博士 あ、それはアドバイスしたよ、いくつも! まず第二の池上彰になるっていう、そう(プロデュース)しようとしたことあるよ。でも本人が嫌がったからやめたの。

古泉 池上彰みたいにしたら売れますよ!

町山 いやぁ~無理でしょう。チンコとか言うの好きだし。

博士 だから、そういうときに(町山さんは)「俺は無理だよ」って降りるじゃない。枡野さんも降りるのよ。誰かにプロデュースして貰って、こうやってこうやってこういう風にすれば売れますよって言われて、「いや、僕は無理ですよ」っていう人、そういう人は売れないの。そこで乗っかって、こう行きますこう行きますこう行きますって、道筋を描いてくれる人に乗る人が売れるの。
俺はね、お笑いの才能よりそっちの道筋を描く才能のほうが自分はあると思ってる。ただ、人をプロデュースすることで自分が権威になるのも嫌だから、するのは嫌なんだけど、でも私的には「こうやったほうがいいよ」とかは思いつくんだよね。
だから爆笑問題について、渡辺さん、リーダー(コント赤信号の渡辺正行さん)がこう言ってる。「彼らはもう芸はできていた。売れない理由は、純粋に衣装だけだった」「だから(お笑いライブハウス)ラ・ママで説得した。君ら、衣装着ろ。そういう普段着じゃなくて衣装着ろ」――それだけで、ポン!と行けたって。爆笑問題。だからそんな単純なことですよ。俺がずーっと言ってるのも。

古泉 なるほど……。

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