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女性専用車両に反対する男性たちの主張への、裁判所の判断

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Thinkstock/Photo by joel-t

 216日午前8時半頃、東京メトロ千代田線の国会議事堂前駅で「お客様トラブル」が発生し遅延が出た。SNSの投稿によれば、女性専用車両に乗車していた複数の男性が他の乗客と揉めたことが原因だという。

 近年、痴漢や痴漢冤罪が注目される機会は増えている。例えば昨年は、313日に御茶ノ水駅で女性から痴漢を指摘された男性がホームから線路に飛び乗り逃走する事件が起きてから、類似の事件が短期間の間に頻繁に発生した。また201711月には、JR埼京線で、4人の男性が1人の女性を取り囲むという集団痴漢事件も起きている。

 女性専用車両は、京王線が2000年に痴漢行為防止を目的に、女性専用車両を試験的に導入し、2001年に本格導入したことで始まった。これを発端に全国の鉄道会社に広がっていった。今回、遅延を発生させた男性たちとの関係は不明だが、以前より女性専用車両を「男性差別」とし、女性専用車両に乗り込むグループが存在している。「女性専用車両はあくまで任意協力を求めるものであり、男性の乗車を事実上禁止するのは不当である」といった主張もある。

 女性専用車両については各鉄道会社で説明文に微妙な違いがみられる。例えば今回トラブルの発生した東京メトロはHPに次のように表記している。

「朝の通勤・通学ラッシュ時間帯に女性のお客様・小学生以下のお客様等に安心してご利用いただくことを目的に、下記路線で女性専用車を導入しています。女性専用車は、女性のお客様のほか、小学生以下のお客様、お身体の不自由なお客様とその介護者の方もご乗車いただけます」

 一方、JR東日本や京王線には「お客さまのご協力をお願いいたします」「皆さまのご理解とご協力をお願いします」と、乗客に対して協力を呼びかける表現を使っている(東京メトロの説明にある通り、「女性専用車両」は、小学生以下、身体の不自由な乗客も利用することができる)。

 大阪市交通局も「女性専用車両は性別による差別ではないのですか?」という問いに対して「女性専用車両については、女性のお客さま及び男性のお客さまのどちらにも旅客運送契約上の義務が発生するものではなく、任意のご協力のもとに行っているものであり、強制力を帯びないことや導入した目的の趣旨等から差別には当たらないと考えています」と、あくまで任意協力であると回答している。

 SNSの複数の投稿によれば、今回、女性専用車両に乗り込んだ複数の男性は、「これは権利だ」と主張していたようだ。これはつまり、あくまで任意協力である女性専用車両に男性が乗車することは権利である、ということだろう。

 実は過去に、女性専用車両に反対する団体が、健常な成人男性の女性専用車両への乗車を事実上禁止しているのは憲法に違反するとして鉄道会社を訴えたという事例がある。その際の裁判所の判断を要約すると以下の通りだ。

「女性専用車両は痴漢被害を受けるおそれのある女性乗客に対し安心、快適な環境を提供するために行われていると理解できるため正当なものである」
「一部時間の一部車両で実施されているもので健常な成人男性が目的地まで移動することを困難にするものではない」
「鉄道会社が、健常な成人男性も乗車できる旨をあえて提示せず、女性および小学生以下また身体の不自由な人(その介助者を含む)が乗車するための専用車両であることを提示したことに違法性はない」

 つまり裁判所は、女性専用車両そして「女性専用車」という表示は正当であるものと判断しているのだ(女性専用車両の違法性を否定した事例)。

痴漢冤罪は問題ではない、ということではない

  20151118日に朝日新聞で掲載された「痴漢から守るための「女性専用車両」、効果を探ると…」によれば、鉄道会社によって、「女性専用車両」が痴漢被害防止にどれほどの効果を及ぼしたのか、評価が異なっているようだ。なにより気になるのは、朝日新聞の調べに対し、阪神電鉄やJR西日本が「データをとっていない」と回答している点にある。

 痴漢を防止するためにどのような方法が効果的であるのかを検証することは欠かせない。女性専用車両を導入することによってどの程度、痴漢被害が減少しているのかが確認し、その効果を評価することで、さらなる対策を考えることも出来るだろう。一方、もしも女性専用車両に痴漢を防止する効果がなかったのであれば、別の方法を改めて考える必要もあるだろう。

 そもそも女性専用車両の目的は、痴漢防止だけでなく、「安心して快適に乗車できること」でもある。なにをもって女性専用車両の「効果」とするのかも含め、議論を進めていくためも鉄道会社には、データの蓄積と分析を進めていってもらいたい。

 本記事の冒頭で、近年、痴漢冤罪への注目が集まっている、と書いた。痴漢被害の訴えに対し、「でも痴漢冤罪も存在する」という反論や、それを助長するかのようなメディアの報道が度々みられる。

女性の痴漢被害を笑い、男性の被害者意識だけを叫ぶ「男性のための痴漢対策ワークショップ」のおぞましさ
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 確かに冤罪そのものは大変な問題だ。だが忘れてはいけないのは、痴漢問題について考える際には、「痴漢冤罪を問題視する声が、しばしば痴漢被害を矮小化するために使われる」ことだ。おそらく痴漢冤罪が問題ではないなどとは誰も言わないだろう。必要なことは、なぜ「女性専用車両」が存在しているのか、その現実を鑑みた上で、いかに痴漢を減らすか、そして冤罪が発生しないような対策を取るかを議論していくことなのではないだろうか。

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