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しつけとしての体罰、6割の大人たちが容認。保育園でも「たたいたほうがいい時あるよね」

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家庭内の「しつけ体罰」ルールを親は適切に運用できるか

 体罰等によるしつけが、子どもに良い影響を与えないことは諸々の調査におり科学的に明らかになっている。短期的には有効に思えたとしても子どもに発達の遅れが見られる、子どもの非行や反社会行動につながる、たたくことで子どもの振る舞いが改善された証拠はない、など。また、体罰等によるしつけがエスカレートした結果、子どもが死亡したり重傷を負ったりと取り返しのつかない事態に発展するケースも少なくない。あらゆる方面から考えて「しつけとしての体罰」は容認・肯定されるべきではないのだが、なぜ「しつけのためなら止むを得ない」と考えてしまうのだろうか。

 私は現在2歳の子どもを育てているが、我が子をたたくことは絶対にしないようにしている。私自身、子どもの頃に家族や教師にたたかれたことがあり、しかしそれによって反省した経験は皆無どころか不当な扱いを受けたという不満や被害者意識だけが残りますます自分を省みなくなったからだ。だが、子どもにイラッとして怒鳴ってしまうことはある。「しつけ」ではなく、単にイライラをぶつけているだけだ。客観的に振り返って、怒鳴る必要性があったと納得できるケースはない。自分の中にも暴力的な「衝動」があるのだと自覚させられる。

 一方で、私がこれまで保育園などで出会ってきた保護者の中には、感情的になって子どもに怒りをぶつけてしまうのではなく、「しつけとしての体罰」は必要だと冷静に認識した上でたたいたりげんこつをするという価値観の人もいた。

 半年ほど前、子どもが通う保育園のクラス会に参加した時、保護者間でのグループワークで子どものしつけについての話題になった。すると、ある保護者が「うちでは子どもたちが悪いことをしたらげんこつする」と言い、それを受けて別の保護者も「たたいたほうがいい時あるよね」と同意したのだ。私は驚いた。どちらとも、行事や送り迎えで言葉を交わす限り、非常識でもなく子どもへの愛情が薄いようにも養育能力が低いようにも見えず、また暴力的にも見えない普通の大人、普通の保護者だ。“しつけの適切な方法”“必要な行為”として体罰を選んでいるのだと思われ、そういった家庭内ルールは現状、法律違反にはならないだろう。案外、身近にも体罰を容認・肯定する大人はいるのかもしれない(ちなみに、保育園で先生たちが「しつけとしての体罰」に言及したことは今のところない)。

 しかしである。感情的に怒りをぶつけるのではなく、家庭内の決まりごととして「悪いことをしたらたたく」等のルールを設けたとして、それを適切に運用できる親はどれくらいいるのだろう。よほどの人格者でなければ、家庭内ルールの適切な運用は難しいのではないか。そして立派な人格者だけが親になれるわけでは全くない。本人の自覚はどうかわからないが、精神的に未熟なまま30代、40代になっていく人は少なくないはずだ。家族だから……と、つい甘えが頭をもたげることもあるだろう(甘えが悪いということではない)。子どもが悪いことをしていなくても、親側の機嫌が悪かったり疲れていたりで、暴力的な言動につながることはあるだろうし、その暴力が絶対にエスカレートしないと果たして言い切れるだろうか。

 子ども自身が納得した上での体罰なら問題はないのでは、という意見もあるだろう。私の周囲にも、幼少期は悪いことをしたら親に叩かれたが、自分が悪かったのだと納得し大人になった現在も親を尊敬している、と語る友人がいた。ただ、ひとつ忘れてはならないのは、未成年の子どもと親との関係は、どう転んでも親が強者であり、子どもが弱者であるということだ。立場の強い者が立場の弱い者を「しつける」ために暴力を利用することを、やはり私は肯定できない。支配・被支配の関係をより強固にし、弱い者が自分の権利や意見を主張できなくなってしまうリスクが伴うと考えるからだ。

 幼い子どもがまだ「危ないこと」「やってはならないこと」を認識できず、口頭で注意や説明を受けても理解できないのは仕方がないことだろう。たたかれたり怒鳴られたりすれば、相手が怒っていること、自分が叱られるようなことをしたのだということを理解できる側面もあるのかもしれず、怒られないように意識して行動するようになる効果があるのかもしれない。ただ、「体罰」を肯定すると、親が衝動的な怒りやイライラをぶつけるためについしてしまった暴力的な行動も、自己を省みずに「しつけのためだった」と言い訳できてしまう。それがどうしてもたたかなければならない場面だったか、確実に暴力が必要な場面だったか、振り返ることが出来なくなってしまわないだろうか。

 体罰によるしつけをせずに、子どもに礼儀・作法・社会のルールなどを教えていく方法はあるはずだ。これはきれいごとではなく、身近で切実な問題として、暴力を利用しない子育てを考え実践していかなければならない。それは親に過度なストレスを強いるものではなく、むしろ、体罰せざるを得ないと考え「たたく方も心が痛いのだ」と主張する人が“たたく痛み”を覚えなくても済むような方向になるだろう。親を追い詰めることで子の環境が良くなることはない。

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