男の子への性的搾取と、オンライン上の居場所

【この記事のキーワード】

男の子への性的搾取と、オンライン上の居場所の画像1

 男子高校生にわいせつ行為をしたある地方議員が、今年に入ってから遺体で見つかった。児童買春・ポルノ禁止法で逮捕され釈放された後に、車の中で自死してしまったらしい。同性間の性暴力やDVがあることの知られていない社会で加害者や被害者の性別があかされることは、私自身は一定の意味があることだと思う。議員であれば、実名報道されても仕方あるまい。ただ、ときどきこういう痛ましいことは起きる。不祥事や犯罪に対するペナルティに加えて「予期せぬアウティング」という制裁がついてくるというような。彼が命を絶った理由が他にいろいろあったとしても、ちょっと考えさせられる話だ。

 報道によるアウティングは、ときどき起きる。同性間DVで殺された被害者が実名報道されたこともあれば、猟奇的事件の被害者がトランスジェンダーでそのことが格好の週刊誌ネタになってしまったこともあった。つまり性的少数者はうっかり殺されてもいけない。まあ、そもそも犯罪被害に遭った際の実名報道なんて性的少数者でなくとも大多数の人は望んでいないので、どんな事件であったとしても「詳細をどこまで報じるのか」という根本的な問いはいつもあるのだけれど、いちおうメディアが事件を実名で報じるのには「そのことが公益にかなうため」という理由があるそうだ。それであるならば、今回このような事件がおきたという報道から私たちは何を読みとるべきなのだろうか。教訓は何だったろうか。そんなことに想いをはせる。

 今回の被疑者はインターネットを介して出会った高校生を買春したり、中学生にLINEで性的な画像を送らせたりしたことが報じられている。男性に惹かれる男の子たちがインターネットで自分探しをはじめると、すぐにアダルトコンテンツや出会い系掲示板にたどりついてしまうというのは、よくある話だ。ためしに「ゲイ 高校生」でネット検索してみると、みごとにアダルトコンテンツだらけで、ときどき「yahoo!知恵袋」などで「性行為目的じゃない仲間がほしい」と相談をしている子がいるのが切ない。

 英国のLGBT支援団体らによる調査では、10代の子どもたちが自分の性的な写真や動画を撮る割合はゲイやバイセクシュアル男性の場合は59%にのぼり、そのうちの47%がオンライン上で出会った見知らぬ相手にこれらを送ったことがあると回答している。同性が好きかもしれないと思ったときに、はじめて目にするコミュニティの「常識」が、あまりにセックスやルッキズムにかたよっていれば、そもそもゲイとはそのようなものだと思いこむ子どもたちもいるだろう。

 私が関わっているLGBT系ユースの団体「にじーず」のオンライン匿名質問箱には、「男らしくないとゲイはモテませんか」「ゲイはノンケより外見を気にしますか」といったコメントが寄せられる。男の子が好きな男の子であることと「だれかが作ったゲイの世界」の一員になることの間で引き裂かれている声にも聞こえる。いやなことはしなくていいよ、という声がもっとかれらには必要じゃないのか。きみは、きみのままでいいんだよ。

 昨今では「自殺 方法」「死にたい」などと検索すると、支援機関につなげられるようなオンラインサービスをしている団体があるらしい。特定非営利法人OVAでは「夜回り2.0」というキャッチーな言葉で、支援が必要な人へのオンライン上のアプローチが有効ではないかと提唱している。若者が検索するとエロコンテンツだらけのLGBTについても同じことが言えそうだ。最近知りあった英語圏の友人は、10代の頃にポルノサイトをのぞこうとして「18歳未満の人はこちら」とオンライン性教育サイト「scarleteenを紹介されたことが役立ったといっていた。このサイトは多様な性にもひらかれていて、妊娠や恋人との付き合い方、ボディ・イメージなど、子どもたちの困りごとにもマッチしている。日本にもこんなサービスがほしいし、「ネットは危ない」だけでないインターネット活用の方法について議論していく必要があると思う。いろんな人のアイデアを聞いてみたい。

「男の子への性的搾取と、オンライン上の居場所」のページです。などの最新ニュースは現代を思案するWezzy(ウェジー)で。