芳根さんといえば『べっぴんさん』で、戦後、子供服メーカーの創業者となるヒロイン・坂東すみれを演じました。当時も個性豊かな出演者たちを相手にしていたわけですが、なんだか彼女は埋もれていた印象。やたら真面目でちょっとおてんばなお嬢様という役柄に無理があったような。
個人的には『べっぴんさん』よりも『表参道高校合唱部!(TBS系・2015年)』のほうが好きでした。香川県から家庭の事情で表参道の高校に通い、廃部寸前の合唱部を救おうとする“香川真琴”役。「駆け引きなんて知らないわ」とばかりにストレートに自分をぶつける姿が可愛かった。琴音の10秒ジャンプ、試してみたくなったもんな。
そういう「田舎に住んでいるのだけれど、実は都会っ子よりも光る要素を持っていた」という背景が見えるような役が、彼女にはよく似合います。今回の月海もそうですけど、トゥーマッチになり兼ねない田舎感を醸し出す演技が素晴らしい……私が『海月姫』を楽しみに観ている理由は、この演技あってこそ。
芳根さんは2013年のデビューから、たったの5年間で朝ドラと月9の主演まで成し遂げたエリート女優です。そしてまだ齢20歳。すでに似合う役はあるけれど、さまざまな役へリトマス試験的に挑戦してほしいと思います。文春砲が放たれる以外は「あ、間違えちゃった!」くらいで、挽回の効く年齢なので。
さて『海月姫』。初回放送では濃厚キャラクターたちのコントロールが効かず、とっ散らかった展開が否めませんでした。それが回を追うごとにまとまってくるという、ドラマオタク(私も『雨水館』の住人のひとりですね)垂涎の展開へシフトしています。ストーリーを追うのはドラマ鑑賞の前提ですが、眺めているだけでも楽しいのでぜひ一度録画を。
※一部記事を修正いたしました。
1 2