LGBT支援を安心してやるために必要なヒト、カネ、場所

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トランス男子のフェミな日常/遠藤まめた

トランス男子のフェミな日常/遠藤まめた

 一昨年から池袋ではじめた「にじーず」の参加者が、先月とうとう28名(スタッフ含む)にのぼった。「にじーず」は10代から23歳ぐらいまでのLGBT、あるいはそうかもしれない人たちの居場所作りをしている団体で、毎月1回、池袋保健所の1階を借りて、いつ来ても帰ってもよい無料のオープン・デーをしている。

 ふだんはUNOなどのゲームから始まり、お絵描きしりとりやビブリオ・バトルなどの交流企画、参加者が語りたいトピックごとに集まる「テーマ・トーク」などを行っている。年齢制限を設けているため若者しか参加することができないが、参加者はすべてのプログラムに加わらない自由をもち、途中でコンビニに行っても良いし、本人が名乗らない限りどのようなセクシュアリティであるかを言わなくても良い。自分がLGBTかもしれないと思った若者たちにとって、普段そのことを気軽に話せる場所はあまりない。たわいのない推しマンガの話題でさえ話す相手を選ばないといけないし、インターネット以外で同世代の当事者とやりとりできる機会も少ない。安心してだらだらできる場は、LGBTに限らず多くの若者にとって必要だが、もっと改良できることはないかとスタッフたちと日々努力しているところだ。

 参加者がこれだけ増えると「椅子がなくなる」「吸える酸素が薄くなる」といった物理的な問題が出てくる。開催地も増やさなくてはという気にもなる。もともと池袋で活動をはじめたのは、横浜で同様の活動をしているNPO法人SHIPのシンジさんから「横浜に来る交通費がなくてバイトをしている子がいる」と聞いたためだった。交通費であきらめないでいいように、場所の選択肢を増やしたい。でも、拠点が増えればスタッフを増やす必要がある。結局のところ、安定して運営するためには人材と金と場所が課題になる。

 これまで「にじーず」がのびのびと活動してこられたのは、会場である池袋保健所1Fに、もともと若者向けのHIV/AIDS啓発をしている団体「ふぉー・てぃー」がいたおかげだ。「ふぉー・てぃー」は性に限らず、若者のあらゆる相談を受けている団体であり、「にじーず」のイベント時にはいつも一緒にスタッフとして参加してくれている。若者たちはセクシュアリティのことだけでなく、勉強のことや進路、家族関係の大変さ、その他すべての日々おきるダルいことに気を揉んでいるから、若者支援をまるごと得意としている人たちに関わってもらえるのは心強いことだ。逆に言えば、そうでもないと不安の塊ともいえる。LGBT支援というのは「LGBTのことだけ知っていればいい」では済まされないのだと、つくづく思う今日この頃だ。

 LGBTについての情報が増えれば増えるほど、当事者が「自分もそうかも」と自覚する年齢は低くなる。仲間がほしいとか困りごとを話したいといった支援ニーズも顕在化する。この春からも、いくつかの地方自治体でLGBTを対象とした支援施策がスタートするが、どこも支援者の確保や、質の担保、支援を担う人達へのケアをどう行うかは苦戦しているようだ。たくさんの当事者と接したことがあり共感能力がある人に加えて、もともと支援全般にスキルがある人がうまく関わらないと、困惑する場面も多いだろう。支援者を増やすためには両者がまじわる接点をもっと増やすことが重要だ。自治体の予算や各団体の助成金がそのような接点を増やすために使われていけば、5年後にはだいぶ日本社会は変わるんじゃないかと思う。まあ、まずは自分のところの団体をなんとかしなきゃな。

 ※第20GID(性同一性障害)学会の二日目シンポジウム「性別違和のある子どもたちの居場所づくり」内で、「にじーず」の取り組みが発表されます。各地の他団体の報告や若者のディスカッションもあるので関心のある方はぜひどうぞ。http://gid20.kenkyuukai.jp/

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