
Photo by 赵 醒 from Flickr
東京には、夢追い人がたくさんいる。中でも女優やモデル、お笑い芸人や歌手など、努力が報われるとは限らず、大勢の志望者に対して極端に経済的成功者が少ない分野で夢を実現しようとすることは、一見無謀なカケのように思われる。
家族から反対されたり、同年代の友達たちが次々に社会の中で居場所を見つけ落ち着いていく中で、自分だけが取り残されているような苦しさは、夢を追う楽しさやトキメキに付随する税金のようなものなのかもしれない。
「無謀かもしれない」という不安と焦りに押し潰されそうになりながらも「夢を追いかけられる今が幸せ」と語るのは、一年半前に佐賀県から上京してきた香田由加さん(Twitter:@yuca0712)だ。

今日の上京女子・香田由加(24)佐賀県出身
今日の上京女子/香田由加(24) 教室に行くのが怖かった私を励ましてくれたもの
由加さんが女優を目指すきっかになったのは、高校時代のいじめだった。バレーの強豪校に入学した由加さんは、低学年にも関わらずレギュラーの座を射止めたことをきっかけに、周りからやっかまれる存在となっていた。
暴力などを振るわれることはなかったが、存在を無視されたり避けられることが続き、精神的に追い詰められていった。教室に入ろうとすると足がすくむようになっていた。家ではいじめのことは言えなかったが、次第に食欲をなくしていく由加さんを見かね、両親は別の学校への編入を促した。
バレーが好きだから強豪校に入ったのに、すぐにやめてしまった自分がふがいなかった。罪悪感に押し潰されそうだった由加さんの気持ちを慰めてくれたのは、趣味の観劇だった。
舞台上で輝く役者さんも、華やかな舞台に立つまでには数々の挫折があることを知って励まされる思いだったという。「私もいつか、あの場所に立ちたい」。バレーに夢中だった由加さんの気持ちは、いつのまにか女優になりたいという夢に代わっていった。
週6日働き、学費と上京費用を稼いだ
大学は、表現学科という演技を学べるクラスがある福岡の短大に進むことに決めた。教育熱心な家庭に育ったため当然両親からは反対されたものの、「学費はできるだけ自分で払う」という由加さんの熱意に押され、両親はしぶしぶ受け入れてくれた。そのため、由加さんは週に6日働いて学費を捻出した。時給680円という福岡の最低賃金のバイトだったため簡単には稼げない。店長に直訴して、一日12時間働いた日もあったという。
しかし、大学在学中からオーディションを受けていたが、落ち続ける日々が続き、卒業後も女優への足掛かりは掴めなかった。同じ大学で女優を目指していた友達が夢を諦める姿も見てきた。それでも、夢を諦めることはできなかった。
大学を卒業してしばらくしたある日、上京費用が貯まったことを機に、思い切って上京することを決めた。当然、女優としての仕事はゼロからのスタート。上京したからといって女優への道が開けることが約束されているわけではないけれど、少しでも可能性がある場所に身を置きたかった。
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