
水原希子ツイッターアカウントより
昨年、モデル・女優の水原希子が、ツイッターでヘイトスピーチに晒されていることを複数メディアが報じた。アメリカ人の父親と、日本で育った韓国人の母親の間に生まれており、彼女へのヘイトスピーチは、彼女のルーツや女性であることに対するものになっている。
そんな水原が、3月7日放送の『NEWS ZERO』(日本テレビ系)に出演。かつて自身のルーツをどう受け止めていいのかわからず、隠すようなことをしてきた、ということを語った。
「家に帰ったら白人のお父さんがいて、母は日本で育っている韓国人。子どもの頃からどう受け止めたらよいかわからなくて、自分を隠すようなことをたくさんしてきてしまった。自分のバックグラウンドを受け入れられなくて、恥ずかしいと思っていた」
「共通理解」にすらなっていない、差別禁止
3月2日、東京都世田谷区で、国籍や民族、性的マイノリティ、障害者などへの差別の解消を謳う「世田谷区多様性を認め合い男女共同参画と多文化共生を推進する条例」が成立した。今年4月1日より施行予定だ。
この条例には以下のような附則が書かれている。
「個人の尊厳を尊重し、年齢、性別、国籍、障害の有無等にかかわらず、多様性を認め合い、自分らしく暮らせる地域社会を築くことは、国境及び民族の違いを越えて私たち人類の目指すべき方向である。また、一人ひとりの違いを認め合うことが、多様な生き方を選択し、あらゆる活動に参画し、及び責任を分かち合うことができる社会の実現につながる」
国の定める法律ではなく、また罰則規定もないが、国籍や民族に基づく差別を禁止する条例だ。『カナロコ』によれば、保坂展人世田谷区長は「この条例に書かれていることは共通理解であるはず。画期的とみられることが驚き」と述べているそうだが(人種・LGBT差別禁止を明記 世田谷区で条例成立)、残念なことに、当たり前のことが書かれているはずのこの条例を理解しない人たちがいる。
日本初となる国籍・民族差別禁止条例の可決の瞬間を見届けに、お隣りの街である川崎から、粘り強く差別とヘイトに抗する現地での取り組みを続けている、崔 江以子さんも来てくださいました。民族、国籍が違っても、だれもが安心して幸せを追求できる、差別のない街へ。多くの市民共通の願いです。 pic.twitter.com/1WYe958yef
— 上川あや 世田谷区議会議員 (@KamikawaAya) 2018年3月2日
これは上川あや世田谷区議会議員の、条例が可決される前日のツイートだ。問題はこのツイートに寄せられているリプライにある。そのほぼ全てが目も当てられないヘイトスピーチなのだ。この現状こそ、世田谷区の条例が必要だということの証明になっている。そしてこうしたヘイトスピーチは、なにも上川議員だけに寄せられているわけではない。日本中で今現在も行われているものだ。
「してきてしまった」という後悔
水原希子はインタビューの中で、「子どもの頃からどう受け止めたらよいかわからなくて、自分を隠すようなことをたくさんしてきてしまった。自分のバックグラウンドを受け入れられなくて、恥ずかしいと思っていた」と言っていた。
水原が子供の頃から自身のバックグラウンドを受け入れられなかったのは、直接的な差別を受けたのではなく、「周りと違うこと」に思い悩んでいたため、という可能性もあるだろう。だがおそらくそうではない。他国にルーツがあることを受け入れられないような社会だったからこそ、それを隠し、恥ずかしいと思ってきたのだと思う。それは彼女に寄せられていたリプライや、あるいは上述の上川議員に寄せられているリプライをみれば容易に想像できることだ。
しかも水原は「隠すようなことをたくさん“してきてしまった”」と語っている。自身のルーツがどの国にあろうと、恥ずかしいと思う必要などないはずなのに、彼女に恥ずかしいと思わせてしまうだけでなく、過去の行いを後悔させてしまっているのだ。
水原は番組のインタビューでこうも話している。
「みんなが一緒の方向を見ないといけない。そういう暗黙のルールみたいなものが一番怖い。私の場合は国籍だったけれど、いまはジェンダーのこととか、いろいろな多様性があって。この地球に生きていて、みんな人間だし。そういう風に考えたら楽になった」
「ヨーロッパ、アメリカに影響を受ける。#Metooの動きだったりとか。これが日本で起きたらどうなるんだろうってとても感動した。アジアの女性だって意思があるし、美しいし、もっと発信していきたい」
差別に反対すること。そんな当たり前をまずは「共通理解」にしなければならない。