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小泉今日子が雄弁に語る! 独立後の初仕事に選んだ舞台「毒おんな」から見える目的地

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 劇場へ足を運んだ観客と演じ手だけが共有することができる、その場限りのエンターテインメント、舞台。まったく同じものは二度とはないからこそ、時に舞台では、ドラマや映画などの映像では踏み込めない大胆できわどい表現が可能です。

 俳優として演技を見せるという行為自体は同じであっても、舞台の世界は、いわゆる芸能界の枠組みとは少し違う力学が働いています。のんこと能年玲奈や成宮寛貴など、スキャンダルや不祥事で所属事務所という芸能界をサバイブするための保護者のもとから離れ消えた俳優たちの復帰が、まずは舞台からと噂されることが多いのはそれゆえのこと。

 とはいえ、俳優本人が出たい作品であってもマネジメントサイドの意向で出演がかなわなかったり、映像での需要がなくなったがために不本意で舞台に追いやられたりすることは、俳優が事務所に所属している以上、珍いことではありません。

 2018年に入り、主演クラスの俳優が事務所から独立してフリーになるニュースが続いています。なかでも大きな話題になったのは、独立とともに不倫も公表した小泉今日子です。「型破りな生き方のキョンキョンらしい」と評されつつも賛否両論でしたが、彼女がフリー初として選んだ作品も、やはり舞台。主演作「毒おんな」は、どんな言葉よりも雄弁に、小泉がやりたかったこと、今後目指したいものを語る作品でした。

 「毒おんな」は、東京の新宿・花園神社で上演する野外劇で知られているアングラ劇団・椿組の公演で、脚本は青木豪が手掛け、文学座の高橋正徳が演出。今回の劇場は客席数約200のザ・スズナリで、通常であれば小泉クラスの俳優が出演するキャパシティではありませんが、演劇の街・下北沢の老舗劇場であり、時おり著名俳優が本人の強い希望で出演することがあります。

 小泉が演じる札幌のフレンチシェフ秋野楓は、同棲する恋人に暴力を振るわれ、輸入食材店会長・鰐淵次郎の協力で地方の牧場へ避難してきます。垢ぬけた容姿と溢れる教養、セレブな生まれと境遇にも関わらず不遇な彼女に同情した牧場の皆に温かく受け入れられた彼女ですが、やがて鰐淵や牧場に通う獣医から口八丁で大金を引き出し、女性陣にはマウンティングをかましはじめます。

 鰐淵に向ける上目遣いや、身の上話をする時の語尾の伸ばし方、「ンフフ」という小さな笑い声のわざとらしさは思わずイラっとくる、いかにもなあざとさ。小泉は肌の白さがとても目を引いたのですが、要求される金額の大きさにためらう会長へ結婚をほのめかし圧力高めに駆け引きする時にきゅっと寄るおでこのシワが生々しく、生き抜くための女の手腕のリアルさを強く感じさせました。

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フィナンシェ西沢

新聞記者、雑誌編集者を経て、現在はお気楽な腰掛け派遣OL兼フリーライター。映画と舞台のパンフレット収集が唯一の趣味。

twitter:@westzawa1121

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