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銃乱射事件をサバイバルした高校生エマ・ゴンザレス、全米が注目するスター活動家に

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wikipediaより

 2月14日、ヴァレンタインズ・デイの午後。アメリカ・フロリダ州のマージョリー・ストーンマン・ダグラス高校で乱射事件が起きた。同校を退学となった19歳の元生徒がAR-15と呼ばれるアサルト・ライフル(*)を乱射し、生徒14人と教職員3人の計17人が死亡、17人が負傷した。亡くなった生徒の半数は日本の高校1年生にあたる9年生で、まだ14歳だった(**)。また、負傷者の中には予断を許さない重傷者も含まれている。

 アメリカでは銃の乱射事件が延々と繰り返されており、教会、映画館、職場などさまざまな場所で起こっている。学校での乱射は犠牲者の年齢が若いことからとくに悲惨に感じるが、わけても2012年に起こったサンディフック小学校での乱射では20人もの6/7歳児が殺され、全米に大きな衝撃を与えた。

 犠牲となった子供たちを悼むオバマ大統領が涙を流し、子供たちの親が銃規制法の強化を求めて運動をおこなったが、それでも銃大国アメリカは銃を野放しのままとした。

 だが、今回はこれまでの銃規制法強化運動とは異なる動きが巻き起こっている。マージョリー・ストーンマン・ダグラス高校(以下、MSD高校)の生徒たちによる「ネヴァー・アゲイン・MSD」(MSD校での乱射事件を2度と起こさない)だ。その中心となっているのが同校12年生(高校最終学年)のエマ・ゴンザレス(17歳)だ。

(*)軍隊用の自動小銃を一般販売用に軽量化した銃。多くの乱射事件で使われている

(**)アメリカの学校は5・3・4制かつ日本とは就学時の年齢が異なり、高校入学時は13/14歳。ただし行政区によって多少異なる

大統領も、NRAもおそれない高校生

 乱射事件のわずか24時間後にエマはCNNに出演し、ついで2日後の2月17日にはフロリダ州の郡裁判所の前で銃規制についての11分におよぶ演説をおこなった。この演説によってエマは一躍注目を浴びることとなる。エマは、銃規制法が徹底した国では乱射は起こらず、「日本で乱射は起こったことがない!」と訴え、さらに「政府や大統領がお悔やみしか言えないなら、犠牲者が変化を起こさなければならない」と、トランプへの挑戦状も叩きつけたのだ。

 その2日後、エマと生徒たちはフロリダ州議会で銃規制について発言。翌21日、CNNが主宰し、全米放映された銃規制についてのタウンホール・ミーティング(政治家などと市民の対話集会)にも、エマは他の生徒たちとともに参加した。数千人の観衆に囲まれる形で会場中央にステージが設えられ、エマは壇上で銃の強力な擁護団体、NRA(全米ライフル協会)のスポークスウーマン、ダナ・ロシェと対峙した。

 エマを含む多くの銃規制派の主張は「銃、とくにAR-15など自動小銃の販売規制を厳しくする、または販売禁止」と「銃購入時のバックグラウンド・チェックを厳格化し、精神疾患者に銃を売らない」の2点だ。

 フロリダ州の銃法は全米50州の中でもとくに緩いとされている。同州では18歳以上で銃の購入が簡単におこなえる。19歳の乱射犯、ニコラス・クルーズは複数の銃をすべて合法的に購入していた。かつ犯人は銃やナイフを構えた写真をインスタグラムにアップし、小動物を殺すこともしていた。高校も素行不良で退学となっており、在学中の犯人を知る生徒たちは口をそろえて「彼が乱射事件を起こしたことに驚きはない」と語っている。また、家庭でも素行に問題があり、過去に母親が通算40回近く警察に電話をしていたことが報道された。しかし警察はなにもせず、銃購入の際のバックグラウンド・チェックも素通りだった。

 エマはロシェに対し、「自動小銃の入手はもっと難しくするべきだと思いませんか?」と質問した。スポークスウーマンは「まず、あなたがこうして声を上げていることは賞賛すべきです」とエマを持ち上げ、「私もそんな10代でした」と、エマや生徒たちの共感を得ようとした。次いで犯人を「気の触れたモンスター」「気が狂っている」「クレイジー」「精神異常者」「マッドマン」などと呼び、長々と要点以外を喋り続けた。質問をはぐらかす常套手段だ。

 エマは「あなたの話を遮りますが、質問は『自動小銃の入手はもっと難しくするべきだと思いませんか?』です」と切り込んだ。

 ロシェがATF(アルコール/たばこ/火器の管理をおこなう政府の部署)、大統領、司法省の名を出して再度はぐらかそうとすると、エマは「あなたの意見を聞いているのです!」と遮った。ロシェが「NRAの立場は……」と言いかけると、エマはまたもや「あなたの意見は?」と突っ込んだ。

 エマはこのタウンホール・ミーティングの後もテレビの人気トークショー『エレン・デジェネレス・ショー』に出演するなど、フル回転で銃規制運動「ネバー・アゲイン・MSD」を推し進めている。エマの存在はすでに全米に知れ渡り、乱射事件後に始めたツイッター @Emma4Change のフォロワーはすでに1万人を優に超えている。

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堂本かおる

ニューヨーク在住のフリーランスライター。米国およびNYのブラックカルチャー、マイノリティ文化、移民、教育、犯罪など社会事情専門。

サイト:http://www.nybct.com/

ブログ:ハーレム・ジャーナル

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