アンチ・モー娘。だった私と、アンチ・学校行事だった私。 文月悠光×牧村朝子

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激烈なアンチ・モー娘。だった牧村さん

牧村:かっぱ巻きの話しかしてなくない?(笑)

文月:牧村さんのことは、『百合のリアル』(星海社新書)の著者だってことは知っていたんですけど、その頃まだ本は読んでいなくて。

牧村:そうだったんですか。

文月:『百合のリアル』が電子化されるにあたり、増補版を作りました、という告知をライターの小池未樹さん(『百合のリアル』の企画・編集、イラストも担当。ライターとしても活躍)がされていて。この機会に読むしかないと思って電子で読み始めたら、なんていうのかな、最初は「LGBTの知識を入れるために」って気持ちだったのが、だんだん、自分の話をされているみたいな気持ちになってきて……

牧村:狙い通りだ~。

文月:心に響く箇所がいっぱいあったんです。電子版で読んだ後に紙でも手に取って。昨日、照らし合わせなら読んでいたら、結婚や同性愛に関する条例など、情報部分が電子ではさらに充実していますよね。

牧村:紙にはなかったものを電子ではかなり書き加えていますね。わー、気づいてくださった!

文月:『百合のリアル』で特に印象深かったのが「誰よりも先にカミングアウトを済ませなければならなかった相手は、他でもない自分自身でした」って一行で、ずどーんって刺さってきました。何事においても本当にそうだなって思ったんですよね。自分自身でうまく消化できていないこと、認めきれていないからこそ、誰かに対して攻撃的になったり否定的になっちゃうことってある気がしていて。

でも一時期にはそうなってしまった人も、自分の反応を通して気がついて、認めるという作業ができるんじゃないかなって。牧村さんの『ハッピーエンドに殺されない』を読んだときにも感じたんですが、牧村さんって、美しくて明朗としていて……というメディアのイメージとは違って、過去には他人と自分を比べたりしてくすぶっていた時代もあったんだな、と意外に思いました。

牧村:あったあった。私、めっちゃモーニング娘。のアンチだったの(笑)。

『百合のリアル』はジェンダー・セクシュアリティの本なんですね。レズビアンとは、ゲイとは、バイセクシュアルとは、トランスジェンダーとは、そもそも人の性とは、みたいな本なんですけど。

その前に。私は女の子が好きなんです。女として生まれたんですけど。いわゆるレズビアンですよね。でも当時は、そんな自分を受け入れてなかったから、死ぬほどモーニング娘。を叩いていたんです。「こんなの好きじゃない」「全然可愛くない」「よくこんな顔で歌えるな。人前に出れるな」みたいなことを小学校、中学校くらいのときに一生懸命やってました。ようは、本当はモーニング娘。のことをめっちゃ可愛いって思っている自分を認められなかったから、そんなことをしていたんだって思ったんですよね。

文月:なるほど。『ハッピーエンドに殺されない』に書かれているエピソードでも、優等生を装ったり、自分は幸せだとパフォーマンスしなくちゃって思い込んだりして、本当の自分が見えなくなっちゃう。その迷走っぷりに人間らしさというか、身近さを感じました。

学校行事に冷めていた文月さん

牧村:文月さんって、自分だけが落とし穴にずっといて、みんな明るいところで生きていてすごい、みたいな感じがありません? 実は文月さんは落とし穴にいないと思うのよ。

文月:うーん、ぬかるみの中にいる感じはありますね。

牧村:ぬかるみ、というのは?

文月:みんなが歩きにくいピンヒールを自分のものにして、ササッと歩いている中、私はヒールとか履けないし、そもそもちゃんとした靴も持ってなくて、ぐちゃぐちゃした場所を愚直に歩いてる。私がようやくたどり着いたときには、みんなはもっと先に行っている、みたいなイメージ。

牧村:うまく行っているみんなと、そうはなれない私、っていうタイプですよね。

文月:うーん。

牧村:みんなが出来ていることを私は出来ない?

文月:いや、なんかね。みんなの生活が見えないのかもしれません。穴とか垣根とか、人の生活が見えない場所に隠れてて、みんながどんな風に暮らしているのかが見えないんだと思います。見えない場所から、みんなに憧れている。

牧村:本の中でも「女子高生時代からそうだった」って書いているじゃないですか。みんなキラキラしていて華やかに会話しているけど、文月さんは、「うん、そうだね」っていうのにもすごく時間がかかっちゃう。自分だけがテンポが違うってことを書いていて。

文月:すごくとろい子どもだったんです。みんなが学校祭とか合唱祭で、イエーイ!ってノリで盛り上がっているのを……盛り上がっているのって感情だけじゃないですか。そこに理屈とかはないんだけど、「なんでこの人達はこれでこんなに盛り上がれるんだろう」みたいなことを頭で考えてしまって。

牧村:なんで学校祭ごときで、みたいな。

文月:そこまでは思わないですけど……まあ冷たいですね。そう考えると、もうちょっと一緒になって……

牧村:急に自己嫌悪に陥らないで(笑)。でも私も、「大縄跳びごときで」って思ってたわ。みんなどうなんだろう。大縄跳び、合唱祭、みんなでやって楽しい、いい青春だった!って思える人もいるだろうし、それはそれで素晴らしいことだと思うんですけど、おそらく多くの人は結構無理して一緒に盛り上がっているんじゃないかな。

文月:学校を出てから、そのことになんとなく気づきましたね。学生のときは、なんでみんなうまく溶け込んでいるんだろうと解せなくて。私みんなが盛り上がっているときはすごい冷めているんですけど、みんなが盛り下がっているときに盛り上がっちゃうんですよ。

牧村:あはは(笑)。

文月:たとえば先生が怒ったりして教室がしーんとなっていると笑いたくなっちゃう。性格が悪いんだと思うんですけど。

牧村:笑うことで空気を変えたいのか、しーんとなっているのが面白いのか。

文月:先生が怒っているのが面白くなっちゃって。そういう嫌な子どもでしたね。空気を読むのが苦手だったんだと思います。

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