アンチ・モー娘。だった私と、アンチ・学校行事だった私。 文月悠光×牧村朝子

【この記事のキーワード】

人から査定されることに怯え続けてきた

牧村:そんな学校生活を過ごし、そしておとなになり……って私、勝手にまとめてるけど(笑)。どうして人生を掘り下げようとしているのかっていうと、臆病な詩人がどうやって形作られたんだろうなって、すごく興味があるんですよね。

文月:連載しながら考えてはいたんですけど、ひとつはやっぱりちょっとデビューが早すぎたっていうのがあって。

牧村:デビューは何歳?

文月:『現代詩手帖』の新人賞をもらったのが16歳、高校2年生のときにデビューしたんですね。ただ当時は札幌に住んでいて、会える範囲に詩人ってほとんどいないから、デビューしたことを実感しないまま過ごしていて。

牧村:地元の新聞にも出ちゃったりね。

文月:せいぜいそのぐらいですね。

 その当時くらいから、ネットで叩かれたり、大人たちから「こういうことをやったらダメだよ」「こういうことをもっとしなさい」とかいろいろ指南されるようになってしまって。

牧村:「はーい、ありがとうございまーす」みたいな。

文月:従ったほうがいいのかな、はみ出しちゃダメなのかなって勝手に自分の中でルールを設定しちゃったんですよ。そのまま、人から査定されることに怯えてきた気がします。

牧村:そこだそこだ。

文月:『洗礼ダイアリー』(ポプラ社)というエッセイの帯文に「中原中也賞を18歳で受賞した平成生まれの詩人が、生きづらさを言葉で解き放つ。」って書いていて。なんでこの帯文にしたんだろうって今思うんですけど。

牧村:おー(笑)。

文月:編集者さんと、何を「言葉で解き放つ」ことにしようか? って話し合ったときに、自分が抱えているモヤモヤを「生きづらさ」としかうまく形容できない気がして「生きづらさ」と設定したんですね。でもそのせいで「ここに書かれているのはそれほどの生きづらさではない」みたいなレビューが結構付いたんです。

 じゃあ私の生きづらさって具体的になんだろうと考えたときに、学生であると同時に、モノを書き続ける責任を背負ってしまったことなのかなって。

牧村:「学生詩人」という他者から期待される像が16歳のときにドバーン!って出ちゃって、それに一生懸命あわせなきゃいけない、ってずっと戦って来たってことかな?

文月:そうですね……。戦ってた時代と、そういうのアホらしくなっちゃって一回自分のやってみたいことやろうって、アイドルオーディションとか出て(講談社主催の女性アイドルオーディション「ミスiD2014」にエントリー。柚木麻子賞を受賞している)。

牧村:イェーイ。

文月:(笑)。それで、ぼこぼこになって。

牧村:ぼこぼこになってないだろ~? 受賞してるだろう?

文月:いやいやいや、でも。

牧村:精神的にはぼこぼこだった?

文月:そうですね。エッセイにも書いたんですけど、精神的にボコボコになったところと満たされた部分と両方ありました。大人たちの期待に応えようとしすぎてしまった。人から期待されるのは嬉しいことでもあるけど、同時にやっぱり苦しい。どう応えていこうかなってなった途端に、自分の意思よりも期待を優先しちゃうじゃないですか。

牧村:やー、同意求めないで。しないー!

文月:そもそも自分はどうしたかったんだっけ? って状態に陥りがちなんです。

牧村:「学生詩人」って言われた。「学生詩人」でいなくちゃ。いなくちゃ、いなくちゃ……あれ、何したかったんだっけ?

文月:そうそう。そもそも私のしたいことは、とにかく書き続けるってことだけだったのに。

 でも年をとったら気が楽になりました。20歳までに小説を発表しましょうとか言われることが多かったんですけど、いまこの年になって、30歳までに何々しましょうねって人からいわれなくなって、すごく楽になりました。

牧村:周りが下にみなくなったんだね。年齢のことで。「この人を指導してあげなきゃ」みたいな。最初はね、16歳だもんね。

文月:そうですね。最初はそういう声が強かったし、実際に助けられてもいた。今は外に出て自由になったとも言えるし、より厳しい世界になったとも言えるし。

牧村:誰も手を引いてくれないから、自分の行きたいところには行けるようになったけど、歩くのは自分、って状態。

文月:そういう感じです。

牧村:めっちゃきれいにまとめた感があるよね、私(笑)。受賞したい(笑)。

(構成・カネコアキラ)

後編:採点ばかりされる世界で「臆病」にならないための考え方 文月悠光×牧村朝子

イベント告知

岸政彦(社会学者)×文月悠光(詩人)対談講座「生き延びるための言葉教室 第2講」

47日(土)16時〜 @NHK文化センター青山教室 

東京都港区南青山1-1-1 新青山ビル西館4 

お申込みはこちら http://www.nhk-cul.co.jp/programs/program_1144239.html

1 2 3

「アンチ・モー娘。だった私と、アンチ・学校行事だった私。 文月悠光×牧村朝子」のページです。などの最新ニュースは現代を思案するWezzy(ウェジー)で。