社会

稲村亜美に向かっていった1000人の中学生を「若い男なら普通」と肯定しないでほしい

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稲村亜美 Instagramより

稲村亜美 Instagramより

 310日に行われた日本リトルシニア中学硬式野球協会関東連盟の開会式で、始球式を務めたグラビアアイドルの稲村亜美(22)が、およそ1000人あまりの男子中学生に取り囲まれた事件は、大きく報道された。現場を撮影した動画がwebで拡散され、議論されたからだ。スポーツ紙が「取り囲んだ」「中学生は大興奮」等と書いても決して伝わらない異様さが、一部始終を撮影した動画では一目瞭然だった。取り囲んだというよりも集団で襲い掛かっているように見える映像で、稲村を含め中心付近の球児はまったくその姿が外から見えなくなるほど押しつぶされていた。

 ネットでもテレビ番組でもこの事件の問題点はどこかと議論がかわされる中で、この異常な球児たちの行動を「危険で悪いことなのは間違いないが、男なのだから仕方ないことだ」と擁護する向きがある。わかりやすいのは、タレントのクリス松村が313日放送の『5時に夢中!』(TOKYO MX)で「動物の本能だから普通のこと」と評したことだ。

 クリス松村は、「中学生の前にあんな可愛い子を出したら、動物の本能だから普通のことだと思うの」「若い男の本能っていうものを忘れたのよ、周りの大人たちが。そりゃあワーって行くでしょ、可愛い女性がいたら。だから中学生に猛省を、っていうんじゃなくて、自分たち(=連盟や個々の学校の指導者など)が猛省よ」と感想を述べた。また、「稲村さんは怖かったというより、うれしかった面もあるかもしれない」ともコメントした。

 クリス松村は可愛い女性がいれば「本能」で襲い掛かってしまうのが「普通」の男性だとしているが、果たしてそうなのだろうか。女性に欲望を向けることが正しい男性のあり方(同時に、男性に欲望を向けられることが正しい女性のあり方)だという社会通念、つまりクリス松村が提示した価値観自体が、性暴力を誘発しているとは言えないだろうか?

 女性の多くもまたその価値観を内面化しているため、押し倒されて「うれしい」「自分には価値がある」と感じる女性も確かにいることだろう。けれど、NOと感じていても、その価値観を共有しているがためにNOと言えなくなってしまうこともある。昨年からヒートアップしている「#metoo」しかり、様々な性暴力の問題には、相手がその行為に同意していることを確認せずにことに及ぶため起こっているケースが少なくない。人間の動物としての本能というよりも、たやすく性暴力に通じる価値観を「仕方ない」と許容する社会の側に変化の余地があるのではないだろうか。

ヒポポ照子

東京で働くお母さんのひとり。大きなカバを見るのが好きです。

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