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※この記事はメタモル出版ウェブサイトに掲載されていた成田祟信さんの連載「管理栄養士パパのみんなの食と健康の話」を再掲載したものです
先日、平成27年度の国民健康・栄養調査の結果が公表され、若い女性はカルシウムや鉄が不足していることがニュースで流れました。調査結果を見ると男女を問わず若い世代ほど野菜の摂取量が少ない傾向もあり、ビタミンやミネラルの不足も心配されています。
できればしっかり朝食を食べ、野菜たっぷりの栄養バランスのとれた食事を心がけていただくのがベストです。でも、現状の日本の労働事情を考えると、仕事が忙しく、通勤時間も長く、残業で帰りも遅くなりがちですから、そう簡単にはいきません。サプリメントなどの健康食品が流行しているのには、そんな背景があるのではないでしょうか。
そこで今月と来月の2回に分けて、サプリメントなどの健康食品の使い方について考えていこうと思います。今月は、まず基本的な知識についてお話しましょう。
全てのサプリメントは食品です
サプリメントや健康食品という言葉は広く知られていますが、日本の食品分類ではきちんと定義されていません。なんとなく錠剤やカプセルのような形態のものを「サプリメント」、それ以外の健康目的に販売されている食品を「健康食品」と呼ぶ場合が多いようです。
健康に着目して販売されている食品には、国の承認(特定保健用食品)や基準(機能性食品、栄養機能食品など)を満たしているものもありますが、これらも一般には健康食品と呼ばれます。だから、それ以外のものは但し書きをつけて「いわゆる健康食品」と呼ぶ場合もあるようです。いろいろな種類があって紛らわしいのですが、特定保険用食品も機能性食品も栄養機能食品も全て食品ですから、薬のような治療効果が期待できるものではありません。
では、サプリメントや健康食品(以下サプリメント)の目的はなんでしょう? 不足した栄養を補う、減量、美容目的、健康増進などなど色々ありそうですね。
でも、先に述べたようにサプリメントはあくまで食品ですから、不足している栄養素の補給はできますが、とるだけでやせたり、美しくなったり、病気がなおったりする効果があるはずはないのです。もしも本当にそんな効果があるとしたら、医薬品として登録されている薬物が入っていたり、安全に問題のある成分が含まれていたりするかもしれません。
ダイエット効果をうたった健康食品では、代謝を上げる作用のある甲状腺ホルモンや中枢神経を刺激して食欲を抑制するフェンフルラミンという成分が都道府県の調査で検出されたこともあり、実際に健康被害も起こっています。
このように違法な成分が含まれているという極端な例は別にしても、サプリメントは食品の扱いなので、品質管理などを含め医薬品ほどの厳格な基準や品質管理が求められておらず、医薬品に分類される成分が多量に含まれていたということもあるので要注意です。
こんな売り文句にはご用心!!
あくまでサプリメントは食品です。それなのに多くの人がサプリメントをとるだけで健康になったり、病気が治ったりするかのように思ってしまうのはなぜでしょうか? それはサプリメントをとるだけで健康になれそうな印象を与える広告がたくさんあるからです。以下のような売り文句を見かけたら、眉にツバして考えてみるとよいでしょう。
「驚きの効果」「飲むだけで誰でも実感」
世の中には誰にでも効果のある万能なものなどありません。また、過度な効果を期待させる表現は、まず疑ったほうがいいでしょう。
「血糖値が高い人に」「医師もサジを投げた症状が改善」
サプリメントはあくまでも食品です。病気を治す効果を期待してはいけません。病院に行くのが嫌だからといってサプリメントを摂って治そうと思っているうちに手遅れになることもありますから、体調に不安のある場合は必ず医療機関を受診しましょう。
「天然だから安心」「医薬品ではないので副作用の心配なし」
<天然のものは安全で、合成のものは危険である>と思われがちですが、天然の毒はたくさんありますし、天然だからこそ何が入っているかがわからないという危険性があります。実際、市販のハーブから有害な成分が検出されたことも。天然や自然というよいイメージの言葉には要注意です。
「加齢とともに失われる○○を補いましょう」
健康や美容によいとされるサプリメントでありがちな宣伝文句です。確かに年をとるにつれて減っていく成分はありますが、それは生理的な現象なので多量にとったからといって身体に蓄えられるわけではありません。高齢者は体内の水分量が減りますが、たくさん水を飲んでも増えないことを考えればおかしな話だとわかると思います。不必要なものを買わせるための常套手段です。
「これで元気になりました」「飲み始めてから痛みがなくなりました」
CMなどでは有名人の体験談をよく見かけます。もしかしたらその人だけは本当によくなった可能性もありますが、その効果が誰にも現れるわけではありませんし、効果はサプリメントのおかげではなく、生活習慣の変化や別に飲んでいた薬のおかげかも知れません。<体験談ほどあてにならないものはない>くらいの気持ちでいるほうがいいでしょう。
「専門家も推奨」「学会で発表」
専門家の肩書きを持った人が大絶賛しているからといって信じないようにしましょう。きちんとした専門家は、そんな不誠実な商売に加担しないはずです。また、一般の人にはわかりにくいですが、誤った内容であったり、確実な結果がでていないものだったりしても、学会で「発表」することはできます。「学会」という文字があると権威がありそうでなんとなく正しいように感じてしまいますが、なんら効果を保証するものではありません。
以上の点に気をつけていれば、健康被害や余計な出費を避けることができるのではないかと思います。
サプリメントはあくまで食品として、栄養補助目的で、気休め程度に利用するならあまり問題はないでしょう。ただし、子どもにサプリメントは全く必要ないと思います。幼少期は食習慣を形成する大事な時期ですから、必要な栄養は毎食きちんと食べてとることを大切にしてくださいね。
次回は、サプリメントが本当に必要なケースなど、個別の事例について解説したいと思います。

成田祟信『新装版 管理栄養士パパの親子の食育BOOK』(内外出版社)