育児の不安をいたずらに煽る膨大な情報、どう見分ければいい? 宋美玄×森戸やすみクロストーク【4月1日開催】

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 小児科専門医の私・森戸やすみと産婦人科専門医の宋美玄先生が、他の同業者とよく話しているのは、「どうしたら、もっと多くのお母さんやお父さんたちに正しい情報を伝えられるのか」ということです。

 日々診療していると、たくさんのお父さんお母さん、そしてお子さんに出会います。そして、いかに多くの人がクチコミやインターネット、雑誌や書籍などで知ったあやしい情報に振りまわされ、悩まされているかがわかります。

 たとえば、とてもポピュラーな「授乳中によくない食事をすると、母乳の質が落ちる」という説はウソで、本当は食事が直接的に母乳として出てくるわけではありませんし、母乳の恒常性は栄養状態が極端に変わらない限り保たれています。「授乳中の薬は一切ダメ」というのもウソで、本当は飲める薬はたくさんあります。妊娠中も同様です。

 これ以外にも、食事の分野なら「添加物は毒」とか、教育の分野なら「早期教育が重要」とか、とにかく親を脅したり無駄に疲れさせたりする間違った情報が、まことしやかに広まってしまっています。不安をあおることで、何か高額な意味のないサプリメントや教材などを売りつける商売になるからですね。またインターネットのサイトなら、PVを稼げるからかもしれません。

 子育てって、すごく楽しく素晴らしい体験ですが、一方でとても疲れるものです。間違った妊娠・出産・子育てに関する情報は、特にただでさえ子どものために一生懸命な親を無駄に疲れさせる点でも問題です。だから『小児科医ママの「育児の不安」解決BOOK』のまえがきでは、このように書きました。

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はじめに

 小児科医をしている私は、診療のときに患者さんのお母さんやお父さんからいろいろな質問をされます。

 例えば「眠っている赤ちゃんを起こして、お風呂に入れなくちゃいけないことがあります。それはしょうがないのでしょうか?」「赤ちゃんが夕方になると泣きやみません。おっぱいでもないし、おむつも汚れていないし、抱っこして歩いていたら大丈夫なのですが、おかげで何もできません。どうしたらいいでしょう?」など。

 なんときめ細かな心遣いかと思います。お子さんが少しでも嫌な気分にならないように、ふだんから子どもの目線で考えてあげているのですね。

 昔は大多数の日本人が生活に追われていました。小さな子どもがいても、貴重な労働力でもあるお母さんは一日中働いていたでしょう。たぶん毎日はお風呂に入れてあげられなかったし、泣いたらすぐに飛んで行って抱っこしてあげることもできなかったでしょう。生活に精一杯という、大人の事情が最優先だったのではないかと思います。

 ところが、現在では生活が豊かになり、家電も普及したために、子どもに手をかける時間ができて、どこまでやれば充分なのか、わからなくなるのかもしれません。

 よく「子育てに正解はない」と言います。育児情報やほかの人の体験談をいくら集めても、自分たちにあてはまるとは限りません。お母さんだけが何年も育児をして、食べるもの、着るものはすべて手作り……なんて難しいですよね。そうしているお母さんは、世界的に見てもほとんどいないでしょう。

 豊かな日本に暮らしているから、がんばれば可能そうに思えるからといって、そうしなくてはいけないということはありません。日本のまじめなお母さんたちは、もう充分お子さんのためにがんばっています。むしろもっと大らかになったほうがいいのではないかと、私は考えています。

 かく言う私もふたりの母親ですが、初めての子育てのときには、本当に力が入っていました。何か月も寝不足と体中あちこちの痛みでつらかったです。小児科医を何年かやってからの育児だったのに、改めてお母さんたちの大変さを痛感。「多くの女性たちが何気ない顔をして、これほどまでに大変な育児を乗り越えてきたんだ」と思うと、街を行きかうおばさま方にかけ寄って手を取り、「私は大変、子育てをみくびっていました。あなたを尊敬します!」と頭を下げたい衝動にかられたのです(実行はしていません)。

 小児科医の当直は過酷で有名で、だからこそ子育てを甘く見ていました。ただ仕事ならば、どんなにきつくても翌朝には誰かが代わってくれます。ところが、お母さんは自分だけ。365日、何年にもわたって誰も代わってくれないんだと気がついて愕然としたものです。以降、私は子どもを持つ母という視点でも世界が見えるようになりました。

 そして思ったのです。特に初めての子育てでは、完璧な親を目指してしまいがちですが、無駄に力が入っていると疲れます。あんまり疲れていたら、赤ちゃんと楽しく遊べません。赤ちゃんの視点に立てば、完璧な育児や家事をすることよりも、大切なことがあります。それは大好きなお母さんやお父さんに「大好きだよ」と言われたり、一緒に遊んだりすること。これ以上の幸せがあるでしょうか。それほど、子どもって不思議なくらい親が大好きなのです。

 だから、経験的にだけでなく、医学的にも根拠がある大事なことだけを押さえて、あとはもっと楽しく育児をしましょう、というのがこの本の目的です。

 ご一緒に、日本の育児をもっと楽しくしませんか?

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 しかも、間違った情報は、何よりも大切な子どもの成長や発達を阻害してしまう点が問題です。たとえば、「離乳食を遅らせないとアレルギーになりやすい」などとよく言われるのですが、これはウソ。生後5~6か月を過ぎた子どもには栄養の面で食事が必要になってきます。そして、適切な時期から段階を踏んだり、1口ずつから注意しながら与えたりすることは必要ですが、さまざまな食べ物を与えることで、消化管を通しての耐性誘導効果が得られ、アレルギー発症を抑制できる可能性があるのです。つまり、離乳食を遅らせることは、子どもにとってデメリットしかありません。こういうウソがそこらじゅうにあります。

 だから、3月15日に新装版を発売した「専門医ママ・パパの本」では、こういったウソをひとつひとつ否定しながら、正しい情報が伝わるように書いています。

 4月1日には、宋美玄先生と三省堂書店池袋本店さんで、復刊を記念したトークショーを行うことになりました。テーマは「妊娠・出産・子育て情報の選び方」。

 妊娠中や乳幼児のみならず、長くクチコミで広まっているウソの実例にふれながら、子育てに関する情報をどうやって選んでいけばいいのか、について話したいと思います。ご両親だけでなく、子どもに接することの多い看護師、助産師、保育士、保健師、栄養士などの方、子育て支援にかかわっている方、そして情報を伝える側の方も大歓迎です。宋先生とふたりでトークショーをするという機会はなかなかありませんので、ぜひお越しいただけたら嬉しいです。実際に読者のみなさんにお会いできるのを、とても楽しみにしています。

『専門家ママ・パパの本』復刊記念トークショー「妊娠・出産・子育て情報の選び方」

※もちろんお子様連れ歓迎でベビーカーも大丈夫です。ただ、申し訳ありませんが、お子様分の座席の確保はできませんので、お膝に抱っこでお願いいたします。

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