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突如ネットを騒がせた“電波子17号駆け落ち”騒動が、ネットを越えテレビでも報道され始めた。事の発端は2月末。Twitterである若い女性アカウントが、40代の母親が21歳の男子大学生と失踪、150万円を持ち逃げしており探してほしいと呼びかけた。「なるべく拡散してもらえらると助かります。見つけた方、情報ある人教えてもらえると助かります。警察には通報してあるので、見つけ次第警察の人に話してもらえると助かります。拡散よろしくお願いします」とのことで、その母親はかつて大手芸能事務所スターダストプロモーションに所属して『進め!電波少年』(日本テレビ系)に出ていた元アイドル、電波子17号だとも。
その時点ではまだ騒ぎは小さかったが、3月11日に今度は息子を名乗る大学生のアカウントから「母が置いていったスマホを確認して発覚しました」と再びTwitter投稿。今度は勢いよく拡散し始めた。書き込みによれば、彼の母親は「若い大学生を駆け落ち」し、しかも「兄弟の奨学金など計200万円ほどを持ち出した」という。駆け落ちからは2週間が経過しており、前述の女性アカウント(この“息子”の妹だという)からも「実際は200万くらいあります、4人分の奨学金のお金、授業料、生活費、全てです。とても困っています」「いなくなってから17日が経つ、あと何回泣けばママは帰ってくるの?もっと写真も撮りたかった、もっといっぱい話したいことあった、こんなことになるならもっと1つ1つの時間を大切にしていた。後悔ばかり。寂しいよ」と、悲痛な叫びが書き込まれた。
騒動が大きくなったのはやはり、この“母”が現在41歳の元アイドルだという情報や、本名・顔写真など個人情報が家族の手で大量に投下され拡散されたことによる。スポーツ新聞もこの騒動を取り上げ始め、きょうだいには、発端となるツイートを発信した大学生の三男、妹の長女のほかに、成人している大学生の長男、次男がいること、また父親であり電波子17号の夫である男性は元歯科医でアマチュアボクシングチャンピオンであること、糖尿病を患い約10年前に失明し、介護が必要な状態にあることも報じられた。
母を探す家族らは、当初から、母と一緒に駆け落ちした男子大学生の名前を公表しており、その駆け落ち相手が書いたと思われる直筆の手紙の写真も拡散されている。駆け落ち相手は関東の私立大学に通う学生であるとされており、同じサークルだという人物もツイッターで「数日前までは半信半疑だったけど あの手紙が出てきた以上、お前は黒と言わざるを得ないだろう お前の字を見る機会はそこそこあったが、あの手紙の時はお前の字だと思う」など書き込み、怒りをあらわにした。
騒動はとどまるところを知らず拡大し、3月21日には『モーニングショー』、翌日には『ビビット』や『バイキング』(フジテレビ系)でも特集。『ビビット』ではVTR出演した夫が経緯を説明した。それによると「去年の10月ぐらいにお茶して欲しい人がいるって言われて、3人で会った」と、妻から駆け落ち相手の大学生を紹介されたという。その際、大学生が妻のことを「きれいですね」などと言っていたため、メールのやり取りなど「僕のいないところでやっちゃいけないよ」と注意したのだという。だが、先月の23日に、隠れるように大学生とスマホでLINEのやり取りをしていたため、翌日「朝方5時ごろに僕も起きて、妻も起きて。ちょっとお前何やっているんだって話しをして。全部分かっているんだぞって話しをして。ババって支度をしてパッと出て行っちゃった」と家を出ていった顛末を語った。
ともにVTR出演していた長女によれば母親はパジャマのまま出て行ってしまったのだという。夫と長女はそれぞれ「いつでも戻っておいでって感じ」「お母さんのこと大好きなんで、こういうことがあっても嫌いじゃないんで。会いに来てくれたらうれしい」と呼びかけていた。三男も18日にはツイッターで「人間誰しも間違いがあるから、お父さんが話し合いたいと言っています。実際に会って話すのが厳しいなら公衆電話でいいから連絡してほしいとのこと。連絡待ってます」と書いたメモのスキャンをアップ。また、善意の第三者から寄せられた直近の“練炭自殺報道”についても「父が奥多摩警察に連絡したところ自分の母ではなかったので一安心しましたが、最悪な結果になりたくないので連絡してほしいです。話せば済むから」と、警察に確認したことを明かしていた。
この騒動、ネットでは当初、奨学金で大学に通う子供と、介護が必要な夫を捨て、自分より20歳ほど年の若い男性と駆け落ち、しかも子供たちの奨学金を持ち出したということが広まり、妻である“電波子17号”への批判が巻き起こったが、一方で家族が駆け落ち相手の氏名なども公表し、さらにテレビ出演を果たしたことも影響してか「家族も何がしたいんだ、母親追い込んで自殺させる気か」「「こんなのテレビでやることなの?」と非難する意見もチラホラで始めた。確かに、事件に巻き込まれた可能性があるならともかく、自分の意思で出ていった母親を全国的に晒し上げることになっており、家族から逃げている母親は生きた心地がしないだろう。
善意の第三者によりツイートが拡散されたことで、騒動は拡大した。しかし、人探しの訴えを鵜呑みにして善意で拡散することは危険な行為であることも肝に命じて欲しい。過去に発生した『逗子ストーカー殺人事件』では、被害女性にストーキングしていた男性が「昔、お世話になった方を探しています」などとYahoo!知恵袋に大量投稿し、被害女性の自宅住所を突き止めたうえで殺害に及んでいる。この事件は我々に“善意の第三者”による安易な情報提供が殺人という重大な結果を生むことがあるということを知らしめた。
今回の件はそもそも、本当に駆け落ちをしたのか、また本当にお金を持ち出したのか、そのお金は本当に奨学金なのか、駆け落ち相手の素性はその内容で確かなのか、他に事情がある可能性はないのか、『バイキング』に電話をかけてきた電波子17号を名乗る女性は本当に本人なのか。いくつも確認すべき事項があり、一方の話だけでは確認しづらい内容や、現時点では真実かどうかはっきりしない。情報の拡散に協力する前に、こうしたことをいま一度考えてみる必要があるのではないか。
(鼻咲ゆうみ)