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義務教育は「人が人であるがゆえに持つ、学びの権利」前文部科学省事務次官・前川喜平さん、セーラー服の歌人・鳥居さんトークイベントにて気づかされたこと

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Thinkstock/Photo by recep-bg

 「夜間中学」という学びの場をご存知だろうか。夜間中学は、公立中学校の校舎で夜の時間帯に授業を行う学級で、中学校の9教科を学ぶ。昼間の中学校同様、授業料無償で週5日、教員免許を持つ公立中学の教員が授業にあたり、学校によっては給食もある。主に学齢期の子が通う「フリースクール」とは違い、夜間中学には15歳以上の学齢超過者が通う。現在、8都府県2531校設置されているが、文部科学省は各都道府県に少なくとも1校の夜間中学設置を促進している。ただ、夜間中学を利用するのは、何らかの事情で義務教育を修了できなかった人、不登校などによる「形式卒業者」、そして日本語を学びたい外国人と、ニーズが混在するという現状がある。

 318日に行われたトークイベント『Education9〜春Spring』(市民グループ「feel9」主催)では、前文部科学省事務次官の前川喜平さんと、「セーラー服の歌人」として知られる鳥居さんが登壇し、夜間中学や日本の義務教育の課題について語り合った。私は一観客として聴講したが、興味深い内容だった。

 前川さんは現在、自主夜間中学(民間による夜間中学)でボランティア講師を務める。他方、「形式卒業者」である鳥居さんは夜間中学に通う現役中学生。学齢期に教育を受ける権利を奪われた鳥居さんは、小中学校をほとんど不登校のまま形式卒業となり、再度学びたいと夜間中学への入学を望んだが、ひとつの壁にぶち当たった。形式卒業者の夜間中学入学は認められていなかったのである。鳥居さんは義務教育の学び直しを訴える活動を水面下で始めた。公の場でセーラー服を着用するようになったのも、その一環であった。セーラー服を着ていると、「何で?」とその理由に興味を持ってもらえるのだ。

 20157月、文科省は形式卒業者の夜間中学入学を認めたのだが、その時、文科省で事務次官を務めていたのが前川さんだった。

 晴れて夜間中学に入学した鳥居さんだが、今度は別の壁にぶち当たった。平成29年度夜間中学等に関する実態調査によれば、夜間中学に通う全生徒1,687人のうち80.4%にあたる1,356人が「日本国籍を有しない者」。日本人の生徒(義務教育未修了者や形式卒業者)よりも、外国人の生徒が圧倒的に多いのである。また、夜間中学入学理由を見てみると、日本国籍を有しない者(1,356人)のうち、33.3%(451人)が「日本語が話せるようになるため」、10.5%(143人)が「読み書きができるようになるため」という結果も出ている。とはいえ、28年度卒業生の状況を見ると、日本人と外国人合わせて45.1%が高校進学となっており、私はこの数字をどう受け止めていいのかわからなかった。

 鳥居さんの通うことになった夜間中学は生徒のほとんどを外国人が占め、彼らのニーズに沿う形で日本語学校化しているのだという。学力は小3程度であるものの、文字の読み書きは新聞で覚えた鳥居さんは、夜間中学の一番レベルが高いクラスに入った。が、その一番レベルが高いクラスで習うのは、「寿司」や「柔道」といった言葉の発音。いずれ高校・大学への進学を目指したい鳥居さんだが、現在の夜間中学の授業では上の学校への進学は難しいことを悟った。仕事をしながら通う人も少なくないが、この授業内容では日本人の生徒は挫折してしまう。何のために睡眠時間を削って来ているのか、時間がもったいなくなる。形式卒業者が夜間中学に入学できるようになったものの、休学・退学する人が続出しているそうで、実は鳥居さん自身も現在、不登校だという(ちなみに夜間中学の給食はパンと牛乳だけだったそうで、近年は給食を廃止された学校もあるとのこと)。

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中崎亜衣

1987年生まれの未婚シングルマザー。お金はないけどしがらみもないのをいいことに、自由にゆる~く娘と暮らしている。90年代りぼん、邦画、小説、古着、カフェが好き。

@pinkmooncandy

バナナ&ストロベリー

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義務教育を問いなおす (ちくま新書 (543))