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高齢出産&ミルク育児の母親が「アンチワクチン」を推すママサークルにのめり込んだ理由

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Thinkstock/Photo by Choreograph

 おかしな思想にハマった家族の悩みを語ってもらう「身内がトンデモになりまして」シリーズ。その姉妹編として、「わたしがトンデモだったころ」も新たに始めさせていただきます。こちらでは、〈自分自身がトンデモ沼にハマった体験〉を振り返り、当時の出来事および心境を語ってもらおうというもの。何がきっかけとなりトンデモに足をからめとられるのか、どんな背景があるのかを考察しつつ、トンデモの周りに生まれる現象を追っていきましょう。

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 シリーズ第1回目は〈アンチワクチン〉にハマった、Hさんの体験談。アンチワクチンとは、ワクチンの安全性や有効性、必要性を否定する考え方。荒唐無稽なお説を無責任に発信する医師として有名な近藤誠氏も昨年11月、アンチワクチン本『ワクチン副作用の恐怖』(文藝春秋)を発売し、各方面から「書いてある内容が間違いだらけ」とバッシングされたのは記憶に新しいところです。

 Hさんは地方在住、現在2人の子どもを育てるワーキングマザー。はじめて「ワクチンは危険」という情報に触れたのは、妊娠前に何気なく夫と雑談していた時のことだとか。

Hさん(以下、H)「夫が大学の先輩からこんな話を聞いたと、私に伝えてきたんです。『ワクチンを打つと自閉症になる』『効果は少ないけど、費用は高い』と。今ではもちろん、それらはデマだと理解していますが、その時はとにかく自閉症になるという言葉が恐ろしかったです。近所に自閉症の兄弟がいるのですが、コミュニケーションをとるのが難しそうな状態で、子どももお母さんもいつも大変そうにしている姿を目にしていたんです。だから、ああなったのはワクチンのせいなの!? と怯えてしまいました」

 まずは衝撃的な話から、漠然と「ワクチンは怖い」という印象を植え付けられてしまったHさん。そこからさらに、出産育児の過程で帝王切開やミルク育児を非難されたことが追い打ちをかけます。「普通分娩や母乳育児をしてあげられなかった、せめてもの罪滅ぼしに」と、〈自然育児サークル〉へ足を踏み入れることになります。そこが、アンチワクチンの巣窟だったのです。

「第1子の分娩が予定外の帝王切開に。すると麻酔の後遺症で脳圧が下がり、ひどい頭痛で入院中はほぼ寝たきりとなりました。その間授乳ができず、子どもは新生児室で粉ミルクを飲んでいたので、退院後は母乳を受け付けてくれなかったんです。母乳を嫌がって泣く子どもが可哀相だったこともあり、粉ミルクでいくことに決めました。するとミルク育児が気に入らない方、祖父母、両親が『見掛け倒しのおっぱい』『ぼろくそおっぱい』『無駄なおっぱい』と非難してくるんです。これが産後うつのきっかけになりました」

愛情の形が「アンチワクチン」

H「そんなタイミングで知り合ったのが、市の助成金も下りているという自然育児サークル。そのサークルに入れば、子どもにあげられなかった母乳以上に愛情を注いであげる方法を学べると言われ、入会しました」

 Hさんが参加していたという自然育児サークルのHPを見てみると、入会金や会費はごく良心的な範疇。公民館で活動しているという地味さも、安心感が漂います。また、公的な助成金が下りているとの話なので、そこから〈正しい情報を発信している〉と信頼する人も多いのではないでしょうか。

 自然育児サークルの活動は、ママたちに交流の場を提供することに加え、さまざまな分野から講師を招き、育児に関する勉強会も頻繁に開催。Hさんから勉強会の内容を聞くと、インナーチャイルドに抱っこ法、むきむき体操、母乳おっぱいケア、反ステロイド、胎内記憶映画の上映会、食材で作る湿布etc……怪しげなものがメガ盛りといった印象。それぞれの物件にまつわるエピソードもたくさん伺いましたが、ひとまず話は〈アンチワクチン〉をクローズアップしていきましょう。

そのサークルでは、薬やワクチンは『昔は必要なかったもの。ワクチンには水銀や毒がいっぱい』と語られ、ゆえに『必要ない』と皆が口を揃えて言うんです。そして、おたふくや水疱瘡にかかった子どもが出れば、〈自然に感染〉して免疫をゲットしようという、〈感染パーティ〉の案内が届きます。ワクチンだけでなくステロイドも否定され、アトピーを始めとする湿疹は体内の毒素を排出しているので、止めてはダメという考え。アトピーの子どもは皆、ママの毒を持って生まれた子。ママがきちんと生活していないからと、大攻めされます」

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山田ノジル

自然派、エコ、オーガニック、ホリスティック、○○セラピー、お話会。だいたいそんな感じのキーワード周辺に漂う、科学的根拠のないトンデモ健康法をウォッチング中。当サイトmessyの連載「スピリチュアル百鬼夜行」を元にした書籍を、来春発行予定。

twitter:@YamadaNojiru

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