
『週刊女性 2018年 4/10 号』(主婦と生活社)
昨年2月に近畿財務局が学校法人森友学園に国有地を安値で売却していたことが発覚してから1年以上の年月が経った。今月には財務省が本件に関する公文書を改ざんしていたことが発覚し、事態は急展開を見せている。
注目されている人物のひとりが佐川宣寿元国税庁長官だ。
佐川元国税庁長官は、昨年から森友学園問題に関する政府参考人として答弁を行い、現在は日々その一挙手一投足が報じられている。公文書改ざんの発覚後、3月9日に「国会に混乱をもたらしたこと」「行政文書の管理状況についての指摘」「改ざん疑惑のある公文書の担当局長であったこと」を理由に辞任。その後、3月27日には国会で、証人喚問も受けている。
当時、佐川氏がどのような対応をとっていたのか、証人喚問で55回も証言を拒否したのはなぜか、国税庁長官としての責を問われているが佐川氏に改ざんを指示した人間がいるのではないかなど、森友学園問題について佐川氏は重要なキーパーソンのひとりであることに変わりはない。佐川氏の過去の言動や記録を掘り下げていくことは、この問題の真実を追及する上で必要不可欠であることは間違いないだろう。
だが、それはあくまで森友学園問題に関する佐川氏の言動に限るものだ。
今月27日に発売された『週刊女性』4月10日号(主婦と生活社)で、佐川氏についてこんな記事が掲載されていた(森友文書改ざん問題「佐川くん」の同級生が語る恐怖の “未遂事件”)。
佐川氏の高校時代の同級生A子さん、B子さんと、大学の同級生が、当時の佐川氏についての証言が書かれている該当記事では「運動音痴すぎて“佐川君になら女子でも勝てそう”と言われた」「恋愛対象としてみる女子生徒は校内にいなかったと思いますよ」という証言や、「(結婚する気があるのかと問われ、人並みにあると答えた佐川氏に対し周囲の生徒が)『えーっ! 佐川君、結婚願望あるの~』」と騒いだことなどが書かれている。
さらに佐川氏本人も知らない話として、高校2年生の時に、チョコレートを新聞紙でくるんで渡したら佐川氏がどんな反応をするのかからかおうという計画があった(未遂に終わった)ことまでが明かされていた。記事の中では、他にも高校・大学時代の佐川氏のエピソードが紹介されている。
同級生とされるA子さんB子さんが話している内容は、かつて佐川氏が「男らしくない、モテない男性」としてからかわれていた性差別的なエピソードであって、面白おかしく紹介できるようなものではない。
申し訳程度に、大学生時代、そして卒業後の佐川氏の人柄を紹介して、「真実を正直に話してほしいと願っている」「きちんと説明し、佐川さんを含め責任をとるべき」という同級生の声を紹介しているが、佐川氏の人柄・エピソードは森友学園問題と一切関係のない話だ。記事は最後に「いずれにせよ、佐川氏はバレンタインデー未遂事件とは比べ物にならないほど窮地に追い込まれている」と、明らかに森友学園問題に関心はなく、かつて佐川氏が同級生からからかわれていたことを茶化すことを目的とした文章で締められていた。
森友学園問題は、安倍晋三首相や妻の安倍昭恵氏の土地値下げへの関与が疑われていることや、公文書の改ざんという法治国家としてあるまじき事実が明らかになるなど、非常に大きな問題である。その中でも重要な参考人である佐川氏に多くの注目が集まることは当然だ。
しかし佐川氏に限らず、渦中の人物をゴシップ的に消費し人権を踏みにじるような態度は、どんな事件の関係者に対してもあってならないものなのではないだろうか。