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妊娠順番ルールが職場にあるとしても、その遵守が困難な理由

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Thinkstock/Photo by NataliaDeriabina

 今、職場での「妊娠順番ルール」が広く議論されている。発端は、228日の毎日新聞朝刊の読者投稿欄で、28歳の男性が妻の職場での“妊娠の順番”ルールに疑問を投げかけたことだ。投稿者の名古屋市在住の男性(28歳)は、保育士として働いている妻が妊娠したが「妻の保育園では、結婚の時期、妊娠の順番まで園長に決められていて、『先輩を追い抜くことは駄目』という暗黙の了解がある」ようで、男性は妻と共に『子どもができてすみません』と園長に頭を下げに行ったという。翌日以降も妻は園長から『どうして勝手にルールを破るのよ』と嫌味を言われ続けており、男性は「子どもを産む順番が決められ、それを守ることは一体誰のためになるのでしょう」「子どもを育てる職業がこんな環境であるこの国は子育て後進国です」と疑問を投げかけた。この新聞投稿はワイドショーで取り上げられるなどの反響を呼んだ。

 36日放送の『オトナの夜のワイドショー! バラいろダンディ』(TOKYO MIX)では、経済評論家の勝間和代氏(49)が「はっきりとした人権侵害です」と断言した上で、代理職員の雇用など企業側の負担の大きさに言及。他方、作家の立花胡桃氏(36)は「女性だけの職場で、予定なしに妊娠されると周りがフォローしなければいけなくて、結局、他の女性が迷惑する」とルールに一定の理解を見せる。

 毎日新聞によると、保育研究所所長の村山祐一氏は、保育園で結婚や妊娠の順番決めが行われるのは珍しいことではなく、背景に「低賃金で長時間労働を強いられる保育士の職が敬遠され、数が足りないこと」がある。確かに新聞投稿者の妻の職場である保育園は、専門性や責任の重さに見合わない給与・待遇で働く保育士も少なくないことがたびたび問題視されており、その改善は待機児童問題の解消とも絡む急務だ。

 また、“妊娠の順番”ルールについて村山氏は「職員が辞めずに経験を積む工夫とも映る」と見解を示し、女性の仕事と出産について発信を続けるジャーナリストの白河桃子氏は“妊娠の順番”ルールがあるのは、保育園に限ったことではなく、女性が多く働く職場では「ありがち」だという。「出産・育児ローテーション表」なるものが存在する職場もあるそうだ。

 勝間和代氏が明言したように、被雇用者の妊娠・出産に指示することは人権侵害と考えられるだろう。そして「でも……」と必ずつなげられるのは、ある日唐突に女性社員から妊娠により数カ月後の離脱を告げられれば、職場は混乱するという「実状」への言及。妊娠の予定がない同僚に仕事が多く分担されることになり「迷惑を被る」ことや、人員を補充しなければならなくなり会社が新規採用の「負担を負う」こと、また産後の女性社員は育児優先になりこれまた同僚が「しわ寄せを受ける」といった少し先の話……ネガティブな話題は尽きない。こうした背景からマタニティハラスメントが発生する向きもあろう。

 では妊娠・出産・育児を望む女性は、組織の中で働きながらどのようにそれらを遂行すればよいのか。もっとも良いと考えられているのは、前出のように「妊娠順番ルール」を遵守し、計画的に産み育てることなのかもしれない。しかし、妊娠・出産は、個人が(医療が介入したとしても)コントロールできることではなく、避妊をしても望まない妊娠することもあれば、望んでもなかなか妊娠しないこともある。産後に体調を崩すこともあり得るし、産まれた子供がピンピン健康とも限らない。妊娠順番ルールは、想定の範囲が狭すぎるのではないだろうか。

中崎亜衣

1987年生まれの未婚シングルマザー。お金はないけどしがらみもないのをいいことに、自由にゆる~く娘と暮らしている。90年代りぼん、邦画、小説、古着、カフェが好き。

@pinkmooncandy

バナナ&ストロベリー

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