
生き延びるためのマネー/川部紀子
こんにちは! ファイナンシャルプランナーで社会保険労務士の川部紀子です。
ここ数カ月で「働き方改革」という言葉が今まで以上に聞こえてくるようになりました。新年度が始まり、企業も働き方改革に対応するために様々な工夫をしています。わかりやすいのは労働時間の短縮でしょう。今までよりも自由な時間が増えて、残業代が減ることに繋がりますので、自分自身の収支が悪化する可能性を秘めています。「働き方改革」は、お金という意味でも大きな影響を及ぼします。
もう1つ、そろそろ意識しなければいけないのは、来年秋に予定されている消費税の増税です。予定通りにいけば、消費税が8%から10%に上がります。年収200万円、300万円、400万円台の方は、年間4万円以上、年収500万円、600万円台なら年間5万円以上の負担増が考えられます。それ以上の年収なら、さらに多くなります。
この大きな2つの流れに対応するため、今のうちに対策を取らないと当然生活が厳しくなります。今すぐ始められる対策の1つに、所得税と住民税の「節税」があります。今回は、節税の効果を具体的な数字でお伝えしたいと思います。
年収200万円の所得税・住民税っていくらなの?
最低賃金でフルタイム働く場合、年収200万円ほどとなります。人によって条件はそれぞれ異なりますが、非正規雇用の働き方の場合、このくらいの年収の方は多くいらっしゃいます。
こうした方は、いったい年間いくらの所得税と住民税を払うことになるのでしょうか?
例)東京23区在住、40歳未満独身、年収200万円 ※控除は基礎控除、社会保険料控除のみ
所得税:27,800円 住民税:62,000円 (合計89,800円…①)
いかがでしょう。地域によって若干違いはありますが、ザックリしたイメージをつかめると思います。年収200万円で約9万円と考えると、かなりの大金と感じてしまいませんか? 今回紹介するのは、この約9万円を圧縮する方法です。
月々5,000円を積み立ててみる
自営業の人が、飲食店などで「領収書ください」と言う場面を見たことがある人は多いと思います。どうしていちいち領収書をもらっているのか。平たく言うと、あの領収書に記載された金額に対しては、税金がかからない効果があるのです。
どこかに勤めている場合は、そのような領収書をもらったところで税金は安くなりませんよね(医療費などの例外はあります)。
でも、自営業者の領収書と同じ効果を発揮するものがあります。それは「確定拠出年金」の掛金です。確定拠出年金とは、60歳以降に受け取るお金を積み立てていく制度です。実は確定拠出年金に払った金額に対して税金がかけられません。
先ほどの年収200万円のケースを例に考えましょう。細かい説明は省略しますが、このケースの場合、税金を計算する際に対象となるのは60万円弱(「課税所得」といいます)。課税所得を60万円とすると、年間6万円(月々5,000円ずつ)確定拠出年金に積み立てをした場合、6万円を差し引いた54万円に税率がかけられて、税金が計算されることになります。当然、確定拠出年金に積み立てた方が、税金は安くなりますよね。
また、掛金である年間6万円は、食べたり飲んだりして払って無くなってしまうお金と違って、日本人最大の心配事とも言える60歳以降のお金として備えていくことになるので一石二鳥です。
職場でこの制度(企業型 確定拠出年金)を導入していることは大いにあり得ます。自分が対象になっているかを確認し、「マッチング拠出を申し込みできますか?」と聞いてみましょう。
対象になっていない場合は、iDeCo(個人型 確定拠出年金)を申し込むことになります。
先ほど出したケースで、月々5,000円ずつ積み立てた場合の税金を計算してみます。
所得税:24,800円 住民税:56,000円 (合計80,800円…②)
元々の①より年間9,000円も税金が少なくなりました。この金額をどうでもいいと思う人はいないのではないでしょうか。
多くかければかけるほど節税効果は高いので、月々10,000円かけると①より年間18,100円税金が少なくなります。
ふるさと納税をやってみる
知らないという人がいないほど定着した「ふるさと納税」と言えば、魅力的な「返礼品」や応援したい地域への「寄付」を目的とする人がいますが、税金面での魅力もあります。
ふるさと納税は、実質上2000円の負担で「返礼品」がもらえる仕組みになっています。例えば10,000円分ふるさと納税をすると、所得税や住民税の控除という形で8000円分が手元に戻ってくることになります。計算上、2,000円分の負担が発生しているのですが、2,000円以上するような生活に必要な物を返礼品として受け取れば、その負担すら問題ナシですよね。
では、先ほどの例で、月々5,000円の確定拠出年金に加えて、年間10,000円ふるさと納税をした場合の税金を計算してみます。※ワンストップ特例利用
所得税:24,800円 住民税:48,000円 (合計68,100円…③)
元々の①より年間17,000円も税金が少なくなりました。②と比べても年間8,000円少なくなっています。こちらも、多くふるさと納税すればするほど節税効果は高くなります。
まとめ
かしこい節税2トップとも言える、確定拠出年金(マッチング拠出・iDeCo)とふるさと納税。年収200万円の例でも非常に効果が高いことが伝わったと思います。
でも、実際に制度をフル活用している人は圧倒的に「知識のある高所得者」という印象があります。もちろん、高所得者は税率も税額も高いので「節税」効果は大きいのですが、「生活」という意味で少しでもこうした恩恵を受けてほしいと強く感じるのは、高所得者ではありません。そこで、今回はフルタイム最低賃金のおおよその年収である200万円の例を挙げてみました。
迫りくる年収減時代、増税時代。知っているかどうか、そして、行動を起こすかどうかで、損得の格差がどんどん広がってくるでしょう。住民税に関しては今年のアクションが来年の支払い額に反映するので、早く始めることも重要です。
お得な制度を無理に活用しようとして生活していけなくなり、危険な制度(キャッシングやカードローン、リボ払いなど)に手を出しては本末転倒ですが、知識を得て、いまできる金額から行動を起こしてみてください。
※税額試算については、仮定の事例に基づいた一般的な計算です。個別具体的な件については、税務署、税理士にご相談ください。
※2018年4月現在の法令等で記載しています。