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マイノリティが主役の街 多様性の都市ニューヨークのリアルと楽しさ!

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自宅では「英語以外」を話す

 以下はNYCの「家庭で使われている英語以外の言語」のトップ12だ。

1) スペイン語(主にヒスパニック/ラティーノが使用)
2) 中国語(広東語、標準中国語、台湾語を含む)
3) ロシア語
4) フレンチ・クリオール(ハイチ系が使用)
5) ベンガル語(主にバングラデシュ系が使用)
6) イディッシュ語(ユダヤ系が使用)
7) フランス語(主に西アフリカ系が使用)
8) イタリア語
9) 韓国語
10) アラビア語
11) ポーランド語
12) タガログ語(フィリピン系が使用)

 上記はNYC全体の統計だが、区別の統計をみると、どの区にどんなエスニック・コミュニティがあるのかがわかって興味深い。

フランス語話者=西アフリカ人

 ブロンクス区の「家庭で使われている英語以外の言語トップ12」にはクル、イボ(*)、ヨルバ、マンデ、フラニの各語が含まれている。西アフリカ諸国で使われている言葉であり、つまり西アフリカからの移民の多さを物語っている。

 アフリカはそもそも、国家よりも部族に基づく大陸であったため、今も膨大な数の部族語が使われている。中には100を超える部族語が話されている国もあり、そのため旧宗主国のフランス語を共通語としている国が多い。

 したがってブロンクス区では12,000人以上が家庭でフランス語を使うとも出ているが、その多くはフランス人ではなく、西アフリカ諸国人だ。

(*)イボ語は、現在大ヒット中のアフリカを舞台とした映画『ブラックパンサー』にも登場する。『リメンバー・ミー』『ブラックパンサー』~大ヒットの秘密は“隠れ女性映画”と“アンチ文化盗用”

 同じようにブルックリン区のトップ12にはイディッシュ語とヘブライ語が上がっている。どちらもユダヤ系の言語だ。同じブルックリン区ではアラビア語も使われている。つまりブルックリン区には宗教対立関係にあるイスラエル/ユダヤ系とアラブ/イスラム系のコミュニティがあるのだ。

 クイーンズ区のリストには南アジアで使われているベンガル語、パンジャビ語、ヒンドゥ語が含まれている。クイーンズ区には有名な “インド人街” があり、インド・カレーの店が林立しているが、実はインド系だけでなく、インドと領地問題で対立していたバングラデシュ系の経営による店も多く、両者はうまく共存しているのである。

 マンハッタン区のトップ12には日本語が6位でランクインしている。話者数は10,766人。ただし日本人は区内あちこちに散らばって暮らしており、いわゆる “ジャパン・タウン” は存在しない。

 なお、筆者のように本来は日本語話者であっても家族が英語話者だと、英会話力のレベルに関係なく「家庭では英語のみ使用」となり、上記の10,766人には含まれないという現象もある。

 また、「家庭で英語以外を使う」には完璧な英語を話すバイリンガルから、英語がまったく話せない者まで含まれる。統計ではNY市民のうち180万人が「英語力が限られている」と出ている。英語力については自己申告につき、どの程度で「限られている」とするかは定かではない。

避難民を受け入れる

 就学と同時にバイリンガル教育が始まるため、母国または家庭内で母国語しか使ってこなかった子供もやがて英語を話すようになる。現在、NYCの公立校では従来のバイリンガル教育(非英語話者が英語で授業を受けられるようになるまで英語を学ばせる)に加え、二重言語教育(英語と祖国語をともに母語として教え続ける)が増えている。

 バイリンガル教育/二重言語教育、ともに話者数の多さから圧倒的にスペイン語、続いて中国語のクラスが多いが、ポーランド語、韓国語、フランス語、イディッシュ語などのクラスもある。2010年のハイチ大地震によって多くの避難民がニューヨークに移住したため、ハイチ系コミュニティのあるブルックリン区にハイチ・クリオールとの二重言語クラスが増設された。昨年のプエルトリコのハリケーン被災後も避難民がやってきたため、来年度はスペイン語との二重言語クラスがさらに増えるものと思われる。

 ブルックリン区にはNYC唯一の英語/日本語の二重言語クラスを持つ小学校がある。これは現地の日本人保護者の陳情運動によって実現したものだ。

エスニック・コミュニティに行ってみよう!

 ニューヨーク旅行の際、事前にちょっとリサーチをしてエスニック・コミュニティを見つけ、ひとつかふたつ訪れてみることをお勧めする。一歩足を踏み入れるとまったく英語が聞こえなくなり、「ここは本当にニューヨーク?」と驚かされることもある。レストランや屋台には見たことのない食べ物が並んでいる。英語をまったく話さない店員に行き当たることもある。けれどジェスチャーでなんとかなってしまう。こちらも英語が苦手なら、日本語でもいいから笑顔で「美味しい!」「きれい!」と言えば、気持ちは伝わる。すると向こうも笑顔を返してくる。こうしたコミュニケーションこそが、多様性の都市ニューヨークの醍醐味なのである。
(堂本かおる)

文中の各種データ出典元:www.census.gov, www.nyc.gov

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