2016年に芸能事務所「レプロエンタテインメント」から独立し、“能年玲奈”から名義を変えた女優・のん(24)。現在、主要メディアへの露出が激減していることから、独立以降の活動をよく知らない人もいることだろう。彼女は今、”女優・創作あーちすと”として自由にやりたいことが出来ているという。
このごろ最も勢力的に活動しているのが音楽だ。2017年3月発売の著書『創作あーちすと NON』(太田出版)によると、「ビシッとしたアーティストに憧れはありますが、自分が名乗るのはおこがましい。自由にはっちゃけるための胡散臭さを保つために、“あーちすと”と言っています(笑)」と謙遜しているが、のんはミュージシャンとして本格的に活動している。2017年8月には自身が代表を務める新レーベル「KAIWA(RE)CORD」を設立し、同年の8月6日にはカセットテープとアナログレコードで「オヒロメ・パックEP」をリリース、同日開催の音楽イベント『WORLD HAPPINESS 2017』にゲスト出演を果たした。
さらに12月には自ら主催したライブイベント「のん、KAIWA フェス Vol.1 ~音楽があれば会話が出来る!~」を開催。同ライブには銀杏BOYZやサンボマスターといった人気バンドも駆け付けている。5月9日リリースの1stアルバム「スーパーヒーローズ」には、自ら作詞作曲を務めた楽曲の他、矢野顕子や大友良英など豪華アーティストが制作した曲を収めた。
女優としても、「株式会社non」という個人事務所を設立して代表に就任、徐々に活躍の幅を広げつつある。依然として民放キー局のコンテンツに出演することはないものの、3月に公開された「江戸川学園おおたかの森専門学校」のCMムービー「福祉のプロになる。」の他、4月には岩手銀行が平成30年度のCMイメージキャラクターに起用するなど、CMでの活躍は目覚ましい。
また声優としても、映画『この世界の片隅に』での演技が素晴らしかったことは多くの人々の記憶に残った。同作をきっかけにアニメ声優としての活動の幅も広がり、今年3月には「AnimeJapan 2018」のステージに出演した。さらに、朝日新聞社が運営するウェブサイト「telling,」のインタビューによると、2017年末にはYouTube Originalsで自身が監督、脚本、出演する作品の撮影をしたそうで、現在編集作業中とのこと。
芸術方面の活動では、4月19日から5月8日にかけて「‘のん’ひとり展 -女の子は牙をむく-」を開催。同展には、のんが手掛けた絵画や立体物などさまざまなアート作品が並ぶという。音楽、女優、芸術とさまざまな活躍をするのんだが、既存の枠に捉われない自由な活動の原動力はどこにあるのか。
その答えを「telling,」で打ち明けていた。のんは、幼少期からやりたいことが溢れてくる性格ゆえ、「『言われたことを言われたとおりにやる才能』がなかっただけ」「『苦手だな』とか、『難しいな』って思うことは多々ありますが、『やってもいいんだ』と思えれば……ほんの少しだけでも勇気が出せれば、実は、できないことはないんじゃないか、と気づきました」と語っていたのだ。古巣「レプロエンタテインメント」に限らず大手芸能事務所での活動自体が、ひいては慣習を大事にする日本のテレビ・芸能界のシステムそのものが肌に合わなかったのかもしれない。
演技、音楽など、何をやるにも「ヘタクソだな」と苦悩するというのん。しかし、「一度やってみたら、その時の楽しさのほうが勝る」と悩みながらも行動することで楽しさを見出だせているそう。そして、「『ヘタクソだからやっちゃダメ』って、誰が決めるんだろう……」「もしそれが幸せだったり、楽しかったりするような感情だったら、ステキなことなんじゃないかと思うんです」と、たとえヘタでも”やってはいけないことではない”と気付いたそう。無論、それは自身がやりたいことを実行に移せる環境が整った今だから成せることだ。
独立後も「レプロエンタテインメント」の公式サイトに掲載されていた能年玲奈のプロフィールが、2018年4月上旬に削除された。ついに前事務所と本格的に決別したのんは、今後も次々と新しい道を見つけていくだろう。
(ボンゾ)