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松本人志が財務省トップのセクハラ問題に「ハニートラップないかな?」

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『ワイドショー』オフィシャルサイトより

『ワイドショー』オフィシャルサイトより

 422日放送の『ワイドナショー』(フジテレビ系)で、財務省の福田淳一事務次官を巡るセクハラ問題を取り扱った。その中で番組MCのダウンタウン松本人志(54)が、この騒動の内訳を「セクハラ6:パワハラ3:ハニトラ1」だと私見を述べ、「女性記者がノリノリだったか、イヤイヤだったか」に焦点をあてるという素っ頓狂な見方を示した。山崎夕貴アナウンサー(30)は「うーん、考えにくいと思います」と否定したが、その他の出演者は容認していた。

 「週刊新潮」(新潮社)の報道を起点に、拡大し続けているこの騒動。同誌は財務省の福田淳一事務次官によるセクハラについて、複数の女性記者たちからの証言を掲載した。報道があった12日、麻生太郎財務相は、「(福田氏に)きちんと緊張感を持って対応をするようにと、訓戒を述べたということで十分だと思っている」と述べ、財務省として詳しく調査する予定もなく、早急に収束させようとしていた。翌13日にも麻生氏は、「事実だとするなら、それはセクハラという意味ではアウトだ」「あの種の話はいまの時代、明らかにセクハラと言われる対象」としつつも、福田氏の能力を評価しているとして、改めて処分はしないという考えを示した。

 その後、13日午後になって新潮社が運営するwebメディア『デイリー新潮』が、福田氏のものとされる「今日ね、今日ね……抱きしめていい?」などのセクハラ発言が録音された音声データを公開。週末を挟んだ16日、財務省は福田氏への聞き取り調査の内容などをまとめた「福田事務次官に関する報道に係る調査について」と題した文書を発表し、報道内容について否定した。さらに同文書で、福田氏からの聴取だけでは事実関係の解明は困難であることを理由に、記者クラブ加盟各社に対し、各社内の女性記者に調査協力を求めた。「セクハラ被害者は名乗り出なさい」ということである。

 この財務省の対応には、複数の弁護士たちや、全国の新聞社と通信社の労働組合『新聞労連』などが「人権侵害にあたる」と抗議。そして18日夕方、福田氏は唐突に辞任を表明したが、職責を果たしていくことが困難な状況になったためと説明し、セクハラ行為についてはあらためて否定した。

 さらに事態が動いたのは18日夜。『報道ステーション』(テレビ朝日系)において、テレビ朝日社員が福田氏からセクハラを受けていたことがわかったと明らかにし、19日午前0時にテレビ朝日の篠塚浩取締役報道局長が会見を開いたのだ。篠塚局長は「当社は福田氏による当社社員を傷つける数々の行為と、その後の対応について、財務省に対して正式に抗議する予定です」と明言。一方で、社員から相談があったにもかかわらず自社で報じようとしなかったテレ朝を糾弾する声も出ている。

 こうした一連の動きを受けて、『ワイドナショー』がどの立場を取ったかといえば、結局、「セクハラというけど、男と女の問題」と矮小化しているようで非常に残念だった。まず、MCの東野幸治(50)が、コメンテーターの石原良純(56)に話を振る。

石原「あの発言をしててもセクハラじゃないっていう人もいると思います。あんなの聞けばセクハラだって思うじゃないですか。でもあの人(福田氏)は本当にセクハラじゃないと思ってるかもしれないよ」
山崎アナ「女性は被害に遭われたと言っている」
石原「女性はそう思ったかもしれないが」

 女性がどう思ったかというより、客観的に石原良純も「あんなの聞けばセクハラだって思う」のであれば、福田氏がどう意図していたかは“セーフ/アウト”の判断基準にならないのでは。また、女優の佐藤仁美(38)もゲストコメンテーターとして出演していたが、「(女性記者がセクハラ被害に遭っていたという)一年半の間、どうしてたんだろうなと。何も言えない女子で我慢していたのかもしれないけど、普通だったらもっと早く言う」と的外れなコメント。

 そして松本人志の見解はこうだった。

「僕はね、福田さんっていう人は、エロの塊みたいなおっちゃんですよ。だから、セクハラは、僕はセクハラだと思いますよ。思うんですけど、だったら、そんなエロの塊のようなおっちゃんに、女性記者1人を一年半に渡って、それ(取材)をなぜさせたのかって、させた側の責任はどうなっていくんだろうかと思うんですよ。

テレ朝さんは、いやいやそれは違うセクハラがすべてなんだって言うんだけど、でもそこに行かせたんだったら、これはパワハラじゃないのか、ということになってくると僕は思うんですね。でもテレ朝さんがいやパワハラじゃないと言うんだったら、女性は自ら前のめりにこの一年間、取材をしてきたのか。そうなったらなったで、これはハニトラじゃないのか、ってことになってくる。

どれも全部1本じゃないと思う。ですので、私の見解としましては、セクハラ6:パワハラ3:ハニトラ(ハニートラップ)1でどうですか。このあたりで皆さん手ぇ打たないですか?」

 スタジオは笑いに包まれるが、フレームの外から山崎アナが「ハニトラ入りますか?」とぽつりと発した声が聞こえた。松本はこれに反応。

松本「うーーーん、でもねえ、ハニトラないかな?」
山崎アナ「うーん、考えにくいと思います」
松本「もしくはこの女性が、ほんとに最初からイヤでイヤでしょうがなかったっていうことになってきたら、これはもう、(セクハラ6:)パワハラ4になりますよね」
山崎アナ「でもパワハラに関しては、上司からたとえば“この人を取材するように”っていう担当が決められちゃったら、嫌なことがあってもすぐに上司にあげる(報告する)のは、自分の中で責任感があったらなかなかできないと思うんですよね。だから上司に言われたからパワハラっていうよりも自分の中でなんとかしようと……」

 ゲストコメンテーターのピアニスト清塚信也(35)は、「現段階で提供されている証拠(音声データ)だけでは、これ以上議論のしようがない」という立場をとり、松本もこれに乗っかった。

清塚「いま出ている情報でなびきすぎじゃないか。みんな政治家嫌いだなっていうのが僕の感想。あれくらいの音声データの証拠は誰でも作れる。その可能性はある。
僕はセクハラは絶対ダメだと思うし、福田さんは気持ち悪いと思う。脈がないのに追っている男性って僕いちばん嫌い、痛いと思うんですけど、それは置いといて。今の状況で、ワイドショーやニュースは『本当だとしたら』って前提。だとしたら、っていう議論は意味なくないですか。この証拠だったら、もうちょっと冷静でいいんじゃないですか」
松本「僕もそう思う、あの音声データはあまりに断片的で」

そう言いつつ、断片的な音声データで議論を進めているのは『ワイドナショー』もまったく同じだ。

 最後に、石原良純が「取材の可視化を進めていくと、もう取材はできなくなるのでは」と、記者がスクープを取りづらくなる懸念を指摘。すると松本は、「女性記者はずっとじゃあノリノリやったってことですか? それかイヤイヤだったんですか? それか途中で心が折れたんですか?」と、またも頓珍漢なことを言い出した。

東野「出てる情報では(女性記者の心境は)わからない」
弁護士「それは女性記者に聞き取らないとわからない」
佐藤仁美「難しい~」

と、このような形で、『ワイドナショー』財務省セクハラ騒動に関する議論は終わったのだが、この騒動、女性記者が「ノリノリで取材していたか/イヤイヤだったか」を知る必要があるのだろうか?

 松本人志自身が何をもって「ハニートラップ」と定義しているのかは不明だが、おそらく、女性記者がノリノリで果敢に福田氏へ取材を挑んでいたとしたら、一年半もその行動を続けておきながら「セクハラだった」と告発するのは“ハニートラップ”のようなものである、という見方がそこにあるのだろう。そして、イヤイヤ取材していたのに上司が訴えを聞いてくれず取材に行かされ続けたとしたら「パワハラ」という見方だ。

 性暴力事件に際して「女性から誘ってきたくせに、男がノッたら手のひらを返された」という見方をする人びとは少なくない。たとえばハリウッドの著名プロデューサーが、映画出演などの条件と引き換えに女優に性行為を迫った一連の事件についても、日本のワイドショー番組では「女優が体を武器に監督やプロデューサーに迫る“枕営業”だってあるじゃん」と話をすりかえるケースが目立った。

 ここでは男女間のセクハラに限定するが、こうした「でも女が誘ったのかもしれないじゃん」という論調には、次のように申し上げたい。「女性から誘われても、男性にはNOという権利がある」。たとえ女性が、権力を持つ男性に「映画主演の座をくれるなら、あなたと寝てもいい」「情報をくれるなら、仲良くしてあげてもいい」と迫ったとしても、権力を持つ男性がそれを断ればいいだけのことだ。

 今回の事件でいえば、福田氏が女性記者から一対一で取材を受けていたとして、女性記者は福田氏から情報を引き出すことが仕事であり福田氏の機嫌を損ねることは出来かねる立場にあるため、まず圧倒的にその場でのパワーバランスは福田氏が強く、権力を持つ側といえる。

 そして(清塚氏のコメントにあるようにあくまでも“福田氏の発言が事実であれば”だが)、強く拒絶できる立場にない女性記者に対して一連の性的な発言を繰り返したこと自体は、彼女が「イヤだったかどうか」にかかわらず、紛れもなくセクシャル・ハラスメントにあたる。福田氏が複数の女性記者を“自分がセクシャルな話をしてもいい相手”と認識していたであろうことが問題ではないのか。

 ただ、『ワイドナショー』をはじめ、今回の騒動に対する多くのタレントコメンテーターや識者の声をさらうと、誰彼かまわず“自分がセクシャルな話をしてもいい相手”と認識し、自他の境界線をはっきり引けない大人があまりに多いことにも気付かされる。

 麻生太郎財務相は、「嫌なら男の記者に代えればいい。ネタをもらえるかもと思ってついて行ったんだろう」と発言した。“セクハラされるのが嫌なら、担当記者から外れろ”ということだ。ネット世論にも、「報道各社は、わざわざ美人記者に官僚や政治家の取材を担当させて、色仕掛けでネタをとらせているくせに被害者ぶるな」という論調がある。いずれも言語道断だ。女性記者に対して官僚らが「セクハラしない」ことが第一である。取材担当が美人記者でも美人でない記者でも男性記者でも、「セクハラ出来る相手か否か」に関わらずに向き合うのがせめて人として当然のことだと考えてほしい。

ヒポポ照子

東京で働くお母さんのひとり。大きなカバを見るのが好きです。

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