いつまで「昭和の女」をお手本とするのか? 古風な女が良い女、の議論に終止符を

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(C)wezzy

 一昨年に結婚したタレントのDAIGO(40)と女優の北川景子(31)の“良き夫婦ぶり”はしばしば話題になる。Wezzyでも以前、『北川景子とDAIGO、支持集める好感度夫婦の上手なアピール方法』という記事が人気ランキング1位を獲得していた。

 仲の良さそうな夫婦として世間から広く認知されている二人。確かに仲睦まじそうである。彼らを”良き夫婦“として取り上げるとき、お互いを思いやっていることがポイントだという指摘が多い。だが、私には、DAIGOと北川景子が実際どうであるかは別として、そうした記事の論調自体がどこかおかしいと思える。

 たとえば、AERA.net3月に掲載している『北川景子&DAIGO 芸能界最強のおしどり夫婦、円満の秘訣は「夫力」』という記事は、その違和感が顕著だった。

 当該記事では、この夫婦が円満である秘訣としてまず、夫が妻の趣味に寛容であることを挙げている。北川景子は宝塚歌劇団の熱心なファンだが、DAIGOは彼女を「温かく見守っている」「妻の趣味に歩み寄っている」そうだ。いやいや、それってつまり、「結婚したんだから趣味もほどほどに」と言われるのが普通の夫婦ということだろうか?

 さらにポイントなのは「DAIGOが北川の手料理を褒めること」だという。北川の手料理をDAIGOは「美味しい」と言って食べ、全てスマホで写真撮影しているのだとか。記者は<料理は時間も労力もかかるもの。そんな中「美味しい」という言葉があれば「また作ろう」とモチベーションもあがるだろう>と評価している。

 そうした料理に関する話は、DAIGOもテレビバラエティや出演イベントなどでたびたびトークしている。一方、当該記事ではその他の家事についても、“スポーツ紙の芸能担当記者”が次のように説明する。

<掃除や洗濯など料理以外の家事についても、全般的に北川がやっているようですね。しかし、DAIGOが北川より先に帰宅した時は、自分で掃除機をかけたり風呂を掃除したりすることもあるそうです>

<妻の幸せを願っている夫は、妻に対して思いやりを持ち、家事を手伝うだけでなく、趣味を理解したり褒め上手だったりしますよね。もちろん、DAIGOも同様>

 え。なにそれ。といきなり突っ込みたくなる。

 共働きでありながら日常的な家事や料理を全般的に北川が担っていること自体は、別に夫婦間の話し合いで納得しているのなら私には関係ないし何の問題もない。家事全般が好きで、どんなに忙しい生活になろうがそこに生きがい・やりがいを見出している女性だっているだろう。

 しかし、この書き方にはものすごく違和感が残る。「夫が妻より先に帰宅した時は“自分で”掃除機をかけたり」って……まるで夫は他者にやってもらうのが当たり前? 「自分で」も何も、自分も住んでる家だろうが。「風呂を掃除したりすることもあるそうです」いや、夫は風呂に入らないのか? 自分が汚した場所を自分で掃除することが、なぜ称賛されるんだ?

 こんな調子で、記事の最後はこう締めくくられている。

<芸能界だけでなく社会全体で共働き夫婦は増加し続け、もはや一般的なライフスタイルとなっている昨今。一線で活躍する妻を持つ夫は少なくないが、円満な家庭を築いていく上でDAIGOを見習ってみるのも良いのでは?>

 ……いやいやいや!! 見習うも何も普通のことですって!! まるで、『共働きが主流になった昨今では“妻を手伝い、理解してあげる”のが理想ですよ』と表現しているようだが、共働きが主流なのだし、手伝いや理解とかじゃなく、夫も普通に“自分の仕事としてこなす”にシフトしていけよ! と声を大にして言いたい。

「暗黙の不平等」に麻痺してるのか?

 DAIGOと北川景子が仲の良い夫婦であることは分かったが、さすがにイマドキ、これの感想としては、「いやいや、どこに前提置いてんの?」「共働きなら普通にやれよ」という妻たちの声や、「こんなで良い夫だとか見習えだとか何言ってんだ。俺は当然のこととして毎日やっている」という夫たちの声がコメントに並ぶんじゃないかと思った。当該記事は最初、Yahoo!ニュースに配信されていて(※すでに掲載期間は終了)、コメント欄がつけられていたので、どのような感想が並んでいるのか興味がわいた。ところが、コメント欄をスクロールしていくと、私が想像もしていなかったコメントが寄せられていた。

『男性も手料理が美味しかったり支えてくれたりすると嬉しいもんね』
『家事も奥さん丸投げじゃない所とか、DAIGOさんも優しいし、良いご夫婦ですね』

 むしろ、丸投げ(=妻を家政婦扱い)する夫なんか居て良いんだろうか。それをしないというだけで優しい旦那・良い夫婦、になるのか。

『女優は特に男っぽいと聞くから、夫の方が女性っぽく家事しないと上手くいかないかもね』

 そもそも、女性っぽく=家事ってなんだろう。授乳が「女性っぽい」というなら、産後の女性の乳からしか母乳は出ないし理解できるのだが、料理や洗濯や掃除は何も女性の方が「向いてる」から女性が担ってきたわけじゃないだろう。男は仕事・女は家事&子育て、という一時的な性別役割分業時代の名残があるだけだ。

 一番引っかかったのがこんなコメントだった。

『北川さんは昔の女性が持っていた古風な考えを持っていそうだから、旦那さんは幸せだよね』

 何でもそうだけど「古風」という響きは本当に“良い意味”でいつも使われる。昭和時代を生きてきた女性達の生きざま(夫に尽くす、三歩下がって歩く、家事子育てに手をかけるetc…)に近いことを日ごろから行っている現代女性がいると「古風」だと称賛の対象になる。古いものが良いものとは限らないし、そうした行動は社会構造や時代背景によるとしか言えないのに、なぜ無条件に良いものとして扱われるのだろう?

 この「古風な女性」「古風な妻」が良いとされる前提が、平成も終わろうという2018年にまだしぶとく蔓延っているから、肉体的・精神的に追い詰められる妻は少なくないのではないだろうか。

現代を生きる女性の事情

 ビジネスインサイダーの『おかず3品以上、ご飯は手作り呪縛は誰のせい?手作り至上主義が共働き家庭を追い詰める』という記事に登場する共働き家庭の夫たちの声にも、仰天した。

 記事に登場する共働き家庭の夫たちは「旅館のような朝ごはんを」「丼物禁止、おかずは3品以上」「一品料理は炭水化物が多くなる&手抜きっぽいので嫌」など、それぞれの好みを妻に要求しているようだが、「最初は頑張って作っていたけど、お互い仕事に行くのに毎朝これはムリ」「献立を考えるのがはっきり言ってしんどい」「夫は料理をしないので作る人の大変さがわかっていない」などと妻たちの不満は募っている。

 そりゃそうだ。ここに登場する妻たちは毎朝仕事に行き、帰ってから掃除や洗濯をこなしているというのに、それに加え子育てをしながら夫のこの要求に応えているのであれば、私からすればもう神業でしかない。夫側の心理は一体どうなんだろう。記事にあるような夫たちの要求だけを見ると、まるで女性を「自分と同じ人間だ」と理解していないようにすら思えてしまうが。

 記事に登場する夫たちは、フルタイムで働く両親の代わりにおばあちゃんが食事の世話をしていた(結婚するまで)とか、母親が専業主婦で食事の栄養バランスに細かく気を使う家庭に育ってきた、などの背景があるそうだ。こういう夫たちには、自分が育ってきた時代の母たち(主婦)の姿を、現在の母(妻)に投影し、同じようにしてほしいと望むこと自体がおかしなことだと気付いてほしい。

 そういえば、よくホームドラマでも夫婦間のやり取りで、主婦が働きたいと言い、夫が“家事育児を手抜きしないなら許す”と告げる場面があるが、それで妻がキレる演出って、見たことがない。「外で働くのも許してやるけど、家事・育児は女の責任なんだからそれは全うしろ」だなんてまるで家政婦や奴隷扱いだ。妻も働けば家計は潤うのに。

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