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浜崎あゆみがLGBTフレンドリーなアーティストとして発信し続けてきたこと

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浜崎あゆみInstagramより

浜崎あゆみInstagramより

 日本最大級のプライドイベント「東京レインボープライド2018」が、今年も開催される。428日から56日にかけて、東京都内各所でトークショーやライブパフォーマンスなど複数の催しが予定されているほか、最終日の56日には代々木公園野外ステージにて浜崎あゆみがスペシャルライブを公演することも発表された。ちなみに昨年は中島美嘉、2016年はCharaがステージを披露した。

 浜崎あゆみのスペシャルライブは、鑑賞は無料だが、混雑することを予想して前方のアリーナエリアへ入る整理券の抽選を421日からwebで受け付けている。受付締切は2924時までで、抽選結果は53日までに応募者にメールで知らされる。整理券の発行枚数は700枚だ。

 浜崎あゆみは47日にデビュー20周年を記念したアリーナツアー「ayumi hamasaki ARENA TOUR 2018 POWER of MUSIC 20th Anniversary~」をスタートさせたばかり。土日を中心に、56月で福岡、広島、石川、仙台、大阪の大規模ホールをまわる。この記念すべき一大事業の真っ最中に、浜崎あゆみがゲストとして「東京レインボープライド2018」に参加することを決めたのはなぜか。それは、彼女が日本のポピュラーな歌手の中ではとりわけ、LGBTフレンドリーなアーティストであることが大きいだろう。

 たとえば先日、浜崎あゆみが『CDTV25周年SP』(TBS系)に出演して歌唱した際、バックコーラスの一人が「すごい格好をしてる!」とネットで話題になった。その人は浜崎あゆみ一座でお馴染みのTimmyさん。また、浜崎あゆみのバックダンサーとして男性の姿で活躍していたHideさんが、性転換手術を経てLicoと名前を変えてから、浜崎は女性ダンサーとしての彼女とステージに立ち続けた。

 浜崎あゆみのステージパフォーマンスやアートワークは、ゲイやレズビアン、バイセクシャル、ドラァグクイーン、トランスジェンダーなどセクシュアル・マイノリティ(性的少数者)なしに成立し得ない。彼女のMVにもライブステージにも、そうした多様なメンバーで構成された「チームayu」が欠かせないのだ。そんな浜崎のパフォーマンスはしばしば(露出度が高いことから)「下品」「過激」と一般から忌避されもするが、彼女は「自分はこれをカッコいいと信じているんだ」という信念を貫いている。そしてそんな彼女のパフォーマンスや楽曲を「素敵」と受け止める人たちが今、ファンとして彼女の近くにいる。浜崎あゆみとファンの間には、幸福な関係が出来上がっているといえるだろう。

 20122月にデジタルダウンロードシングルとして発表した楽曲「how beautiful you are」は、テレビドラマ『最後から二番目の恋』(フジテレビ系)主題歌だが、そのMVはドラマとはまったく関連がない。そこにはゲイカップル、レズビアンカップル、ドラァグクイーンカップル、身体的な欠損を持つ男性、トランスジェンダー、全身ピアス+身体改造を施した男性、著名な小人症のコメディアン・マメ山田氏など、今まで日本国内の多くの場所で“普通ではない”との評価を受けてきた様々な人々が映し出され、浜崎あゆみは「あなたが思うよりも/あなたはずっと美しいから」と歌い、讃える。2010年にリリースしたアルバム『Rock’n’Roll Circus』収録の楽曲「Lady Dynamite」のMVでも、浜崎あゆみはドラァグクイーンやGoGoBOYSと共にステージで華麗に踊っている。

 また、最近ではインポートストリートブランド「DEFEND PARIS」と、デビュー20周年を記念してアジア初のコラボアイテムを制作した浜崎あゆみ。セクシュアル・マイノリティを表すシンボルである6色のレインボーカラーをロゴに取り入れ、「セクシャル・マイノリティに対して届けたい思い」を浜崎あゆみ自身がデザインに落とし込んだという。Tシャツの背面には、「how beautiful you are」のサビの歌詞をプリントしている。このTシャツは、TeamAyuオフィシャルショップおよび前述のアリーナツアーのグッズ売り場でも販売中だ。

 昨年5月にはInstagramに、セクシュアル・マイノリティが集う街・新宿2丁目への強い思い入れを綴っていた。「デビューしたばかりの頃から新宿2丁目が大好きだ。私の青春時代は2丁目で過ごした想い出で埋め尽くされている」という書き出しではじまるその投稿は、「日本はどうしてこんなにもマイノリティへの理解がなかなか進まないのだろう」「例えばLGBTの人達に関するセクシャルマイノリティーしかり、女性が男性社会で権力を持ち発言しようものならマイノリティーオピニオンだ、と」問題提起につながり、「だったら私はマイノリティーの一部として発信し続けようじゃないの。少数派である事イコール弱者ではないと。多数派イコール強者ではないと。楽しんだモン勝ちよ!笑って笑っていきましょう!」と締め括っていた。

 日本ではテレビという最も大きな影響力を持つマスメディアに、女装家やトランスジェンダーなどが“オネエタレント”と呼ばれながら大勢出演してはいるが、そのことがマイノリティへの理解促進につながっているとは言いがたい。かえって偏見を生み、面白おかしく扱って良い存在として固定化してきた側面もあるだろう。そうした状況下で、浜崎あゆみというやはり大きな影響力を持つ歌手が「発信し続ける」と宣言した。これはとても意味のあることだ。一方で、浜崎あゆみと共に仕事をする面々は、芸能界や音楽興業という派手な舞台に関わる人々でもあり、そうではない一般の、あるいは地味な職に就くマイノリティまで同一視するような誤解をしてはいけない。要するに、人はとにかく多様なのだ。「この属性の人はこういうタイプ」などと決め付けることは、誰に対しても出来ない。

 「LGBT」というワードが日本国内に広まって久しい。これまで、たとえば「男の体で生まれ育ち、女性に恋愛感情と性欲を抱く」のがマジョリティだとして、「そうでない」人々はセクシュアル・マイノリティとして、マジョリティのために用意されたルールに従って生活せざるを得ず、不利益を被っていた。社会全体におけるマジョリティだというだけで利益を得られ、マイノリティだというだけで不利益を被る社会構造は不平等だ。マイノリティに特権を与えるということではなく、この不平等を是正すべく社会は速やかに変化していかなければならない。

ヒポポ照子

東京都在住、兼業ライター。

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