福田元次官セクハラ疑惑 麻生氏をはじめとした議員らのセクハラ被害者の気持ちを踏みにじる問題発言の数々

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首相官邸HPより

 4月12日発売『週刊新潮』(新潮社)の報道で疑惑が生じた、福田淳一財務事務次官(当時)による、女性記者へのセクシュアル・ハラスメントの問題。すでにまとめた発覚から辞任表明までの経緯をみればわかるとおり、本件に関する財務省の対応はセクハラという性暴力の問題を軽視しているとしか言えない。

 財務省だけではない。複数の議員もまた、本件について信じられない発言をしている。

ハニートラップを疑う人びと

 24日朝、福田氏の辞任が承認された閣議後の記者会見で次官の処分について問われた麻生氏は、次のように述べた

麻生氏「セクハラ疑惑の週刊誌報道だけで、セクハラがあったと認定して処分するのはいかがなものか。はめられて訴えられたのではないかなどと、いろいろな意見は世の中にいっぱいある。きちんと本人の人権も考え、本人と向こうの話と双方を伺った上でないとなかなか決められない」

 「はめられた」「ハニートラップでは?」との発言をしているのは麻生氏だけではない。

 下村博文元文科相は22日、都内で開かれた講演会で次のように語った。

「たしかに福田事務次官がとんでもない発言をしてるかもしれないけども、そんなの隠しテープで録っておいて、そしてテレビ局の人がですね、週刊誌に売るっていうこと自体がはめられてますよね。ある意味で犯罪だと思う」

 下村氏は翌日「『ある意味犯罪』と述べたのは表現が不適切でした。率直に撤回するとともに謝罪いたします」とコメントを発表した。

 『松本人志が財務省トップのセクハラ問題に「ハニートラップないかな?」』の記事で言及されているように、ダウンタウンの松本人志氏もこの騒動の内訳を「セクハラ6:パワハラ3:ハニトラ1」でどうかなどと述べている。

 著名な人間を相手に性暴力の被害を訴えると必ずと言っていいほど「ハニートラップではないか?」という説を唱える者が出てくる。ハーヴェイ・ワインスタイン氏による性暴力被害が告発され、欧米で「#MeToo」運動が活発になったときも日本のワイドショーでは「中には枕営業のものもあるのでは」「女性だって得をしてきたわけでしょ」という話のすり替えが起こった。性暴力の被害を訴えると、なぜか被害者が非難される構図が存在しているのだ。

 麻生氏は他にもこの件をめぐって問題発言をしている。

 19日夜(現地時間)訪米中だった麻生氏は、テレビ朝日の財務省への抗議について「しっかりと受け止めなければならない」とした上で、記者からの「抗議文に目を通されたのか。しっかり話をうかがいたいとおっしゃったが、具体的にどういう形で抗議を聞くつもりか」という質問に対し「出された抗議文というのは一枚紙で書いてありましたんで、もう少し大きな字で書いてもらった方が見やすいなと思った程度ぐらいに読みましたよ」と述べた

 また「(被害者)本人が申し出てこなければ、どうしようもない」「(被害者が)週刊誌には言っても、守秘義務を守る弁護士には言えないっていう話はちょっとよく理解できない」などの発言もしている

 これらの麻生氏の発言からは、被害者の気持ちを慮る様子は一切見受けられない。セクハラ被害など、たいしたことではないと考えているようにさえ感じる。麻生氏は、自分の気に入らない質問をする記者に対して高圧的で横柄な態度をとり、相手を嘲笑するような言動をすることも少なくない。麻生氏はこれまでも数々の問題発言をしてきた。こうした態度からは、社会的弱者や立場の異なる人びとを尊重する態度に欠けているように思えてならない。

「そんなに苦痛なことなのか」

 24日の福田氏の辞任後に職務を代行する矢野康治官房長は、18日に開かれた財務金融委員会で柚木道義衆院議員から「(記者)クラブは(「被害女性は名乗り出てほしい」とする財務省の求めを)拒否するとほぼ全社が言っている。ということは名乗り出ない可能性が高い。名乗り出なかったら、被害女性はセクハラ認定されないんですか」と質問されると次のように答弁した

「セクハラは、した者とされた者とが出てきて事実認定がなされ、その程度や内容によって判断がなされ、それによって会社や役所の処分がなされ、場合によっては法廷で処分されるものです。中身がわからないことには処分に至らないのが世の常ですよ。それをこの方(被害女性)は、この報道が事実であれば、雑誌の中で『こんなことをされた、こんなことをされてとても不快だった』と、カギ括弧つきで書いておられますよ。であれば、その方が財務省でなく、弁護士さんに名乗り出て名前を伏せて仰るということがそんなに苦痛なことなのかという思いでありました

 事実認定は必要なことだが、「そんなに苦痛なことなのか」など被害を軽視する発言は信じられない。先に書いた通り、性暴力被害を訴えた人が非難される現状がある中で、容易に被害を名乗りできることなどできるはずがない。被害者に配慮する形で事実認定することは可能なはずだ。

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