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DHC会長によるBPOへの反論 問題とされたのは政治的立場ではなく「事実」

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DHCテレビ公式サイトより

 株式会社ディーエイチシーの代表取締役会長の吉田嘉明氏が、産経新聞系列のウェブサイト「iRONNA」に投稿したコラム『DHC会長独占手記】「ニュース女子」騒動、BPOは正気か』がいま話題になっている。

 このコラムは、DHCシアターで放送されている番組『ニュース女子』の、沖縄基地問題を巡る放送回についてBPO(放送倫理・番組向上機構)が昨年1214日に「重大な放送倫理違反があった」としたことなどへの反論となっている。

「今、問題になっている放送倫理・番組向上機構(BPO)についてですが、まずこの倫理という言葉を辞書で調べてみると「善悪・正邪の判断において普遍的な基準となるもの」(「大辞泉」)ということになっています。そもそも委員のほとんどが反日、左翼という極端に偏った組織に『善悪・正邪』の判断などできるのでしょうか」

 吉田氏はコラム冒頭で、BPOに対する不信感をにじませる。続く文章を読む限り、どうやら、NHKや民放テレビはどの局も左傾化、朝鮮化が進んでおり、そうした局から選任されているBPOの委員には偏りがあると吉田氏は考えているようだ。コラムの中ではその後も、日本のメディアにおける、政治的立場の偏りが何度も主張されている。

 しかし、そもそも昨年BPOが『ニュース女子』を放送したTOKYO MXに対して放送倫理違反があったと結論を下したのは、該当番組の政治的立場に問題があったからではない。BPOのサイトにもアップされているように以下の6点において、問題があると判断されたためだ。

抗議活動を行う側に対する取材の欠如を問題としなかった
「救急車を止めた」との放送内容の裏付けを確認しなかった
「日当」という表現の裏付けを確認しなかった
「基地の外の」とのスーパーを放置した
侮蔑的表現のチェックを怠った
完パケでの考査を行わなかった

 これらはそれぞれBPOが独自に調査を行い、事実に基づいていないコメントなどがあったと結論付けられている。

 吉田氏のコラムが掲載された「iRONNA」で古谷経衡氏も書いているように、「事実を基にした解釈なら、右であろうと左であろうと容認しなければならない。それこそ表現の自由である。が、事実に基づかない嘘(うそ)やデマを根拠とした言論や報道は、その根底からして間違っているのだから、それを『言論』とか『報道』とか『ニュース』などと呼んではいけないのであ」って、吉田氏の、BPOや各放送局に政治的な偏りがある云々という主張は論点をずらしているにすぎない(沖縄のデマ垂れ流し「ニュース女子」お寒い番組制作に絶句する)。

 またこのコラムはレイシズムに満ちている。

「私が在日帰化人の問題に触れると、すぐに『へイトだ』『差別発言だ』と言われますが、私は決して差別主義者でもレイシストでもありません」

「今、私が最も危倶しているのは、日本の主要分野にあまりにも増えすぎた『反日思想を持つ在日帰化人』のことです。日本人になりきって、日本のためにこれからも頑張ろうという人たちを差別しては絶対にいけません。反日だからダメなのです。日本という国にお世話になっていながら、日本の悪口は言う、日本を貶めることだけに生き甲斐を感じているような在日帰化人は逆に許せません」

 吉田氏はおそらく「人種や民族を理由に批判しているのではなく『反日』であることを批判しているのだ」と言いたいのだろう。何らかの形で「日本のため」になっている「日本人になりきっ」た人であれば、日本という国で「お世話」をしてもいい、と。

 この論法をもって、「吉田氏は民族差別をしているわけではない」と騙されてはいけない。読みすすめれば分かる通り、吉田氏は一貫して、執拗なまでにコリアンへの攻撃を行っている。コラムを読めば分かる通り、吉田氏が考えるネガティブな属性はすべて在日コリアンに結び付けられていく。その論理もめちゃくちゃだ。

 吉田氏はもとより、東大と官僚が日本を駄目にしていると考えているようだ。そして、東大には在日コリアンが多く、司法試験に受かって弁護士や裁判官、官僚になると思っているらしい。そして東大を落ちた場合、ほとんどが早稲田大学に行き、学生運動にハマり、左翼活動家となり、左翼系マスコミが拾い上げ、マスコミと在日コリアンの関係が深まっていく……とのこと。

 もし、「日本人になりきっ」ていて、「日本のため」になっているのであれば、東大に受かって官僚なり弁護士なり裁判官なりになった在日コリアンは、吉田氏が言うところの「問題」はないはずだ。にもかかわらず、これほどまでに在日コリアンであることだけをもって疑いの目を向けているのは、結局「反日どうこう」ではなく、単純に「在日コリアン」を攻撃したいだけに過ぎない。ただのレイシズムだ。

 実際最後には、「在日帰化人」に危惧する理由として、「私たち日本人は、アジアの中で唯一ヨーロッパ人に近い民族。姿は似ているけど、韓国人、中国人とは全然違う!」というような、「日本」を誇っているのだか、「ヨーロッパ」に憧れているのだかわからない発言まで飛び出す始末だ。

 最初にも書いた通り「iRONNA」は産経新聞系列のウェブメディアだ。本コラムの掲載に問題がないと判断したメディア側にこそ「正気か」と問いたくなった。

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