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食物アレルギーの基礎知識~しくみと対策、治療について

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Thinkstock/Photo by AkilinaWinner

※この記事はメタモル出版ウェブサイトに掲載されていた成田祟信さんの連載「管理栄養士パパのみんなの食と健康の話」を再掲載したものです

 4月27日公開の『小児科医ママの子どものケア きほんのき』では、森戸やすみさんがアレルギーの仕組みと治療の全般的な話をされました。そのバトンを受けて、今回は「食物アレルギー」の話をしたいと思います。森戸さんの記事を先に読んでいただくとより理解していただきやすいので、まだの方はぜひそちらもお読みください。

 私たちの身体には、自分と異物を区別して、異物を追い出す仕組み(免疫)が備わっています。ところが、私たちが生きていくためには、異物である食物を口にしなくてはなりません。そのため、消化管から食べものを吸収するときには、異物と認識されない特別な仕組みが備わっているのです。これを「経口免疫寛容」といいます。つまり、食物アレルギーは、なんらかの理由でこの経口免疫寛容が上手く働かなくなってしまい、食べものが異物(アレルゲン)として認識されてしまうというものなのです。

 この食物アレルギーの原因物質(アレルゲン)は、卵や牛乳、小麦、ピーナツ、エビやカニなどから、ゴマや果物、松茸や山芋などまでと幅広く様々なものがありますが、多くはタンパク質で、一般に加熱や分解をするとアレルギー症状が起こりにくくなることがわかっています。

 では、アレルギー症状とは、一体どういうものでしょうか。アレルギーの症状は、かゆみをともなう皮膚の湿疹、目や口や鼻などの粘膜の炎症、呼吸の困難、命にもかかわるようなアナフィラキシーショック(意識障害や血圧の低下)など様々で、アトピー性皮膚炎と合併して起こることが多く、その関連性もわかってきています。じつはアレルゲンと認識された食べものは、皮膚や粘膜などに付着しただけでもアレルギー反応が起こることがありますので注意が必要です。

 このように聞くと、アレルギーが怖くなってしまうかもしれません。そんなアレルギーの予防方法として「お母さんが妊娠中から授乳中まで卵などの代表的なアレルゲンを取らなければいい」、「2歳まで離乳食を与えず母乳だけで育てるといい」、「代表的なアレルゲンは与えるのを遅らせるといい」というような説をよく見かけますが、じつはこれらの説には根拠がなく、むしろお母さんやお子さんの栄養が不足する危険性があるので、やらないようにしましょう。

 現在、アレルギー対策として(もちろん絶対に防げるというものではありませんが)、できることは以下のふたつです。

(1)皮膚を清潔に保ち、しっかり保湿する

 まだ口から食べたことのない食べものが、先に乾燥した皮膚の隙間から侵入すると、免疫細胞が働いてアレルギー反応が起こることがあります。つまり、経口免疫寛容ができる前に、食物に対する抗体ができてしまい、それがアレルギーの発症原因の一つであると考えられているのです。特にアトピー性皮膚炎を発症していたり、たまたま皮膚が荒れていたり、皮膚の薄い赤ちゃんに付着するとリスクとなる可能性があります。

 ですから、赤ちゃんの口もとはこまめに拭う、皮膚の清潔を保って保湿することは、アトピー性皮膚炎だけでなく、食物アレルギーを防ぐことにも繋がると考えられるのです。

(2)早めから様々な食べものを与える

 最近の研究では、アレルギーを起こしやすい食品を小さい子どもに与えないことがかえって食物アレルギー発症の原因になっていることを示唆する結果が出ています。ですから、代表的なアレルゲンであっても、あまり心配しすぎないで、様々な食べものを早めから与えたほうがいいでしょう。ただし、初めての食品を与えるときは、アレルギー反応が起こる可能性を考慮して、小児科を受診しやすい昼間に、一口からにしてくださいね。

 次に、実際に食物アレルギーと診断された場合、どのように治療するかを説明します。

 食物アレルギーの治療の基本は、必要最小限の原因食品のみの除去と定期的な食物負荷試験によるアレルギー耐性の確認です。食物アレルギーは食品にもよりますが、年齢とともに耐性がつくことが多いため、成長とともに安全に食べられるようになることがあります。血液検査によるデータだけでは食物アレルギーの判断が難しいため、安全に食べるためにはアレルギー専門医による負荷試験が必要です。

 耐性の獲得を進めるために、原因となる食品を決められた量を食べる経口免疫療法が行われることもありますが、まだ研究段階のようですから、必ず食物アレルギー専門医の指導の下で実施してくださいね。

 また、命にも関わるアナフィラキシーショックを防ぐため、エピペン(アドレナリン自己注射薬)が処方されることがあります。

 それから、食物アレルギーについては、予防だけでなく診断や治療についても、誤った情報やデマが広まっています。食物アレルギーは血液検査だけでは判断できないのですが、食物負荷試験を行わずに診断されていることもあるようです。食物アレルギーの基本は、必要最小限の除去食で、なるべく多種類の食品を食べられるようにして成長を阻害しないことです。本当は食物アレルギーでない人が過剰診断されている可能性もあるようですから、必ず専門医に相談しましょう。

 最後になりますが、本当に食物アレルギーがある場合には除去食が基本なのに、「自然栽培の○○だからアレルギーの子どもでも食べられる」というような、自然だから大丈夫という根拠のない宣伝をしている企業があり、問題になったことがあります。鶏卵でも食肉でも小麦粉でも、その他のどんな食品でも、飼育方法や栽培方法でアレルゲンがなくなったり、変質したりするような事実はあり得ません。最悪の場合、命にもかかわりますから、そういうものを子どもに与えたり、他の人にすすめたりは絶対にしないでくださいね。

不幸な事故を避けるために知っておきたい、妊産婦と子どもが気をつけるべき食品の画像2

成田祟信『新装版 管理栄養士パパの親子の食育BOOK』(内外出版社)

成田崇信

管理栄養士、健康科学修士。病院、短期大学などを経て、現在は社会福祉法人に勤務。ペンネーム・道良寧子(みちよしねこ)名義で、主にインターネット上で「食と健康」に関する啓もう活動を行っている。猫派。著書:新装版管理栄養士パパの親子の食育BOOK (内外出版社)、共著:謎解き超科学(彩図社)、監修:すごいぞやさいーズ(オレンジページ)

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