性欲があっても友人関係にはなれると思う。『出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと』花田菜々子さんインタビュー

【この記事のキーワード】

「結局男は下心があるんだよ」性欲ポリスのうざったさ

HMV&BOOKS HIBIYA COTTAGE

HMV&BOOKS HIBIYA COTTAGE

 プロフィールを修正した花田さんは、さまざまな人と出会う。初対面でなんとなく気があって、一晩飲み明かして雑魚寝した男性、コーチングを学んでいる女性、会ったあとに自分たち2人を主人公にした官能小説を送りつけてくる男性……。気が合った人たちとはその後も交流が続き、そこからまた人を紹介されて、と友人関係が広がっていく。そこには男性もたくさんいた。

――「出会い系」といったときに、どうしても連想されるのは恋愛やセックスを前提にした関係だと思うのですが、花田さんの本を読むと、そうでもないことも多いですよね。1年間使ってみて、異性間の関係性のバリエーションが増えたという感じはありますか?

「うーん、そこはもともと性格として、『付き合う・付き合わない』しかない考え方の人が苦手というか、男女の関係はそれだけじゃないだろうという考え方をするタイプだったので。『男女が一晩同じ部屋にいたらセックスするのが当たり前だ』みたいな考え方はしないほうでした。

 だから男友達も普通に若い頃からいたし、この1年でより強くそう思うようになりました。でも、みんながみんなそうではなくて、性的な関係性でしか捉えない人もいるし、こちらがそういうつもりじゃなくても性欲を出してくる人もいる。多様だなぁ、と思いましたね」

――私も「男女が一緒にいたら即ち性的な関係につながる」みたいな考えはない側なんですが、そうではない人も多いですよね。どちらかというと、今は「一緒にいたら何かあるのが当然だ」みたいな考え方をする人のほうが多いような気すらします。

「ツイッターとかでそういう声がうるさくなったように見えるってだけじゃないですか?(笑)

 まさにそれでおすすめしたいのが、千早茜さんの『男ともだち』(文春文庫)です。男女が恋愛や性欲以外でつながることを描いた小説で、主人公の女の子は不倫をしているんですが、恋人は心の支えにはならないし、利用されている感じもある。

 一方で、彼女には男友達がいて、その彼もいろんな女の子が出入りしているんだけど、2人は一度もそういう関係になったことがない。一緒に過ごしてもそうはならないんだけど、ずっとお互いを見ていて励まし合う、ある種唯一無二の関係なんだ、ということを描いています。

 これは私は『すごいわかる』と。セックスしていない友達としか築けない関係や頼れないことってあると思うんです。でもこういう話をすると『いやいや、そんなわけないじゃん。結局男は下心があるんだよ』って言ってくる人がいるんですよね。あれ、なんなんでしょうね」

――わかります。ほんとになんなんでしょうね。

「『下心があるんだからね』って必殺技のように言ってくるんですけど、あったらなんなの? と。まず『お前はそうだとしても、こっちに強制してくるな』っていうのもありますし。

 下心があったって別にいいじゃないですか。こっちだって、相手の持っているものに魅力を感じて親しくなることはありますし、それが満たされなかったからって離れるわけじゃない。

 男の人が『隙きあらばヤラせてほしいな、でもヤラせてくれないな』と思いながらでも、友情は築けるじゃないですか。そこにすごくこだわる人っていますよね」

――男友達相手でも「この人、顔がいいな」とか思いますしね。だからといってそれだけではないし、即恋愛になるわけでもない。関係性のグラデーションがない人と接するのはしんどいな、と思います。

「『性欲入った、はいダメ!』みたいな、性欲ポリスがいますよね」

――性欲ポリス(笑)。あったとしても、直接ぶつけてくるわけじゃないなら普通に付き合えるだろう、っていう。

「無理やり迫ってくるとか、隙きあらばそういう言葉を投げかけてくるんだったら面倒ですけど、そうでもないならお互いもうちょっと大らかに、いろんな関係があっていいでしょう、と思います」

1 2 3 4

「性欲があっても友人関係にはなれると思う。『出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと』花田菜々子さんインタビュー」のページです。などの最新ニュースは現代を思案するWezzy(ウェジー)で。