自称セラピストに転身した親友から「毒親を愛せ、許せ」と詰め寄られた女性の苦悩

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 同郷の親友が〈セラピスト〉なる肩書で、傷に塩をなすりつけてくる――。今回は、〈胎内記憶〉や〈インナーチャイルド〉など、流行の癒しキーワードにまつわる実体験をお届けしていきましょう。

 体験を語ってくれたのは、愛犬との暮らしを楽しんでいる40代の女性ナギさん。ナギさんは約15年間精神科に通い、現在はカウンセリングを中心に鬱を治療中。数年前に離婚したのをきっかけに、ここ10年ほど年賀状のやりとりだけになっていた高校時代の親友S子さんへ近況報告をしたことがきっかけで、おかしなことになっていったと言います。

ナギさん(以下、ナギ)「友人のS子とは携帯もネットもなかった中学時代、ヤンキーや安室系カルチャーが圧倒的に人気な田舎で、マニアックなお笑い番組の話をきっかけに意気投合して仲よくなりました。その後進学した高校も偶然同じだったことでさらに盛り上がり、親友と呼べる間柄になったんです。高校卒業後はそれぞれ別の地域で暮らしていたため、年賀状とメールのみのつながりだったのですが、ちょうど離婚のごたごたが落ち着いたタイミングですかね。つらかった結婚生活のことなどをポツポツ聞いてもらうようになり、さらにお互いの家族が新興宗教にハマるなど共有できる悩みもあったりで、再び密な交流が復活するようになりました」

 その時点でS子さんがハマっていたのが〈ACIMACIMとは、ウィキペディアの説明をお借りすると〈アメリカ人心理学者ヘレン・シャックマンが、イエス・キリストと思われる内なる声を聞いて書いたとされる、英語のスピリチュアリティ文書〉。ニューエイジ周辺で広く知られるようになり、〈神と一体になることで愛を知る〉という教えなのだとか。

ナギ「私たちはカトリック系の高校出身で〈赦し・愛・わかちあい〉などの考え方がベースにあるので、こういったスピリチュアルな世界は比較的、抵抗なく受け入れられるんですよね。さらに私は結婚生活で夫に交友関係も経済も制限され、毒親にも頼れず孤立していたので、癒しや救いが見つかるかもしれないスピリチュアルな世界への興味は持っていました。もともと占いとかも好きだったこともあり、友人がオススメする人のLINEセッションを受けてみたり、集会的なものに顔を出したりもしました」

Skypeでセラピスト資格取得?

 適度な距離は保ちつつ、友人S子さんのオススメしてくるスピ界をそれなりに楽しんでいたナギさん。ところが一転して雲行きが怪しくなってきたのは、S子さんが〈子どもは親を選んで生まれてくる〉というお説を振りかざす、〈胎内記憶〉教にも手を出しはじめたあたりから。

ナギだんだんやりとりのなかで〈気づき〉とか〈学び〉という言葉が増え始めたんです。インナーチャイルドやインディゴチャイルド、という単語が出てきたあたりから、話に違和感を覚えるようになりました。そのうちS子は、胎内記憶や子育て法の話を得意とする自称セラピストの講座をスカイプで受講し、その人物が認定するセラピストの肩書を手に入れたんです。セラピストと言っても、『この人はセラピストです』というふうに、その人のHPに名前が載るだけみたいなんですけど。最近話題のキラキラ起業系のそれとは違い、具体的なビジネス展開の手法とかは特にレクチャーされないようで、S子の場合は開業したり自分の仕事に取り入れたりするほどではなく、自分もSNSをはじめなくちゃ! と言っていた程度ですが」

 S子さんが受講したものと同じかどうかは分かりませんが、そのセラピストの主催する講座をチェックしてみると「心の傷と向き合い、愛へと昇華させよう!」「母の幸せこそが、子どもが幸せになる社会を作るコツ」といった謳い文句の羅列で、悩みを抱えるお母さんたちにつけ込むオーラに満ちあふれているな~という印象。さらにカリキュラムには、「胎児とのコミュニケーション」「胎内退行などのイメージワーク」「バーストラウマの癒し」「親のインナーチャイルド」など、トンデモ臭でむせかえるお品書きがズラズラ……

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