舞台と映画、それぞれのラストシーン
表現方法の差を巧みに活用しつつも、イケメン俳優によく言わせたなぁと驚くような淫語など印象的なセリフは舞台と映画に共通していましたが、物語のラストは大きく違っていました。リョウは静香と寝ることを望みますが、彼女は拒絶。自身も元娼婦であった静香はHIVに感染しており、エイズを発症していたからです。映画では、静香と見つめ合いながら彼女の娘である咲良とセックスすることで、精神的に抱き合うだけ。静香は着衣のままです。舞台版では、すでに皮膚にまで疾患を起こしている静香の身体に傷がないかを咲良が涙ぐみながら確認し、リョウと静香はベッドを共にします。
高岡は、薄い布ごしにほぼ透けてみえる全裸。真飛は肌の露出は一切ありませんでしたが、咲良のセックスにオーバーラップさせ、スポットライトと風を浴びてトランス状態の恍惚表情を撮ったイメージ映像はむしろ演劇的(かつかなり滑稽)に感じられ、やや皮肉。それまで映像ならではの表現が徹底されていただけに、少し残念ではありました。
HIV感染者との性行為については、いくらレーティングがかかっていても、舞台よりも数多くのひとの目に触れる映画では扱いが悩ましかったのかもしれません(原作での展開には、あえて触れません)。もっとも、舞台での表現はそんな難しささえ飛び越える、と考えれば、舞台芸術の懐の底知れぬ深さに、より魅せられてもしまうのです。
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