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「子は3人以上」「国益を考えて」…個人への介入ではなく環境を変える少子化対策を

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Thinkstock/Photo by Masaru123

 自民党の加藤寛治衆議院議員(72)が、510日に出席した同党細田派の派閥総会で、不適切な発言をしたとして謝罪した。加藤議員は少子化対策についてのくだりで、「結婚しなければ子供が生まれない。人様の子どもの税金で(運営される)老人ホームに行くことになる」「必ず新郎新婦に3人以上の子供を産み育てていただきたいとお願いする。いくら努力しても子どもに恵まれない方々がおり、そういう方々のために3人以上が必要だ」と、自身が招待された結婚披露宴で若い女性たちに話していることを明かした。

 またその際、「披露宴で若いお嬢さんに『まもなく結婚するんですね』と話しかけると、たまに『しません』という方がいる」とも言い、結婚の意思を持たない若い女性に対しては、「老人ホームは誰が運営しているか」「若い方が働いて税金を納めて運営している」「子供が生まれないと、人様の子供の税金で老人ホームに行くことになる」などと畳みかけ、翻意するよう促していることも語ったそうだ。

 加藤氏は会合後も「少子化対策は一番の、我が国にとっては大事な問題。ただ、それだけです」と記者団に語っていたが、党幹部から撤回・謝罪を促す声も出たため、同日夕方、「誤解を与えた事に対し、おわびします。決して女性を蔑視している訳ではありませんが、その様にとられてしまう様な発言でありましたので撤回します」とコメントした。

 言うまでもなく、結婚する・しない、子供を産む・産まない、は各個人が選択することであるが、政治の場から「子供を産むよう」「結婚するよう」促す発言は後を絶たない。2007年、当時厚生労働大臣だった柳澤伯夫氏が女性を機械に例えた上で「産む役目の人が一人頭で頑張ってもらうしかない」などと発言し批判を招いたが(俗に言う「女性は産む機会」発言)、11年後の現在も変わらぬスタンスの議員がいるということだ。

 加藤議員の発言内容を振り返ると、「結婚しなければ子供が生まれない」はそもそも誤り(言葉のあやだとしても)で、「人様の子どもの税金で(運営される)老人ホームに行くことになる」など筋違いも甚だしい。年をとるまで働いて所得税や住民税を納める人が大半の世の中、税金で運営される老人ホームに入ったとして、何がおかしいのだろう。新郎新婦に論の「3人以上の子供を産み育て」ることを「お願い」するのは、個人の人生へ干渉だ。産もうと思えば産めるのに産まないのはわがままで国益を損なう……と本気で考えている人は、残念ながらいるわけだが、国益のために国民が生きているわけではないことが前提からすっぽぬけている。

 翌511日には、タレントのデヴィ夫人(78)が、自身プロデュースの食器の発売記念記者発表会の場で、加藤議員の発言を擁護した。「3人子供を産んでほしいと言ったことに対して)喧々囂々になる日本はおかしい」「普通のことですよ」「日本の行く末を考えてのこと」「日本人の心が小さくなっている」などと語ったデヴィ夫人だが、彼女が「子供を産むよう」促す発言を擁護するのも初めてのことではない。デヴィ夫人は常にそのスタンスだ。

 議員ではないが、2016年には大阪市内の公立中学校の男性校長が、全校集会で生徒たちに「女性にとって最も大切なことは仕事よりも子供を2人以上産むこと」などと発言した。その後、教育委員会や学校には一般市民から苦情が寄せられ、同年3月に校長は辞職したものの発言について謝罪や撤回をすることはなかった。この件についても、デヴィ夫人は同年3月、自身のブログにて「『子供は2人以上出産』発言校長を支持します。」と題し、「子供を産むよう」促す発言を擁護していた。

<女として生まれ、結婚して妻となり、子供を産み、 母となること。これは、女性の本能。 様々な事情はあるでしょうが、これが叶わなかった人が 『仕事が命』とかいろいろ言っているのではないでしょうか。>
<日本は少子化の一途をたどっています。 人口激減は、国の存立問題でしょう。>
<日本の将来を考えて、何とか少子化を防ぎたいとの思いの思慮深い 国益を考えての発言だったのではないでしょうか。>

 女性は誰もが本能で妻・母になるという思考には辟易するばかりか恐怖を覚えるが、そういった「本能」論の後に「少子化」「国益」と続く。もし本当に妻・母になることが本能=自然なものであれば、国があれこれ言っても言わなくても人々は結婚出産するはずだが、現実はそうはいかない。

 昨年11月には、自民党の山東昭子参議院議員(75)が「子どもを4人以上産んだ女性を厚生労働省で表彰することを検討してはどうか」と発言。山東議員は、朝日新聞の取材に対して「女性活躍社会で仕事をしている人が評価されるようになって、逆に主婦が評価されていないという声もあるので、どうだろうかと発言した」と答えているのだが、子どもを4人以上産んだ女性を厚生労働省(=国)が表彰して「評価」するという発想は、戦前・戦中の「産めよ殖やせよ」と大差ない。実際、太平洋戦争が始まる約2年前の19398月に発表された「優良多子家庭表彰要綱」には、いくつかの条件(両親が同じ6歳以上の子どもを10人育てる、子どもは心身ともに健康など)を満たした両親が天皇陛下から表彰される旨が記されていたのだ。

 上記に挙げたような議員らの発言からは「子供を多く産んだほうが偉い」というニュアンスが読み取れるが、そのような価値観を国民に押し付けたところで、「じゃあ偉くなろう」「国に貢献するために産もう」と思う人がどれくらいいることだろう。イデオロギーではなく具体的な政策によって迅速な少子化解決を促すことが政治家の仕事だ。ごく基本的な日常生活を営みながら産み育てることが負担でない環境が整えば、多くの「産みたくても産めない」問題は解決するだろう。現状では、3人以上の子育てをしたくとも、過大な負担がのしかかるため冷静に判断して断念する家庭も少なくないのではないか。子育てを家庭に押し込めない、労働者を搾取しない、そうしたシンプルな政策のすみやかな実行が望まれる。

中崎亜衣

1987年生まれの未婚シングルマザー。お金はないけどしがらみもないのをいいことに、自由にゆる~く娘と暮らしている。90年代りぼん、邦画、小説、古着、カフェが好き。

@pinkmooncandy

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