今回は『ブラックペアン』(TBS系・毎週日曜21時放送)に主演する二宮和也さんについて。彼が演じているダークヒーローが非常に艶っぽくてたまりません。気怠そうな態度、全面に押し出してくる「金のためなら何でもするぞ」精神など、若干の恐怖感とイラつきを覚えさせる設定。そんな二宮さんの演技を見ながら「もっとやれ」と私はビールを飲みながらニヤニヤしています。あの猫背にはいやらしさの素養をふんだんに秘めていると思うんですよね。
“舞台は東城大学医学部付属病院の外科部。渡海征司郎(二宮)は外科医として勤務、いわゆる組織を嫌う孤高の医師。それでも医療技術は一線級で、どんな手術でも確実に成功させる。ただのその裏には成功報酬を同僚からも要求するという悪の顔も……。その傍らでは新技術・スナイプを巡って外科教授・佐伯清剛(内野聖陽)たちによるポスト争いも巻き起こっていた”
「邪魔」
「(「あなたは医者ではなく、ただの手術職人だ」と言われてニヤリとしながら)腕のいい医者は何をやっても許されるの。腕のない医者は、死んだらいい」
「そんなに褒められたら、照れちゃうよ」
「なっがい言い訳……じゃあ(患者を)殺せよ、っつかおまえもう死ねよ」
人の神経を逆なでするようなセリフを次々に吐く渡海。特に口癖のように連発する「死ねよ」の一言は、もうデビルの域でしょ。それでも手術のテクニックは一流で、彼の手にかかったらどんな患者も救われるのです。そういうニュータイプの『水戸黄門』が展開されているのが『ブラックペアン』。
近年の日曜劇場といえば“男のロマン”を描いた作品が主でしたが、今回の主役は腕のいい“嫌な医者”です。タイトルにもなっているブラックペアン=止血用鉗子が主線軸になるかと思っていたのですが、第4話までを辿ると手術用医療機器のスナイプが堂々と主線軸に鎮座しています。
スナイプを武器に日本外科学会のトップの座を狙う外科医たち。思いは各々にあるけれど「患者の命を救いたい」という願いは、医者の間では変わらない。それを象徴する言葉が、第4話では渡海からも漏れています。
「前に進むだけが医療じゃない」
医者たるもの根元にあるのは、やはり救うこと。一見、ダークヒーローの医療モノですが、やっぱりお父さんたちの期待を裏切らない仕事に対する熱がこもっている作品だと思うのです。
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