フジテレビの木曜22時という低視聴率枠で放送中の連続テレビドラマ『モンテ・クリスト伯―華麗なる復讐―』(フジテレビ系)、この枠にしては検討中である。初回の放送は視聴率5.1パーセント(ビデオリサーチ調べ、関東地区/以下同)だったが、第2話は5.7パーセント、第3話は7.1パーセントと上昇傾向にあり、第4話は6.5%。その第4話では実の母と息子に近親相姦させるという鬼畜ぶりで話題をさらったが、さて5月17日に放送された第5話はどうだったか。前半は大人しい印象だったが、後半の盛り上がりは凄まじかった。ついに人が殺されてしまったのだ。しかも、ディーン・フジオカが直接手を下したわけでも、命令したわけでもない。誰にもバレない形で巧妙に「悪魔」を操ったのである。
殺しちゃえよ、とそそのかす大富豪
テロ組織のスパイ容疑をかけられ、無実の罪で異国に送られ投獄された柴門暖(ディーン・フジオカ)は、幸運なことに脱獄に成功したうえ莫大な富を得た。もとは田舎の漁師町で遠洋漁業の漁師として生活していた暖だが、逮捕されたのは親友の南条幸男(大倉忠義)、先輩漁師の神楽清(新井浩文)、そして警視庁公安部の刑事・入間公平(高橋克典)の三者による策略にはめられたためだった。このことを知った暖は、投資家モンテ・クリスト・真海(しんかい)として日本に現れ、緻密な計画に沿って彼らへの復讐をスタートさせる。
びっくりするのは、入間が出世コースをひた走るのはともかくとして、たった10年ちょっとで、田舎者だった幸男と神楽がすっかり成功者になっていること。神楽は不動産業で財をなした成金社長。不動産てそんな一朝一夕で儲かるもの? 一方の幸男は香港で俳優修業をして今や売れっ子スタートなり日本芸能界で大活躍の人気者だ。おまけに暖(真海)の婚約者というかほぼ妻だった目黒すみれ(山本美月)の信頼と愛情を得て結婚、女児を設けて幸せな家庭を築いている。すみれもまた、漁港の近くで喫茶店を営んでいたのに、大人気の料理研究家になっている。ちょっと意味がわからない。
さて第4話では、神楽への復讐の仕込みとして、神楽の妻である留美(稲森いずみ)を陥れたモンテ・クリスト・真海。第5話では、入間への復讐の仕込みを淡々と決行していく。と言っても、真海がやるのはあくまで「助言」だけで、綿密なリサーチに基づいて登場人物をコマのように操り、思い通りの結果へ導いていくのだからすごい。
入間は娘の未蘭(岸井ゆきの)を外務省勤務でマレーシアに駐在していた出口文矢(尾上寛之)と結婚させるつもりでいるが、未蘭は乗り気ではない。そんな孫娘の気持ちを知った祖父の貞吉(伊武雅刀)は、全身麻痺で寝たきりの状態ながらも目線を動かすことで文字を入力できるデバイスで遺言書を書き換え、「財産30億円を均等に譲り渡す。ただし、未蘭が結婚したら遺産は全て寄付する」「私の遺産か未蘭の結婚かどちらか選べ」と息子・公平に迫る。
それでも未蘭を自分が選んだ男と結婚させたい入間は、出口を自宅に呼び出し「たとえ遺産がなくなってしまったとしても、私は君に、未蘭と結婚して欲しいと思っている。どうか、未蘭と」頭を下げる。出口は好青年らしく「遺産がなくても私の気持ちは変わりません」と快諾。未蘭も逃げられないと悟り結婚を覚悟する。
そんな出口のことを実はがっつり調べ上げ、裏で手を回していた真海。投資家として出口に近づき、親しい関係になっていたのだ。ある日、真海は出口を邸宅に招いてディナーを楽しみながら、「結婚する前に入間貞吉さんを殺してしまえば、遺産は孫娘にも相続されるし、出口さんのものにもなる」と殺人をふっかける。
あくまで冗談、と笑いつつも真海は「罪悪感を持つ必要はない、入間貞吉は人を殺している悪人です」と、13年前に未蘭の実の母親が急死した件は毒殺の可能性が高いことを告げ、「入間家を徹底的に調べた」レポートを提示。本気にもほどがある。「自分が入間夫妻を家の外におびき出すので、濡れたハンカチで鼻と口を1分ほど押さえるだけです」と手口を指示した上、「入間公平は警察官僚なので自宅に事件があったなんて認めるわけがない、必ず穏便に事をすませるでしょう。期待していますよ出口さん」と笑う真海……出口にしてみれば(ええ〜そんな簡単に殺人を実行せよと言われても)だし、(じゃああんたが殺してくれよ)って感じだろうが、真面目な男なのだろうか、出口は殺人計画を律儀に実行しようとする。いやいや、完全犯罪とか! 無理! 断りなさいよ!
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