性の話をするのに「資格」がいると感じるのはなぜ? 過剰な自己開示も傷つけられることもなく性を語る場に必要なルール

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 前篇では、レズ風俗から見える女性の生きづらさについてお話しました。今回は5月の東京レインボーウィークに開催した「これからの『セックス』の話をしよう~いまを生きやすくするための語り場~ 現役レズ風俗キャスト×SEX and the LIVE!! #これセク」 を通じ、女性が性を語りやすくするにはどうしたらいいかを考えます。

 私は「SEX and the LIVE!!(以下SatL)」という女性アクティビスト4人が性について身近なトピックから語ることで、語りを巻き起こすプロジェクトを主宰しています。

▼参考
声を潜めて語るか、テンションを上げて下ネタとして語るか。社会の「性」についての語り方を変えたい私が始めたこと

 今回は都内のレズ風俗店で働いたあと、対話型レズ風俗店を起ち上げ店長兼キャストをつとめる橘みつさんとSatLのメンバーとでトークセッションを、さらに参加者を交えてグループトークを行いました。

 最初にSatLメンバーにレズ風俗のイメージを聞いたところ、以下のようなコメントがありました。

「私は同性愛者という自認ではないけれど、女の子とエッチなことをしたことがあり、レズ風俗ブームが来てるのは、女体のよさがわかる人が増えたんだなと」
「私は少し抵抗がある。異性のあいだでは解消できない、フェチとやプレイという生々しいイメージかも」(異性愛者のメンバー)
「女の子とエッチなことができるという男性向けの風俗と同じでイメージで、特別なことをするイメージはない」(性別に関係なく人を好きになるパンセクシュアルジェンダーで、性自認がどちらとも限定されないジェンダークイアのメンバー)

 私自身は前篇でもお話したとおり、自分のセクシャリティへの疑問からいつか行ってみたいと思っています。こうしてみると自身のセクシャリティやこれまでの経験がレズ風俗のイメージに関係しているのかもしれません。

AVと比較され傷つく女性たち

 レズ風俗キャストのみつさんは「90分2万円のセックスが、この人のしたかったことなんだろうか」と疑問を持ったそうです。お客さんは、男性とのセックスでAV女優と比較される、自分でもそうした女性たちと身体を比較してしまう、中でイけない、性経験がないなど、さまざまな悩みを抱えています。

「対話型レズ風俗」ではその悩みをじっくりと聞き、プレイに反映させながら、その体験を「持ち帰って考えてもらう」ことを目的にしているそうです。女性の身体を持って女性の身体に接しているレズ風俗キャストに自分の身体の悩みやコンプレックスを話すというのは、私も共感できます。しかし、「自分の身体は変なんじゃないか」と思ったり「AVと違う」といわれて傷ついたりするのは、個人の問題だけには収まりません。

 女性は同性の身体をじっくりと見る機会が少ないですし、女性も男性もセックスについてAVや娯楽コンテンツ以外から得られる情報が少ないのです。そしてけして安くはないレズ風俗にまで行かないと性の悩みを話せない現状があります。

「誰とヤッた」は話せるのに

 そうして話す場がないことが、深刻な性の悩みにつながっています。SatLメンバーのひとりは学生時代に妊娠中絶の経験があり、当時は性の悩みを友だちには話せなかったそうです。彼女は現在、性教育の講演を行っています。

 東京都足立区での性教育の授業を「不適切」とする都議質問が波紋を呼びました。彼女は性教育の学習指導要領を見直し、正しい知識を伝えるために中高生の実態に即した教育を求める署名運動を行っています。一連の活動のなかで、よく“純潔教育をしろオジサン”に怒られるそうですが、性に触れさせないようにすることで、かえって奔放になったり、深刻な問題を招いてしまうこともあります。

 DVや妊娠中絶など多くのダメ恋愛を経験した別のメンバーも高校時代は性の話を語れずにいました。それどころか、受精の仕組みは知っていてもセックスの意味を理解していなかったのだとか。地方の性規範が強い家庭で育ち、貞操観念が強いにもかかわらず、その後彼女はダメ男を渡り歩く“メンヘラビッチ”になったのです。

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