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「育児はママの仕事」という揺るぎない固定観念と「産む身体」のコントロール

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Thinkstock/Photo by AGrigorjeva

 自民党の加藤寛治衆議院議員が、510日に出席した同党細田派の派閥総会で、少子化対策について「結婚しなければ子供が生まれない。人様の子どもの税金で(運営される)老人ホームに行くことになる」「必ず新郎新婦に3人以上の子供を産み育てていただきたいとお願いする。いくら努力しても子どもに恵まれない方々がおり、そういう方々のために3人以上が必要だ」といった発言をしていたことは記憶に新しい。加藤議員はその後批判を受けて発言撤回したが、27日、地元である自民党長崎県連の定期大会で「わが国は民主主義国家だから批判も甘んじて受けなければいけないが、それ以上の賛同と激励をいただいたことも事実」と開き直った。全国から、「議員としてまっとうな発言だ」「健康で出産できる人にお願いするのがなぜいけないのか」といった、発言を肯定する意見が寄せられたのだそうだ。

 そりゃ加藤議員の「3人以上産んで」発言に“賛同と激励”を示す人は全国にいるだろう。当事者、つまり出産可能な肉体を持つ女性以外にとっては所詮他人事である。女性たちがたくさん産み、社会福祉を利用せず自分でせっせと育ててくれれば、人口減少は食い止められる。

 しかし現実に、「産んで」と言われたら「産める」わけではないことは明らかだ。“賛同と激励”が何だというのだろうか。何より、「産む身体」に政治が干渉してくることを許容してはならない。その先に人権を無視した国民コントロールが待っていることは明白である。そもそも3人以上産める社会を作ることが政治家の責務であり、「とにかく産んで」と言葉で促すなら誰でもできることで、政治家の仕事ではない。

 さらに自民党の萩生田光一幹事長代行が527日、宮崎市内での講演で国が目指す「待機児童ゼロ」方針について触れ、その発言内容もまた、物議を醸している。萩生田氏は<生後34カ月で赤の他人様(保育士など)に預けられることは赤ちゃんにとって不幸><赤ちゃんはどう考えたって(パパや保育士より)ママがいいに決まっている><子育てしているお母さんたちを、もう少しいたわってあげる制度が必要>などと話した。発言内容詳細は以下の通り。

<もちろん今の対処として待機している赤ちゃんを救済していくのは大事なことでしょう。しかしみなさんよく考えて頂きたい。
0歳の赤ちゃんは生後34カ月で赤の他人様に預けられることが本当に幸せなのでしょうか。子育てのほんのひととき、親子が一緒にすごすことが本当の幸せだと私は思います。
仕事の心配をせず、財政的な心配もなく、1年休んでもおかしな待遇を受けることなく、職場に笑顔で戻れるような環境をつくっていくこと。
もっと言えば慌てず0歳から保育園にいかなくても、1歳や2歳からでも保育園に入れるスキーム(枠組み)をつくっていくことが大事なんじゃないでしょうか>

<子育てというのは大変な仕事です。これを「仕事をしていない」というカテゴリーに入れてしまうのがおかしい。世の中の人みんなが期待している「子育て」という仕事をしているお母さんたちを、もう少しいたわってあげる制度が必要なんだと思います>

<冷静にみなさん考えてみてください。03歳の赤ちゃんに、パパとママどっちが好きかと聞けば、はっきりとした統計はありませんけど、どう考えたってママがいいに決まっているんですよ。0歳から「パパ」っていうのはちょっと変わっていると思います。
ですから逆に言えば、お母さんたちに負担がいくことを前提とした社会制度で底上げをしていかないと、言葉の上で「男女平等参画社会だ」「男も育児だ」とか言っても、子どもにとっては迷惑な話かもしれない。
子どもがお母さんと一緒にいられるような環境が、これからはやっぱり必要なんじゃないかと私は思います>

 萩生田氏こそ冷静に考えたほうがいい。政治家として発言するのであれば、<はっきりとした統計>がないにもかかわらず思い込みによって赤ちゃんにとって何が「幸せ」かなどの想像をとうとうと語るのではなく、<仕事の心配をせず、財政的な心配もなく、1年休んでもおかしな待遇を受ることなく、職場に笑顔で戻れるような環境><0歳から保育園にいかなくても、1歳や2歳からでも保育園に入れるスキーム(枠組み)>を具体的に検討するのが仕事だ。

 また、現状で<ママ>以外が子育てを担っている家庭を軽視し否定する、まったく思慮に欠けた発言であることも自覚してもらいたい。さらに言えば、萩生田氏の「子どもはママが大好きだから、子供が小さいうちはママが育児に専念してもいい社会に」という提言に救われる思いのママもいることだろうが、「子供はママが大好き」だから「ママは子供と一緒にいるべき」「子供はママが一番大好き」と決めつけられることで、追い詰められるママもいる。父親は仕事・母親は育児という性別役割分業を強化し、母親によるワンオペ育児を後押しすることにもなるだろう。<親子が一緒にすごすことが本当の幸せ>かどうかも、ケースバイケース。すべて萩生田氏の偏見でしかない。

 そのうえで、「保活」なんてしなくても親子が望む時期に保育園に入れることができる保育環境の整備、産休・育休取得がマイナスにならない職場環境づくりの促進など、政治家としてどんどん提案をしていただきたい。安心して産休・育休・職場復帰ができる職場環境と、安心して保育園に入れる枠組みは、働く親を支える両輪であり、それこそ「3人産める」社会につながっていくのではないだろうか。もちろん<ママ>だけが育児を担う前提は取り払い、父親が育休取得をした際も心配なく職場に戻れる環境まで持っていく必要がある。本気で人口減少に歯止めをかけるならば、もう<ママが家庭で子どもを育てるのが常識>という大きな意識を変えることだ。

中崎亜衣

1987年生まれの未婚シングルマザー。お金はないけどしがらみもないのをいいことに、自由にゆる~く娘と暮らしている。90年代りぼん、邦画、小説、古着、カフェが好き。

@pinkmooncandy

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