
Photo by 赵 醒 from Flickr
「退職してフリーランスになります」などと題した退職する理由や気持ちを綴ったブログは“退職エントリ”と呼ばれ、注目を集めることがままある。世慣れた大人が、起業や独立、転職について書いたものであれば羨望の眼差しを向けられることも多い。だが一方で、入社早々に退職した若者は「我慢が足りない」「何をしても続かないんじゃないか」「これだからゆとりは」と非難されるケースを頻繁に目にする。
くつなえちゃんも、就職した会社をすぐに辞めたことにより上司に「非常識」と非難された経験のある女性だ。彼女の場合、会社に見切りをつけるスピードが群を抜いて速かった。入社して3日、研修直後に退職することを決意したのだ。
今日の上京女子/くつなえちゃん(置田菜絵/22)

くつなえちゃん「これ、靴ポーズなんです(笑)」
彼女は大阪に生まれ、両親の愛情を一身に受けて育った。一度は理学療法士を志して大学に進学するも、たまたまスポーツ店のアルバイトで「靴」の奥深さに惹かれ、神戸にある日本にひとつしかない靴の専門学校に入学することを決意。学んだ知識だけでなく靴への熱意も相まって、学校の研修で女性向け靴ブランドにて販売をした際には、1カ月で130万円を売り上げるという快挙を成し遂げた。
「幅広い年代に人気の靴だったので、10代から50代向けの雑誌を全部買って『どんな服にこの靴を合わせてもらおうか』とかトータルコーディネートを提案していました」
学校卒業後は「もっとフィッティング技術を向上させたい」と大好きだった靴ブランドに就職。「どんな技術が学べるんだろう」とワクワクしながら研修に向かったものの、初日から失望に変わった。「置田さんはもうフィッティングできるから、教える側にまわって」と言われたのだ。
「ここでは私が学びたかったことは学べない」
そう気がついた瞬間「退職」の二文字が現実的になった。入社3日のことだった。
東京に勢いで上京。ゼロから靴サロンの立ち上げを決意
退職後、やりたいことは決まっていた。靴業界の内情を知るにつけ「この業界を変えたい」という思いが強くなっていたのだ。
「靴職人の方は自分で宣伝や営業をするのが苦手な人が多いんです。一足10万円くらいする靴でも、靴職人の手取りは5千円くらいになってしまったりすることもあって、技術はあるのに、経済的事情で靴職人を諦めてしまう人も多い。そういう不平等をなくして、靴職人の方が個人で宣伝できる仕組みを作りたいって思ったんです」
そこで彼女が考えたのは、顧客が直接、靴職人に発注することができるプラットフォームを作ることだ。靴好きの顧客が自分で好みの職人を選んでデザインを発注することができ、靴職人にも適切に還元される仕組みを目指し、靴サロン【Shoe Cream】を立ち上げることを決意した。そのためには、まずは発信力のある靴職人を集める必要があった。靴サロン【shoe Cream】は6月から、まずは毎月数回イベントとして開催予定だ。
会いたい靴職人の多くは東京にいたため、上京することを決意。両親に「東京行ってきます」とだけ言い、家出同然で上京したのは今年(2018年)4月のこと。親に相談せず、自分の意志だけで決断をした人生初めての瞬間だった。
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