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『万引き家族』で是枝裕和監督が試みた「家族の性愛を描く」というチャレンジ

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『万引き家族』公式サイトより

 第71回カンヌ国際映画にて、是枝裕和監督の『万引き家族』が最高賞となるパルムドールを受賞した。先日、Wezzyでもお伝えしたが、祖母の年金を基本収入にして足りない分は万引きで補っている貧困家庭を描いたこの物語を企画したインスピレーションの源泉には、日本で年金の不正受給事件が厳しく糾弾されたことについて<人々はなぜこのような軽犯罪にそこまで怒ったのか>(中央日報インタビューより)を深く考えたことにあると是枝裕和監督は語っている。この点は多くのメディアでも指摘されているところではあるが、是枝監督の発言を注意深く追っていると、実は、この映画の製作を通して描こうとしたものがもうひとつ見えてくる。それは、「家族の性愛」である。

 映画史・時代劇研究家の春日太一氏は、『万引き家族』の試写を観た感想をこのようにツイートしていた。

<メッセージやテーマもあるでしょうが、監督のスケベ感が表に出た映画がカンヌは取りやすい傾向があるような気もするので「万引き家族」は取るべきして取った映画なんじゃないかと思ったりしました>

 是枝監督の映画と「スケベ感」というのは、彼のフィルモグラフィーの流れからいって、あまり容易にはつながらない線のような気もするが、春日氏はその詳細をこのようなツイートで説明している。

<優等生がエロ本を立ち読みしているのを目撃したような親近感といいますか。そのくらい松岡茉優への入れ込み方に計算を超えた欲望を感じられて素敵でした>

 確かに、『万引き家族』には、これまでの是枝作品のなかでも珍しく「性」に関わる描写が多く描かれている。たとえば、亜紀(松岡茉優)はJK見学店で働いている設定で、実際にお店で接客する姿も描かれる。また、海水浴のシーンで亜紀は水着姿になるが、祥太(城桧吏)が彼女の胸元を見つめているのを発見した治(リリー・フランキー)が「お前、おっぱい好きか?」とからかう「少年の性の芽生え」を描いたシーンも登場する。

 他にも、治と信代(安藤サクラ)の夫婦による濡れ場のシーンもかなり具体的に描かれるのだが、「SWITCH」(スイッチ・パブリッシング)20186月号に掲載された是枝監督と樹木希林との対談のなかで樹木希林は、治と信代のシーンを例に出しながら<案外いやったらしい人だったんだなと思って(笑)>と語っている。

<日本の映画の裸になるシーンって、妙に隠すような、カメラも遠慮しているようなところがあって、あれは不思議ですね。ところが是枝さんは平気で撮っているから、案外いやったらしい人だったんだなと思って(笑)。でも素敵なシーンですね。ほんとうにいろいろな意味で神々しい>

 そういった描写は偶然出たものではなく、意図的なものであったようだ。『万引き家族』の製作にあたって設定した目標に「肉体的なものを描く」ことがあったと是枝監督は語る。

<生なものとか、肉体的なものとか、そういうものをどう映画に入れ込むかというのは今回意識していたところで>

<肉体的なものを今まであまり描いてこなかったから、今回は家族の話の中にそういうものを持ち込もうとして書き始めた脚本だった>(どちらも前掲「SWITCH」より)

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