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『万引き家族』で是枝裕和監督が試みた「家族の性愛を描く」というチャレンジ

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 しかも、この目標設定はずいぶん前から出ていたものであったようだ。昨年9月に出版されたムック本『文藝別冊 是枝裕和』(河出書房新社)には、是枝監督と、今回の『万引き家族』で主演を務めたリリー・フランキーとの対談が掲載されているのだが、この時点でその目標設定は語られているのだ。

 二人の対談が行われたのは、201765日。昨年9月に公開された『三度目の殺人』の製作が終わった直後で、主演の福山雅治ですらまだ完成したものを見ていないといったような状況であったようだが、いま『文藝別冊 是枝裕和』の対談を読み返すと、もうこの時点で『万引き家族』の青写真がかなりでき上がっていたことがわかる。ここでの是枝監督は<肉体的なもの>という表現よりもより直接的に、<性愛><家族愛に性を入れてみたい>と明かしている。

<次もちょっとチャレンジがあって、性愛というのをやりたいんですよ。家族愛に性を入れてみたいんです。初めてなんですけど、そこをきちんとやってみたい>

<血のつながっていない家族を題材にして、その中で性というのが夫婦なら夫婦、親子なら親子をどうつないだり離したりするのかというのを、ちょっとやりたいなと思ってる>

 本稿冒頭で触れた通り、『万引き家族』という物語が生まれたインスピレーションの元には、生活保護バッシングをはじめとした「弱者叩き」がまん延している日本社会であったり、貧困や格差に関する問題の解決を「自己責任」のお題目のもとで家庭に押し付けようとする政治に対する是枝監督の違和感がある。

 ただ、それとは別に、『万引き家族』では「家族の性愛」というこれまでの是枝作品ではほとんど触れられてこなかったテーマに対する挑戦もある。「お父さんとお母さんがエッチしている」というのは、家族映画においてひとつのタブーだ。そのあたりにも着目しながら映画を見ると、また違った味わいが生まれるのではないだろうか。

(倉野尾 実)

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