自民党・萩生田光一幹事長代行が、5月27日に開かれた自民党宮城県連の会合で、国が待機児童ゼロを目指していることを言及した上で、「待機児童の赤ちゃんを救済していくことは大事だが、0歳の赤ちゃんが赤の他人に預けられることが本当に幸せなのか」「0~3歳の赤ちゃんにパパとママのどちらが好きかを聞けば、どう考えたってママがいいに決まっている」「お母さんたちに負担がいくことを前提とした社会制度で底上げしていかないといけない」などと発言し、批判が殺到している。
今月30日に厚生労働省が発表した「平成29年度雇用均等法基本調査(速報)」によれば、平成27年10月1日から平成28年9月30日までの1年間で、在職中に出産した女性のうち、平成29年10月1日までに育児休業を開始・申出した割合が83.2%と前年度から1.4%上昇し、同期間に配偶者が出産した男性のうち育児休業を開始・申出した割合が5.14%と前年度から1.98%上昇している。平成8年度の同調査では、女性は49.1%、男性は0.12%程度しか育児休業を開始・申出していない。男女の育児休業取得率はいまなお非常に偏りが見られるが、この20年で女性だけでなく男性の育児休業取得率が上昇していることも確かだ。
母親こそ育児を、とする萩生田議員の発言はこうした時代の流れに逆行している。さらに言えば「ママがいいに決まっている」という発言は、主に男性が育児を担っている家庭や父子家庭を顧みないものでもある。
萩生田議員は同講演の中で「子育てが仕事のカテゴリに入っていないことはおかしい」「仕事の心配もせず、1年休んでもおかしな待遇をうけることない環境をつくっていくこと」など、過小評価されがちな育児負担に対して理解を示しているようにみえる発言もしている。しかし、結局のところ「母親こそが育児を担うべきだ」という個人的な価値観に基づいて、「保育園ではなく、家庭内で母親が育児をするのが望ましい」という旧態依然とした価値観を強化するような社会制度が望ましいという考えを持っていることが発言全体から見て取れる。
待機児童問題を女性の育児負担を増やす方向で解決するべきではない。待機児童問題の解消と、極端に女性に担わせている育児負担の是正は同時に達成可能なもののはずだ。